8月11日パリオリンピックが閉幕した。東京オリンピックが4年前でなく3年前だったので、オリンピックがもう来るのかという思いがしたが、終わってみればパリ五輪も良い五輪だった。
日本選手は金20、銀12、銅13、総数45個のメダルを獲得した。金、総数とも海外の五輪で過去最高。国、地域別の金メダル数は、米国、中国に次ぐ第3位だった。海外の大会で金メダル数第3位は、1968年のメキシコ大会以来。
日本選手の活躍は皆すばらしかった。体操男子団体の優勝には感動した。団体戦はフランスに負けたが、日本の柔道も良かった。日本人の柔道には美しさがあると私は思うのだがどうだろうか。レスリングでの日本の強さには驚いた。日本選手が次々と勝ち、金8個を獲得した。国内での真摯な研鑚と努力の賜物であろう。フェンシングでの日本の強さも驚きだったが、スケートボードで優勝した若い選手の精神力も特筆したい。陸上競技は五輪の花だが、競走は黒人が圧倒的に強い。人類(ホモサピエンス)は他の哺乳類に比べて極めて均一な種族であって、遺伝子は99・99%以上共有されており、いわゆる「人種」の概念には科学的な意味はないという。しかし、そのわずかな違いの中に、競走における黒人の筋力と骨格に遺伝的な優位性があるのだろう。北口さんの槍投げの金はすばらしかった。この人は、ハンマー投げの室伏さんのようなスポーツ界の指導者になっていく人のように思われた。競泳も競走と同様、遺伝子のわずかな違いによる人種的な体力差があるように思っていたが、中国が競泳で欧米や豪州に負けない実績を挙げているのを見ると、そういうことはないのかもしれない。中国といえば卓球における強さは驚異的である。国技のような卓球の位置付けと、すぐれた練習システムが言われるが、この競技はよほど中国人に合っているのではないかと思ってしまう。
国別メダル獲得数を見ると、人口の多い大国がメダル数が多いのは当然だが、それだけではなく、国力と人々の活力がメダル数に現れると思える。人々がある程度豊かで、自己実現でき、活力ある生活ができている国はメダル数が多くなる。韓国と北朝鮮は全く同じ民族で、人口は韓国が北朝鮮の2倍程度に過ぎないが、メダル獲得数は全く違う(韓国が金13、北朝鮮0)。両国の国力の差が出ている。日本はどうか。日本のメダル数は、過去、だいたい英、仏、独、伊、韓国などと同じくらいで、世界的に見てある程度豊かで活力のある国の一つである。パリ五輪で日本がこうした国と同程度以上のメダルを獲得したのを見て、日本は平成以来経済力/国力が凋落し続けているが、人々の活力は維持され、本当に力のある若い人々が生まれてきているのではないかと思ったりする。若い日本人選手のインタビューを聞くと、皆立派だと思う。楽しんで、集中したこと、そして感謝の言葉を口にする。成熟した、真に力のある若い日本人が増えてきていると思ったりする。
オリンピックに参加し、多くの活躍する人を生む国が概して良い国だと思う。ロシアは国家ぐるみのドーピングが発覚し、オリンピック参加資格を失っていたが、ウクライナ戦争を起こしたため、改めて無期限の参加資格停止となった。
オリンピックは、世界平和と人間の尊厳の理想を掲げて始められた祭典であるが、常に政治の影響を受け、政治に利用されてきた歴史がある。しかし、オリンピックは世界に貢献してきた意義あるイベントだと思う。今後もオリンピックを継続するのがよい。
(令和6年9月1日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。 |