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自衛隊ニュース   1133号 (2024年10月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第159回>

貧にして怨み無きは難し−孔子

 『論語』に言う、「子曰く、貧にして怨(うら)み無きは難く、富みて驕り無きは易し」と。貧乏で恵まれない人が、社会を恨むようになる。よほどできた人物でも、これを無くすのは難しい。これに比べると、裕福で恵まれた人が、驕り高ぶらないでいるのは易しいことだ。二千五百年も前の人間通、孔子の言葉である。
 孔子は貧乏で代表させたが、人の怨みの原因は貧乏だけではない。また、無くすのが難しい、厄介な感情は怨みだけではない。「憤り・怨み・嫉妬・憎悪」といった、人間の複雑な負の感情を「ルサンチマン(フランス語 ressentiment)」といい、概して弱者、敗者が、敵わない強者に対して内面に鬱積させる場合が多い。ルサンチマンは、人間心理の根底にかかわり、克服が難しい。
 ルサンチマンはしばしば他者に対する復讐心を伴い、社会を攻撃する言動の温床となる。モンスタークレーマー、ネットに誹謗中傷のコメントを投稿し続ける、認知度の高い芸能人やスポーツ選手に対するSNSでの誹謗中傷、政治家に対する過度な非難や中傷、官僚バッシングなど、現代社会の様々な問題がルサンチマンから発生している。
 福澤諭吉が『学問のすすめ』で、「怨望の人間に害あるを論ず」と、今で言うルサンチマンの一つ、「怨望」を論じている。凡そ人間の不徳は多いが怨望ほど害あるものはない。徳不徳は一概に決められない。「節倹」は徳であるが、「節倹」も行き過ぎると「貪吝」という不徳となる。同様に驕傲と勇敢、粗野と率直、固陋と実着、浮薄と鋭敏など、すべて、働きの場所と強弱の度で徳になったり不徳になったりする。しかし、「怨望」だけは一方的に不徳である。怨望は人と自分のあり様に不平を抱き、他人を損じ、他人を不幸にして満足しようとする、不善の最たるもの。怨望は衆悪の母で、詐欺虚言、猜疑、嫉妬、恐怖、卑怯の類は怨望より生じ、私語、密談、内縁、秘計となって見(あら)われ、徒党、暗殺、一揆、内乱などに発展する、と。
 ルサンチマンと同じように、精神の客観性を欠くものに人の被害者意識がある。怨みや嫉妬、憎悪といったルサンチマンが攻撃性を生むように、強い被害者意識の持主が攻撃的行動に出て、加害者となることがある。人に被害者意識が生じるように、国家にも被害者意識がみられる。ロシアは大国であるが、被害者意識が強く、ロシアの侵略戦争と攻撃的防衛戦略にこの意識が横たわっている。ウクライナ戦争を正当化するのも、ロシアは加害者ではなく、被害者だとの国家感情がある。
 中国にも被害者意識がある。中国は近代を欧米や日本に奪われた屈辱の歴史と感じている。力をつけた今、「偉大なる中華民族の復興」といったスローガンを唱え、膨張主義を取る背景に、強い被害者意識と伝統的な中華思想とミックスした複雑な感情がある。
 イスラエルとハマスとの戦争は、イスラエルが加害者の様相を呈している。しかし、イスラエルの攻撃性の根底に強い被害者意識がある。ヨーロッパで迫害され、近年ホロコーストを経験したユダヤ人の恐怖心と被害者意識は根深い。恐怖心と被害者意識がハマスやイランとの戦争を正当化する。
 被害者意識やルサンチマンといった負の感情を根にもった問題の解決は難しい。負の感情が意識の下(潜在意識)に沈潜し、自覚されることなく、攻撃的で自己中心的な言動となって顕れることもあるだろう。負の感情の存在をよく認識し、理性の精神でこれを克服するしかない。
(令和6年10月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


准曹で出向
-新しい選択肢-
東京都庁で現役陸曹が奮闘中

 「防衛ホームさんですか?」淡いブルーのワイシャツを着た、スラッとした爽やかな男性に声をかけられた。一瞬、都庁職員かと思ったこの男性、実は自衛官で、昨年4月から都庁に出向している伊藤尚弥2陸曹(33)だった。

緊急一時避難施設を選定

 都庁への自衛官の出向は平成15年に遡る。災害等の情報収集や対応策に係る企画立案等を担う幹部自衛官1名で始まった。その後は幹部自衛官の出向者が続いたが、武力攻撃事態に備えた国民保護計画の具体化を進めるために、現職の准曹自衛官を採用することとなり、他都市の行政機関に先駆けて東京都で伊藤2曹が准曹自衛官出向第1号となった。准曹自衛官の要望を出したのは、元東北方面総監で現東京都危機管理監の原田智総氏だ。

都への自衛官の出向は平成15年から

 伊藤2曹の都庁での肩書は「総務局総合防災部防災対策課主任(避難施設担当)」。主に課長等の管理職の補佐として、緊急一時避難施設の選定に携わっている。緊急一時避難施設とは、飛来したミサイルの爆風等から一時的に身を守るためのコンクリート造り等の堅牢な施設のことで、現在、公共・民間を合わせて約4400もの施設が都からの指定を受けている(施設一覧は都のHPで閲覧可能)。伊藤2曹は適合する施設を選定し、対象施設を訪れて指定受入れの調整等を行っている。

慣れない仕事にも達成感

 伊藤2曹は、平成21年入隊、出向前は第1普通科連隊(練馬)で対戦車分隊長等を務めていた。都庁では避難行動の普及啓発も担当。出向して間もない頃にJアラート啓蒙チラシの制作を任されたが、年度途中のためその事業には予算がついていなかった。いきなり事業の予算調整に奔走することに。「部隊ではいつも走ってばかりで、予算なんて関わったことないのに…」と戸惑ったが、「何かわからないけど、とにかくやっていました」と苦笑いの伊藤2曹。自衛隊で培ったガッツと上司・同僚からのサポートの末に何とか完成したチラシを自宅近くの町内掲示板で見かけた時は、何とも言えない達成感を感じることができた。

「自衛隊の目線に立った知見が聞けて感謝」

 出向してから1年半が経った。部隊に復帰するまでの折り返し地点を迎えた。自衛隊にはない複雑な「都庁ルール」にも慣れてきた。所属する防災部の職員は約180名。その中に自衛隊OBが4名と現役自衛官が2名常駐しているのは心強い。最初は「静かだなー」と思っていた都職員とも笑顔で談笑する。「自衛隊の職場はガヤガヤしていましたが、こちらでは黙々と自分の仕事をこなす真面目な人が多いですね」と違いを感じつつ、「仕事上でのコミュニケーション能力がとても高い人が多い」とその仕事ぶりにいつも感心しているようだ。一方、都庁職員はどう思っているのか。伊藤2曹の同僚職員は、自衛官受入れについてとても好意的で意義を見出している。
 「災害対応では自衛隊をはじめとした防災機関との連携が欠かせません。東京都に派遣で来て頂いている自衛官の方には、東京都と自衛隊の橋渡し役として大変心強く感じています。普段から様々な場面で自衛隊の目線に立った知見を伺うことができ、非常に感謝しています」と話す。「中でも伊藤主任には主に国民保護法に基づく避難施設の指定や避難行動の普及啓発等の業務にととまらず、担当業務の垣根を越えて幅広くご活躍いただいています」と、同僚職員からの信頼も厚い。

出向して広がった視野
スキルアップできる環境

 そんな伊藤2曹、「部隊にいるときはトンネルの中にいた」と例えてみせた。「対戦車といった、専門性に特化したことしか見てきませんでした。しかし都庁では、企業・市区町村・警察・消防等といった関係機関と関わることで、仕事の視野が広がった気がします。自衛隊の中だけでは得られない経験をさせてもらっているのは間違いありません。ここで得た知見を、しっかりと部隊に持ち帰って生かすまでが今回の出向の使命だと思います」と強調する。「今後も陸曹の出向が続くのであれば、必ずスキルアップできる環境なので、興味を持った方は臆することなくぜひチャレンジしてほしいと思います」と、待ち合わせの時と同じ爽やかな笑顔で話してくれた。


国分駐屯地家族説明会
改めて家族の大切さ感じる

 国分駐屯地(司令・村山正人1陸佐)は、9月15日に令和6年度国分駐屯地家族説明会を実施した。
 まず、駐屯地司令による挨拶後に説明会を実施し、各担当より自衛隊の任務・役割、隊員の処遇や福利厚生、家族支援の制度などを家族に分かりやすく説明した。その後、体験喫食として駐屯地名物の牛すじカレーを隊員とともに食べ、家族は、食堂での昼食時間を満足そうに過ごした。
 説明会終了後は、UH60Jの体験搭乗、車両の装備品展示、火山対処のために第12普通科連隊が所有しているAPCの試乗、レンジャーロープ体験などを実施した。参加していた隊員の子供達は、様々なアトラクションを楽しそうに体験していた。
 家族から、「色々な説明を受け、初めて聞くこともあり勉強になった。子供たちもお父さんの働く姿に改めてかっこいいと話していました」との言葉が聞かれ、自衛隊に対する理解促進を図るとともに、隊員にとっても改めて家族の大切さを感じることのできた家族説明会となった。


USO JAPAN受賞
米国慰問協会顕彰式
 9月12日、在日米海軍横須賀基地においてUSO JAPANサービスサルートが開催された。本行事は、国内本土に駐留する在日米陸・海・空軍・海兵隊および陸・海・空自衛隊員の中で顕著な功績を収めた下士官をたたえるものである。
 受賞者は次の3人
 ▽阿部恵2陸曹=第9音楽隊(青森)、中川麻梨子3海曹=横須賀音楽隊、満永加穂里空曹長=第5航空団(新田原)がそれぞれ顕彰を授与された。功績は日ごろの隊務はもちろんのこと共同訓練などにより日米の連携強化や地域への共助が評価された。
 顕彰式は、多くのUSOボランティアに支えられ、受賞者の部隊長や協力団体の陪席を得て盛大に行われた。また、授賞式の冒頭には在日米海軍司令官ジョンソン少将よりお祝いの言葉が述べられ、その後、USOJAPAN太平洋地区副社長のスコット・P・マスカリー氏より受賞者一人ひとりに顕彰盾が手渡された。

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