福岡県久留米市在住の井上澄子さんは久留米自衛隊協力会女性部会元会長である(現・協力会相談役)。久留米商工会議所の女性会参与も務めており、自衛隊協力会女性部会の会員確保に尽力してきた。戦中に旧満州で青春時代を過ごし、引揚時の大混乱を経験した井上さんは、祖国を守る自衛隊に熱い思いを抱いている。
―自衛隊を応援するようになったきっかけは。
井上さん 平成10年に協力会の女性部会設立に加わったことです。年会費は1万円で会員の数は100名前後です(創立時35名で発足、平成20年に100名に)。私は協力会による駐屯地・基地見学の際に自衛官の皆さんが国防のため訓練に真摯に取り組む姿を見てとても感動しました。平成12年まで地元で宝石店を経営していましたので、宝石店時代の顧客の方や、その繋がりから、地元の女性にお声掛けをしています。
久留米は旧軍時代からの歴史が息づく街です。人口30万人の中核都市に3つの自衛隊があります(陸自幹部候補生学校、陸自久留米駐屯地、空自高良台分屯基地)。自衛隊を身近に感じる協力的な市民が大勢います。駐屯地・基地などの見学をきっかけに自衛隊を応援する仲間が増えるととても嬉しく思います。宝石店の仕事を退いたあと、やり甲斐のある活動に取り組むことが出来て幸せです。
―久留米自衛隊協力会の活動内容は。
井上 各地の駐屯地・基地の見学のほか、春の親睦会・夏祭り・花火大会を催しています。女性部会では、幹候校校長や久留米駐屯地司令、西部航空方面隊司令官などの講演会を女性のみを対象に実施しています。そのほか、ヘリコプター試乗会や幹候校の生徒をお招きして会員が久留米の街をご案内する「ほとめきファミリー」があります(ほとめき=久留米弁でおもてなし)。これは、平成19年の夏に当時の番匠幸一郎幹候校校長が企画されました。「学校生活の忘れられない思い出になった」という声が多く、卒業後には全国の卒業生から手紙が届きます。女性部会の規模が大きく、活動が活発な点が、久留米自衛隊協力会の特色です。
―自衛隊にメッセージを。
井上 私は昭和15年に満鉄社員だった兄を頼り家族全員で満州に渡りました。しかし、終戦で状況が一変、中国各地を転々として不安な日々を過ごしました。終戦直後にソ連の装甲車が轟音を響かせて街に入って来た光景は一生忘れられません。私が国防に携わる方を敬う気持ちは、他国の軍隊に平和を蹂躙された記憶によるものです。遥か昔に見送った出征兵士と自衛官の姿が重なって見えるのです。女性部会の会員が家庭で気軽に自衛隊の話題を話し聞かせることで、子供達が自衛隊に興味を持ち、成長して自衛官に応募するようになればと願って止みません。〈シリーズ9〉 |