多発するソマリア沖・アデン湾の海賊対策で、与党海賊対策等プロジェクトチームの海外調査団(団長・中谷元衆院議員)は、2月8日から13日まで佐藤茂樹衆議院議員(公明党)、浅野勝人参議院議員(自民党国防部会長)、事務局の田村重信氏(自民党政調首席専門員)らが参加して、エチオピア、ジブチ、バーレーン、ドバイを訪問した。海上自衛隊艦艇の派遣や新法の制定に向け、政府首脳との会談や軍関係施設の視察を行うなど、過密なスケジュールのなか現場の状況を確認した。本稿は同行の田村重信氏の現地レポートである。
調査団は9日、まず英国内の国際海事機関(IMO)を訪れ、関水海上安全部長らと意見交換を行った。続いて視察したEU海上部隊(EU NAVFOR)作戦司令部では、ファーリンドン参謀長らと懇談した。
同参謀長から、護衛の対象とする船舶、武器使用基準、情報共有など海賊対策の具体的オペレーションについて実情を聞いた。海賊の脅威については、「海賊からの脅威の評価は、非常に低い。まず、海賊が船員や船舶に危害を加える可能性は低い。身代金が下がるからである。また、仮に、軍艦と戦闘行為に臨んだ場合、圧倒的に負ける。従って、海賊は軍艦とは戦闘しない」等のコメントがあった。
同参謀長は、わが国の海賊対策に関し「自衛隊の海賊対処は時宜に適ったもの。国際社会に対する強いメッセージになる」と述べ、新法制定にも期待を寄せた。
調査団は10、11両日には、ソマリア隣国に位置するエチオピアのメレス首相、ジブチのゲレ大統領、ユフス外相らと相次いで会談した。各首脳は、わが国の海自派遣に歓迎の意を表した。
このなかで、エチオピアのメレス首相は、海賊の背景としてのソマリア情勢について、ソマリアの脆弱性、海賊が有力な資金源となり、若い世代にとっても他に職がない状況等について説明があり、海賊に対処する上で、(1)ソマリアの安定、(2)若者への機会の提供、(3)海賊行為のリスクを高め、実入りを悪くすることが必要との認識を示した。
ゲレ大統領は「海賊の脅威は、国際社会に対する現実の脅威だ」とした上で、同国内の港湾はじめ必要な施設を提供する考えを示した。
また、調査団は、艦船や哨戒機を派遣し任務に当たっている在ジブチの米・仏軍基地の施設を見学。12日に訪問したバーレーンでは、ハリーファ国防軍総司令官、サルマン皇太子、ハーリド外相と会談、テロ対策や海賊対策を行う連合海上部隊司令部(CMF)でゴートニー司令官と意見交換するなど現場の声に耳を傾けた。
さらに、ドバイの英国海軍・海運情報集約センター(UK MTO)にも足を運び、商船の位置をウェブサイト上に表示し、事件発生時にCMFなどに通報するシステムについて説明を受けた。
今回の訪問先では、日本に対していずれも強い支援と期待感が表明された。ジブチにおいては大統領の指示の下、施設の使用を含め可能な限りの支援を行う意図が表明された。
わが国は、こうした国際社会の期待に対して、応急の措置としての海上警備行動に基づく艦艇の派遣について、関係先との実務的な調整を含め準備を急ぎ、海賊対策に関する新たな法律の策定作業を加速し、各国のモデルとなるような制度を作ることが急務であろう。
また、海賊問題の解決のためにはソマリアの安定が必要不可欠であり、わが国としても、このような目的に向けた支援に全力を傾注する必要がある。
現地調査を終えた中谷団長は「新法を策定する上で、重要な視察となった」と語り、3月初旬の国会提出を目指し議論を加速していく決意を表明した。
帰国した調査団は17日、総理官邸に麻生太郎総理を訪ね、現場の視察状況を報告した。麻生総理は「各国の首脳が理解を示してくれて良かった」と述べ、調査団をねぎらった。 |