陸自中央音楽隊の隊長・武田晃1佐と隊員4名(谷口邦博准尉、野口雄二曹長、馬渡英一2曹、久慈明広3曹)は8月20〜28日の間、研修のため訪米した。世界最高峰の軍楽隊、ニューヨーク州ウェストポイントにある米陸軍士官学校軍楽隊と合同で訓練。またハドソン川を眺める景勝の地"米国で一番美しい音楽会場"で行われる伝統の『ウェストポイント・コンサート』で合奏を行うなど2度の演奏会を合同で実施、合わせて約4500人の聴衆を魅了した。
平成21年から今回で4度目となる米国研修。武田隊長はそのすべてに参加。今回の研修では、米側の隊長ジム・キーン中佐と武田隊長が交互に指揮を執り合奏訓練を行った。「(米隊員は)指示に対する反応が素晴らしい。理解が早く、演奏への反映が的確。競争が激しいため、学ぶ姿勢が違う。本当の軍楽隊らしさ、メンタル面での厳しさ、高い使命感に触れることができた」(武田隊長)。
また歌舞伎の音楽をベースにした吹奏楽曲『写楽』などの指導を通じ「米国人と日本人のリズム感、旋律感の違いを知ることができた」(同)という。
米陸軍軍楽隊で最古、1817年創立の米陸軍士官学校軍楽隊は総員約100名。97%が音大卒、58%が大学院マスター以上を取得している。レコード会社と契約している隊員や大学で教鞭を執る隊員、国際音楽学会で講師を務めた隊員もおり、レコーディング・エンジニアはグラミー賞を受賞している。
『ウェストポイント・コンサート』では、オープニング曲、アンコール曲を含め全曲の半数を武田隊長が指揮した。
「米側が非常に気配りしてくれた。アンコールの『星条旗よ永遠なれ』は米国の"第2の国歌"。それを(他国の指揮者に)任せるなど通常ありえない」(同)。
同士官学校軍楽隊はコンサートバンド、ジャズバンド、主に校内行事で演奏を行うフィールド・ミュージック・グループ「ヘル・キャッツ」の3つが、掛け持ちをしない独立のユニットとして活動。必要に応じてコンボバンドなどをユニットの垣根を越えて編成する。今回はヘル・キャッツとの合同訓練も行った。ちなみに同軍楽隊員は音楽活動だけでなく年に1度、7月の3週間、士官学校学生に対し訓練支援を行う。下級生に教える立場の上級生たちに「訓練における指導法」を教授するのだという。
今回の米国研修について中音は「優秀な奏者と一緒に演奏することにより、優れた演奏法を吸収でき、また大勢の米国市民に対して陸上自衛隊音楽隊をアピールできた」としている。 |