平成23年度日米共同方面隊指揮所演習(YS—61)が1月24日から2月6日に伊丹駐屯地等で実施され、両国の相互運用性や共同対処能力の向上を図った。今回はオーストラリア陸軍が初めてオブザーバーとして参加。防衛白書では豪州を「わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナー」と位置づけており、同地域に重点を移す米国との連携も踏まえて、3カ国間の協力関係を強めた。また、豪陸軍第1副師団長による陸幕長とCRF司令官の表敬訪問やUNMISS派遣経験者による南スーダンに関する講話が行われた。
陸幕長「オブザーバー参加は歴史的第一歩」
2月2日、豪陸軍第1師団副師団長のサイモン・ドン・ローチ准将らが君塚栄治陸幕長を表敬訪問した。日本側は久納陸幕副長、森山防衛部長、岡部教訓部長、笠松国際防衛協力室長などが同席した。
君塚陸幕長は懇談の中で、「日米豪3カ国の協力関係は日々深化している」と話し、YSへの豪軍のオブザーバー参加について「防衛協力・交流分野における歴史的第一歩」との認識を示した。
ローチ准将はオブザーバー受け入れに対する謝意を表すとともに、「各種分野での調整要領や荒川中方総監とワーシンスキー米太平洋陸軍司令官の良好な関係を見て、日米の強固な協力関係に基づく作戦能力の成熟を実感した」と述べた。
【CRF司令部を訪問】
陸幕長表敬を終えたローチ准将は同日午後、豪陸軍フォースコマンド人事能力管理将校のクレッグ・デレーニー中佐とともに中央即応集団(CRF)司令部を訪問した。ローチ准将のCRF司令部訪問は今回で2回目。
はじめにローチ准将は山本洋CRF司令官を表敬し、豪陸軍第1師団の特性や海外における任務への取組みなどを説明。山本司令官は、東日本大震災におけるギラード首相の被災地訪問や豪軍からの被災者支援に対して謝意を示すともに、日豪の防衛交流の重要性を話した。
UNMISS経験者が体験談交えて講話
引き続き、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)、国連スーダンミッション(UNMIS)、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)などに派遣経験のあるデレーニー中佐から、南スーダンの状況に関するブリーフィングが行われた。南スーダンでは兵站・通信・衛生面等が課題で、状況の変化に対する柔軟な姿勢が重要であると指摘。このブリーフィングには、南スーダン派遣施設隊長の坂間輝男2陸佐(中央即応連隊)も参加して熱心に質問するなど、日豪の防衛交流を実のあるものとした。
【施設隊2次要員も聴講】
デレーニー中佐は翌3日、北部方面総監部に向かい、南スーダン派遣施設隊の2次隊の主力となる北部方面隊に対しても講話を行った。UNMISSの活動や南スーダンの首都ジュバの生活環境など現地の状況について話され、第2次派遣要員を含む約60名が聴講した。
その中でデレーニー中佐は、換金における諸注意やスコール時の対応の仕方、車の運転でウィンカーを出す習慣がないことなど、現地での生きた知識を提供した。特に「虫はつぶすと体内の毒で皮膚の炎症を発生させる」「水はペットボトルのみ。ふたの置き方にも注意し、地面に落ちたものは食べない」といった衛生面の注意事項について、体験談を基に強調した。
また、現地における調整要領について「ちょっとしたお土産でコミュニケーションをとって」と聴講者にコアラのピンをプレゼントして場を和ませながらアドバイス。現地で指揮官として活動したデレーニー中佐の説得力ある話で、予定時間を超えてしまうほど充実した講話となった。 |