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自衛隊ニュース   2012年2月15日号
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盛大に出迎え
海賊対処航空隊が帰国
現地の人と一緒に汗して任務完遂

 派遣海賊対処行動航空隊の第8次要員として警衛任務などにあたった陸自隊員約50名(第1空挺団、中央即応集団等から編成)が2月1日、約4ヶ月間の任務を終えて帰国した。同日昼、羽田空港に到着した隊員は家族らに出迎えられ、満面の笑顔で再会を喜んだ。そのままバスで習志野駐屯地や朝霞駐屯地に戻り、所属部隊から帰国を祝う式典が催されるなど歓迎を受けた。
【習志野駐で帰隊歓迎式】
 午後2時30分、習志野駐屯地に到着した45名は正門前から拍手と歓声の中、警衛隊長の西田和正3陸佐を先頭に颯爽と行進。習志野駐屯地司令・山之上哲郎陸将補(兼第1空挺団長)をはじめとする隊員や家族、自衛隊協力団体など関係者から盛大な歓迎を受けた。
 充実した顔で戻ってきた派遣隊員を前に、山之上空挺団長は「いま諸官は任務を完遂した達成感と、無事帰国した安堵感でいっぱいだと思う。十分に休んでもらいたい」と労をねぎらったあと「現地で得た教訓をこれからの隊務に活かし、また次に行く者にしっかりと伝えてほしい」と要望した。また家族に対し感謝の言葉とともに「離れていた間を埋められるよう御主人、御子弟には時間を与えるので、家族の絆を確かめ合っていただきたい」と話した。
 派遣隊員代表として西田3佐は「現地の人と一緒に汗しながら毎日、頑張りケガも事故も一件もなく任務を終えることができた」と話し「時差ボケと気温の差で、いま体がビックリしている。早く日本仕様に体を慣らしたい」と笑わせた。
 今回帰隊した隊員は、昨年10月からアフリカ東部のソマリア沖・アデン湾での海賊対処のため派遣され、ジブチにある活動拠点の警備などの任務に従事した。


陸上自衛官の目で見た海賊対処の現場
日本の国益保護のために
中央即応集団司令部 2陸佐 小山修一

■警備のプロ
 派遣海賊対処行動航空隊(以下「派行空」という)のメイン・ミッションは哨戒機P—3Cによる海賊対処の警戒監視飛行である。我々、陸自隊員は、この任務を支える司令部、業務隊要員及び、警衛隊として勤務し、その活動の舞台は陸上にある。司令部、業務隊要員は、活動拠点の開所以来、我が国独自の拠点の運営を開始した。対外的な調整業務が多くなり、ジブチ軍人やジブチ住民、米軍、仏軍、スペイン軍等の外国軍と友好的かつ密接に連携し、異文化コミュニケーションを図りつつ奮闘している毎日である。
 異文化コミュニケーションは何も対外的に限ったことではなく、陸海の統合任務部隊である隊内においても生起している。特に司令部及び業務隊は陸海の混成編成となっているため、仕事のやり方や業務用語がそれぞれ異なる中、海自の異文化にも触れ、ある意味新鮮な気持ちで勤務している。
 海自が海賊対処のプロフェッショナルなら、我々陸自警衛隊は、活動拠点、航空機を守る警備のプロフェッショナルである。警衛隊は陸自最精鋭の第1空挺団から編成された部隊からなり、灼熱身を焼く過酷な勤務環境下において、日々昼夜の別なく、決して途切れることのない厳正な勤務が続けられている。
 正面ゲートに立哨する警衛隊員は、部隊規律の象徴的存在であり、まさに派行空の表玄関の顔である。その凛々しく厳正な勤務は、米軍、仏軍等の他国軍からも、今や一目置かれる存在となっている。
 活動拠点警備の特徴の一つとして、ジブチ人の役務警備員の活用が挙げられる。米軍の基地警備についても日本と同様に役務警備員を活用しているものの、大きな違いは、米軍は警備責任を区域で明確に分け、米軍兵士とジブチ人の警備員が決して同一地域において、一緒に交わって勤務することがないのに対し、陸自の警備は、同じ場所においてジブチ人と同じ目線で接し、共同で勤務しているところにある。
 何れにしても一長一短はあると思うが、陸自隊員は異文化コミュニケーションを楽しみつつ、試行錯誤を繰り返し、お互いを理解、尊重して、信頼、協力しながらジブチの人々とともに任務を遂行している。
 このように我々は、高い使命感をもって、異文化コミュニケーションを図りつつ、全員が「任務完遂、無事帰国」を目指し、毎日、充実した勤務を送っている。海自隊員の行う海空の行動については、ジブチで同じ過酷な勤務環境に身を置き生活を共にしながらも、これまで、なかなか接する機会はなかった。
■警戒監視飛行
 先般、機会があって、警戒監視の任務飛行に同乗する機会を得た。百聞は一見にしかず。話には聞いていたが、実際に目の当たりにすることにより、海賊対処の現場のイメージアップを図ることができた。
 ソマリア沖・アデン湾洋上の上空を日本の本州の約半分の面積に匹敵するほどの広大なアデン湾の海上交通路に沿って東進し、示されたポイントで折り返す飛行ルートである。機上から目標船舶を発見するや、機上武器員が望遠レンズ付きのデジタルカメラで写真撮影し、その場で画像拡大し、瞬時に海賊船か否かの識別を行っている。識別のポイントは、海賊行為のため乗り移る際に使用する梯子の存在、積荷等である。海賊船若しくは海賊船と疑わしき船舶として識別した場合は、近くを航行中の船舶及び航空機に対し、情報を提供し、注意喚起を促している。
 また、各国海軍艦艇、民間船舶及び各国軍航空機からの船舶情報のやり取りが国際共通の周波数で機上の航空無線に相当数が入ってくる。もちろん、交信言語は英語であるが、まれに日本語で「ありがとうございます」と感謝されることもあるという。この日は8時間のフライトで約130回の目標船舶の識別を行っていた。写真撮影の際は、目標船舶に対し、航空機の飛行姿勢を30〜45度に保ち、左旋回するため、かなりの重力が身体にかかる。任務飛行にあたる搭乗員の身体的な負担は大きいものと思う。
■任務に誇り
 帰投間際、機上から、護衛対象船舶の前後を海上自衛隊の護衛艦2隻がしっかりと守っている船団を確認した。
 真っ青の海の中に、その見事なまでに統制のとれた美しい船列と真っ白な航跡、鉄(くろがね)色の護衛艦の力強い勇姿に感動を覚えるとともに、海洋国家として国家の生存と繁栄の基盤である資源や食糧の多くを海上輸送に依存している我が国の国益保護のため、陸海が一丸となって取り組み、その一端を担っている任務に此処、アフリカ・ジブチで就いていることに誇りを感じる瞬間であった。

国際社会への貢献を自覚
第1空挺団後方支援隊 2陸曹 細木隆洋

 私は今回、派遣海賊対処行動航空隊(第8次要員)の業務隊要員として、遠くアフリカの地に派遣されました。私の職務は補給整備班の発電機・施設器材整備陸曹であり、任務は活動拠点内で陸上自衛隊が使用している発電機や施設作業に使用している器材の整備です。
 10月6日にジブチに到着してから早3ヶ月が経ち、当初は気温45度に達するような暑さ、ミネラルウォーター、輸入食材による食事等、日本とは異なる生活環境に体調を崩すこともありましたが、12月になると気温も比較的下がり環境にも慣れたせいか生活面では特に不自由に思うこともなくなりました。
 業務面では当初、多少苦労することがありました。それは、日々の整備や保守管理に必要な部品等が発生した場合に備え、現地の市場や商店において市場調査を実施したところ、日本の製品が無く、類似しているものがあっても規格や仕様が異なり本当に必要な物が売っていないこと、さらにホームセンターらしい所があっても日本のように一ヶ所で必要な物がなんでも揃っているような品揃えの店はなく、また以前は品物が有っても今回は無い等、いくつもの場所を調査しなければ必要な物品を見つけることは出来ないことが分かりました。
 それに加えて英語・仏語・ソマリ語等の言葉の壁で意思が伝わりにくく、様々な苦労がありました。しかし日々の業務や市場調査を通して必要な物品の状況は逐次掌握されてきているので、少しずつ業務も改善されています。
 派遣期間の約半分が経過しジブチでの生活に慣れた現在は、今後続いていく海賊対処任務に従事する隊員の為に、少しでも業務が円滑になるように、不便に感じていた事項を改善していきたいと思います。各隊・各班のそれぞれの仕事が派遣海賊対処行動航空隊の任務完遂に繋がり、それが国際社会に対する日本の貢献に繋がる事を自覚して、残り1ヶ月頑張りたいと思います。

現地は"痛いような"暑さ
中央即応集団司令部付隊 2陸曹 赤間直樹

 私は派遣海賊対処行動航空隊(第8次要員)の通信班員としてジブチに派遣されています。
 ジブチは非常に暑い国だと聞いていましたが、現地において自ら体験すると本当に暑く(痛いような暑さ)、現地に到着した時は、日本の暑さとの違いに圧倒され、これからこのアフリカのジブチで任務に就くのだと実感したのも鮮明に記憶しています。
 私の任務は拠点内及び本邦との間の通信組織の構成・維持・運営であり、主に電報処理と各種システム通信の保守・管理を実施しています。
 海上自衛隊の器材を使用する業務が多いことと、システムに関係する業務が大半を占めることから、システムが苦手分野である私は毎日悪戦苦闘の毎日です。しかしこれは、通信科隊員の私にとって良い機会であり、さらに能力を向上させなければならないことだと思っています。
 現在は、上司・同僚に懇切丁寧に器材の取扱い等を教えていただき、多々失敗はありますが一通り業務が出来るようになりました。また、通信班は、海自・陸自隊員ともよくコミュニケーションをとりながら毎日業務に取組んでいてとてもよい環境にあります。
 派遣も3ヶ月が経とうとしていますが、いまのところ大きな通信障害もなく拠点内及び本邦との通信の維持・運営ができています。これからもシステムに関わる知識・技能の向上を主眼に、円滑に業務ができるよう日々精進をしながら任務を継続していこうと思います。


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