取り残されている自衛官!
今回からしばらくの間、「人生100年時代」を睨みながら、現役時代に何を準備すればいいか、という本シリーズの核心に迫ってみようと考える。「人生100年時代」、若年定年の自衛官にとっては、マラソンの「折り返し点」を少し回ったあたりで定年を迎え、その後も長い人生が続くことについては、シリーズ冒頭でも触れた。
表は、一般の就業者と退職後2、3年後の元自衛官の「何歳まで働きたいか」の意識調査を比較したものである。
調査の対象・年次など元々のデータに違いはあるが、一般の就業者がすでに「人生100年時代」を意識して70歳を越えても「働きたい」と希望する人が半数以上存在するのに比し、元自衛官の場合は、「65歳まで」が約半数、「70歳まで」が8割弱に及んでいる。若年定年の自衛官は、「人生も若年定年」と思ってはいないだろうか。
「マルチ・ステージ」と「自己開拓」
さて、階級や自衛隊の職務経験などによる差異はあるが、自衛官であったことのアピールポイントは私達が自覚する以上にたくさんある。そして、退職直後は、援護関係者の尽力もあって、「自衛官であった」というだけで雇用してくれる職場に再就職できる。しかし、数年後、せっかくありついた仕事を退職する者も少なくない。
また、現役時代同様、後進に道を譲ることなどから、再就職期間は限定される。防災官のように、条例によって定年が決まっている場合もある。
こうして、再就職途中で退職した者も、無事に再就職任期を終えた60代前半の者も、再び職探しを余儀なくされる。若年定年の自衛官は、人生の「マルチ・ステージ」が宿命づけられており、この「現実」からはだれも逃れられないのである。
この際の職探しは「自己開拓」しかなく、問題なのは、元自衛官のアピールポイントの "賞味期限" が切れてしまうことであろう。自衛官の最終階級、様々な特技や勤務経験などを通じて得た能力よりも、国家資格やスキル、それに仕事に取り組む積極的な姿勢などが決め手になる場合が多い。
60歳前半の元自衛官の職探しを何人も見てきたが、簡単ではない。時には失望感さえ漂う。しかし、見事に職を得て、輝きを放ち続ける一部のOB達の共通点は、現役時代から「定年後はこれをやろう」と計画し、多忙な中にあっても、その計画を実行するために必要な努力を継続してきたことである。まずは、「定年後、いかに生きるか」を考え、計画することが肝要なのだ。
渋沢栄一の有名な「夢七訓」の一部を借りれば「計画なき者は実行なし、実行なき者は成果なし、成果なき者は幸福なし」なのである。以下次号。
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