12月21日から23日の間、東京・代々木第2体育館で2008年レスリング日本一を決定する天皇杯全日本選手権が開催された。
この大会に自衛隊体育学校から28名の隊員が参加し5名の隊員が優勝、準優勝6名、3位5名の成績を収めた。特にグレコローマンスタイル66kg級では、藤村義2陸曹(26)が清水博之空士長(23)との同門対決を制し、見事優勝するとともに、グレコローマンスタイル部門最優秀選手賞に輝いた。
また、同じグレコローマンスタイル74kg級では鶴巻宰2陸曹(24)が膝の負傷を跳ね除け、自身大学生時代以来4年振り2度目の栄冠を獲得した。フリースタイルでは、北京五輪銅メダリスト湯元健一選手の双子の弟である湯元進一2陸曹(24)が55kg級で優勝。試合後のインタビューでは兄健一に「ロンドン五輪へ先にスタートしたぞ」と述べ、今後の活躍を誓った。
女子は48kg級で坂本真喜子3陸曹(23)が安定した戦いぶりで貫禄を見せつけ優勝、銅メダルを獲得した10月の世界選手権から着実に成長していることを証明した。また、72kg級では3年前に自衛隊体育学校で柔道からレスリングに転向した佐野明日香2陸曹(26)が、初優勝を飾り、この階級王者の浜口京子選手の最有力後継者であることをアピールした。
この大会はオリンピック後の最初の全日本選手権であり、ロンドンオリンピックへ向けて自衛隊体育学校は幸先の良いスタートを切ったことになる。
自衛隊所属隊員入賞者は次のとおり。
〈優勝〉▽フリースタイル55kg級 湯元進一2陸曹▽グレコローマンスタイル66kg級 藤村義2陸曹▽グレコローマンスタイル74kg級 鶴巻宰2陸曹▽女子48kg級 坂本真喜子3陸曹▽女子72kg級 佐野明日香2陸曹〈準優勝〉▽フリースタイル60kg級 大館信也1陸曹▽グレコローマンスタイル60kg級 谷岡泰幸3陸曹▽グレコローマンスタイル66kg級 清水博之空士長▽グレコローマンスタイル120kg級 新庄寛和2陸曹▽女子63kg級 工藤佳代子陸士長〈第3位〉▽フリースタイル74kg級 小原康司3海曹▽フリースタイル96kg級 坂本憲蔵陸士長▽グレコローマンスタイル60kg級 城戸義貴陸士長▽グレコローマンスタイル66kg級 江藤紀友2陸曹▽女子51kg級 関根ゆう陸士長
〈注目の選手〉 『湯元進一2曹』
オリンピックイヤーであった2008年も押し迫った12月23日、東京代々木第2体育館で新しいヒーローが勝利のコールを受けた。自衛隊体育学校所属、レスリングフリースタイル55kg級の湯元進一(24)である。湯元には双子の兄健一がいる。
北京五輪フリースタイル60kg 級で銅メダルを獲得したのが健一だった。銅メダルを兄が勝ち取った瞬間、進一は兄の支援要員として北京にいた。必死になって兄をサポートし声援を送っていた進一は兄の勝利を心の底から喜んだ。しかし、別の思いも残った。
双子の兄弟がレスリングを始めたのは小学校3年の時だった。大学へ進むまで二人は切磋琢磨して、時に励ましあってレスリングの道を歩んだ。兄弟といっても双子であり、兄との差があるわけではない、実際、試合で兄に勝ったこともあるという。だが、容姿が似ているが故に、特に五輪以降は兄健一と間違われることが多く、最初は違っていることを指摘していたが、あまりにも多く間違って呼びかけられたため、そのうち説明するのが面倒になり、否定しない場合もあったという。単純に喜んでいた自分の中に、悔しい思いも芽生え始めた。その原因は、間違えられたこと以上にオリンピックの大舞台に自分が立つことができなかったという思いに他ならなかった。
そして、この日12月23日、オリンピック後の最初の全日本選手権で進一は勝つことが出来た。それは完全な勝利とはいい難いほろ苦い勝利であったが、この勝利は大きかった。全日本選手権初制覇というだけでなく、世界選手権出場へ王手をかけることが出来たからだ。試合後のインタビューで、進一は「ロンドン五輪に向けて健一より先にスタートしたぞ」と叫んだ。この双子の兄弟の物語は今第2章が始まった。それを告げる雄叫びだったのだ。レスリングフリースタイル55kg級には北京五輪銀メダリストの松永選手等の強敵が多くいる階級だが、この階級で勝ち残ればメダルも夢ではない。
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