年頭の辞に先立ちまして、昨年発生いたしました東日本大震災で亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。被災地の一日も早い復興を心からお祈りを申し上げたいと思います。
平成24年の年頭にあたり、全国各地で昼夜の別なく任務に従事する隊員諸君に対し、そして世界各国にて海賊対処活動、PKO活動、大使館勤務に活躍されている隊員諸君に心から敬意を表し、御挨拶を申し上げます。
昨年は、東日本大震災への対応に力を尽くした1年でもありました。10万人体制による災害派遣では、直接現場で活動に携わった隊員はもちろん、その隊員を支えた全国の自衛隊諸君にも、国民の期待に応える働きが出来たものと感じております。また、国内における日々の警戒監視活動のほか、海外におけるPKO活動、海賊対処活動などで自衛隊の力が存分に発揮された年でもありました。
一方で、動的防衛力の考え方の下、必要な情報収集・分析に努め、日頃からの警戒監視を徹底し、厳しい訓練により部隊の練度を向上させるとともに、防衛力整備を着実に進める必要を強く感じております。来年度には、先日選定いたしました次期戦闘機の整備の開始をはじめ、重要な事業が予定されておりますが、これらの着実な整備に努めて行きたいと考えております。
本年は、ロシア、韓国及び中国といった我が国周辺国の多くにおいて選挙や指導層の交替が予定される節目の年でもあります。核・ミサイル開発を進めている北朝鮮では、昨年末に金正日国防委員会委員長が死去し、今後の政治・軍事面での動向に注目する必要があります。また、中国は国防費の高い伸びを背景に軍事力の近代化を図るとともに、我が国の近海などにおいて活動を活発化しており、ロシアも軍事活動を活発化させております。このように、我が国を取り巻く安全保障環境は依然厳しい状況にあると言えます。
こうした観点を踏まえ、本年に取り組んでいく諸課題について、申し上げたいと思います。
まず初めに、防衛大綱に基づき進められている構造改革は、厳しい財政状況の中にあっても着実に進展させていかなければなりません。そのために、省内の各機関が先進と改革の気風をもって業務にあたり、全国の各部隊が持てる能力を最大限に発揮することが必要であります。さらには、東日本大震災に際して得られた教訓・反省を踏まえ、国民からの高い期待に応えられるよう装備の充実や訓練の強化に努め、日々の活動の成果につなげてまいります。
次に、日米同盟については、我が国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえれば、我が国のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとってますます重要になってまいります。両国間の安全保障関係は極めて密なものではありますが、今後は、平素から両国の共同の活動を活発化させる動的な日米防衛協力を進めることにより、抑止力や危機への対応を強化するなど、日米の防衛協力を充実させていくことが急務であります。また、普天間飛行場の移設問題を始めとする米軍再編につきましても、沖縄の厳しい声を真摯に受け止めながら信頼関係を向上させていく中で、着実に進めていきたいと考えております。米軍の抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を速やかに実施するとともに、日米同盟を深化させていくことで、地域の平和と安定の確保に重要な役割を果たしていけるよう努めてまいります。
また、アジア太平洋地域の平和と安定のためには、日米二国間に加えて、地域の国々との協力関係を深めていくことも不可欠であります。我が国と基本的な価値観及び安全保障上の多くの利益を共有する韓国やオーストラリア、さらには東南アジア諸国やインドとの積極的な協力・交流を図り、日本の平和と安全をより強固なものにしてまいります。
さらには、海外における自衛隊の活動について申し上げます。昨年末、政府は新たに南スーダンPKOへの施設部隊等の派遣を決定いたしました。南スーダンという昨年独立したばかりの国の国造りという国際社会の要請に応えるものであります。我が国の国際協力における新たな時代を切り開くものであると考えております。現在の司令部要員派遣に続き、部隊派遣にも万全の態勢で臨んでまいります。また、アデン湾における海賊対処活動は本年で丸3年を迎えます。海外におけるこうした自衛隊の活動は、各国から大変高い評価をいただいております。今後とも、国際社会からの要請に適切に対応できるよう、所要の態勢の整備を進めてまいります。
最後に、昨年は震災、災害派遣、訓練中の事故などにより隊員の尊い命が失われました。大切な隊員の殉職は、ご遺族はもとより防衛省・自衛隊にとって、そして我が国にとって誠に大きな痛手でございます。
同時に、部隊による事故は、自衛隊と共存する地域の方々に不安を与えるものでもあります。本年は事故を無くし、日々の訓練・活動に今まで以上に万全の注意を払う必要があると考えております。
私の好きな言葉に、「百術は一誠に如かず」というものがあります。どれほど権謀術数をはりめぐらしても、愚直でも精一杯の誠意を示す方が、ずっと相手に響くものであります。我が国の防衛という任務は生半可な気持ちで遂行出来るものではなく、心からの誠実な取組み無しには解決出来ない、そういった課題ばかりであります。また、先程申し述べましたように、国民の期待が高まる中、引き続きその期待に応えていくことは、これまで以上の努力を要することでもあります。新たな年の始まりとともに、初心をもう一度思い起こし、全ての任務に真心を持ってあたるように留意をし、国民の生命・財産を守り、領土を保全するという崇高な任務に専念していただきたいと思います。
隊員諸君並びに御家族の皆様方の益々の御発展、御健勝をお祈りするとともに、この1年が防衛省・自衛隊にとって飛躍の年となりますことを心から祈念をし、年頭の辞といたします。 |