■周辺諸国の状況
我が国の予備自衛官は、平成21年度の現員で陸海空合わせて3万3159名、即応予備自衛官は同じく5815名が任用されている。因みに、予備自衛官は各地方協力本部に所属し年間5日間の訓練招集が義務づけられているのに対し、即応予備自衛官は年間30日の訓練で所属の部隊があらかじめ決まっているという違いがある。
我が国周辺諸国の予備兵力は、米国が正規兵力158万名に対して予備兵力86万名。ロシアが正規103万・予備2000万。中国は正規229万・予備51万。韓国は正規69万・予備450万。北朝鮮は正規111万・予備470万(いずれも平成22年防衛白書より)であり、こうした数字を見ると我が国の予備自衛官はまだまだ少なく、その充実が必要と感じる。予備役は費用対効果から考えても有効であるし、いざ有事の際、現役部隊を支える意味でも不可欠な存在といえるであろう。
筆者は現在、予備陸士長の階級を指定されている。現役経験はないのだが、一般国民から予備自衛官を養成する予備自衛官補の第一期生として採用された。予備自衛官補は、平成14年に創設された新制度で、一般は3年以内に50日間の訓練をした後、予備2等陸士に指定される。各種技術を有する者は、10日間の訓練で陸曹以上に指定されている。
■朝霞で訓練実施
昨年11月11日から5日間、筆者は朝霞駐屯地へ招集され訓練を実施してきた(東京地本第9回予備自衛官5日間招集訓練・東京地本では本年度13回を予定している)。予備自衛官としては8回目の訓練であったが、昨年から初めて新迷彩の戦闘服と89式小銃が貸与され、気分一新しての訓練であった。訓練初日は、着隊後、被服を受領し階級章を戦闘服に縫い付けたりしながら過ごし、その後、身体検査、隊旗授与式・編成申告式などを行った。予備自衛官訓練では、その都度、訓練招集を担任する現役部隊が変わるが、今回は第1後方支援連隊の第1整備大隊にお世話になった。2日目は、「気をつけ」「敬礼」などの基本教練を実施後、射撃予習、体力検定を行った。3日目は、89式小銃を使った実弾射撃を実施。伏せ撃ち・膝撃ち(しゃがんで撃つ)の検定射撃を行った結果は、ギリギリの合格であった。4日目は、分隊に号令をかけ行進させる移動間の基本教練、敵を警戒・監視する歩哨訓練、銃の分解結合などを行った。最終日は、東京地方協力本部長の訓話、被服返納、隊舎の清掃などをした後、隊旗返納式・編成解組式を行い、あっという間に5日間の訓練が終了した。以上の様に招集訓練では、自衛官として部隊行動ができるよう練度の維持向上をはかるために各種訓練が実施されるが、課業外でも色々な職業をもつ予備自衛官同士の交流があり、有意義な時間を過ごすことができた。
■大震災の災害派遣
未曾有の災害となった東日本大震災では、自衛隊も過去最大の災害派遣を行い、陸海空の統合運用についても、大規模な運用を実施することができた。そして、大きく評価できることは、初めて予備自衛官の災害招集が実施されたこと。しかし、当初は1万名規模といった報道もなされたが、実際は数百名程度の招集しかされなかったのが実状である。発災後、筆者のもとにも東京地方協力本部から安否確認とともに災害招集に応じられるかといった連絡があり、是非ともお役に立ちたいと思っていたが、最終的に招集されなかった。予備自衛官の招集に当たっては、予備自衛官の体力や受け入れる現役部隊の準備などの問題もあろう。しかし、こうした問題点を洗い出し解決するためにも、今回の災害派遣では積極的な招集をするべきであったと考える。大規模な災害派遣にあたり、現役部隊を支えるのが予備自衛官の役目であり、実際に被災地に入らなくても、派遣された現役部隊の駐屯地の留守番位はできたのではないか。約3万9000名の即応も含む予備自衛官は、ただ定数をそろえる頭数だけであってはならない。本当に活用できる予備自衛官制度を築くためには、更に積極的な運用が必要であろう。そして、このことは災害派遣だけでなく、防衛出動についてもいえる。不安定な東アジア情勢をながめつつ、予備自衛官の抑止力としての機能を再認識しなければならないと、強く実感するものである。 |