沖縄が本土復帰50年を迎えた本年、「防衛ホーム」は会社創立50年を迎えました。
防衛庁(当時)・自衛隊に対する大変厳しい批判、中には否定的な対応を示す人たちも多かった当時の1972年、「防衛ホーム」は新橋の木造2階建て雑居ビルの一室で産声を上げました。若干33歳の所谷尚武さんは、奥さまも事務員兼記者として参加。社員総数5名でのスタートだったとのことです。(所谷さんは、現在同社会長・今月15日には83歳を迎えます・本紙看板コラム「雪月花」を長きにわたり執筆中 曰く「生涯一記者・物書き」)
そんな所谷さんは、「防衛ホーム」を立ち上げた当時の思いを語ってくださいました。
「一言で申せば、 "自衛隊の出来ないことで自衛隊を応援する" 。一貫した当社の理念です。日夜粛々と任務完遂に努めている自衛隊員に誇りと自信を持っていただき、いかなる事態が生起しても国民の負託に応え得る士気旺盛な自衛隊員を支援して行きたい。併せて、そんな自衛隊員の最も身近にあって日夜支え続ける家族の皆さんとの絆や理解・協力を感謝の気持ちを以て取り上げて行きたい。家族は最も大事な存在です」
所谷さんは、続けます。「今や防衛省・自衛隊を取り巻く国民感情は当時では考えられないほどに好転しました。しかし、これまで経験したことの無い厳しく困難な安全保障環境の中で頑張っている自衛隊員とご家族の皆さんです。しっかり応援し、国民の皆さんの理解と支持を得られるよう尽力して参りたい」
お話を伺っていると、本紙の根強い人気コーナーであるスワタケルさんの「防衛ホーム英語教室」で覚えた表現が浮かんで参りました。「Nothing can be done without motivation!やる気が無ければ何もできませんよ!」(2008年7月15日付け本紙)
ところで、隊員・家族の皆さん、OB、本紙読者の皆さんには、これまでも「防衛ホーム」らしいなぁと感じたり、記憶に残っている記事があるのではないでしょうか。
僕が本紙らしいと思う記事を一つ上げるとすれば、公務災害や通勤災害で障害を負った隊員の部隊勤務や社会復帰の促進に寄与するため自衛隊中央病院に開設されている「職能補導所」(現 職業能力開発センター)修了式の模様を、毎年温かく報じていることです。記事の行間から、幾多のハンディを乗り越えて新任務にスタートする修了生に対する記者の祈りにも似た声援が伝わって参ります。思わず「頑張れ!」と心の中で叫んでしまいます。
また、今でも忘れない記事は、僕が防衛施設庁長官として談合事件の真っ只中に在ったときに、所谷さんが書かれた「雪月花」(2006年3月1日付け号)。
「…これから防衛庁がどのような対応をするか国民は固唾をのんで見守っている。…2回3回と繰り返されることの無いような決着を待っている。…この難関を乗り越えてこそ国防を任せられる組織として国民から評価されるはずだ。今、防衛庁の真価が問われている。」
現在、「防衛ホーム」の社長は、所谷さんの背中を見て育った吉田佳子さん。
所谷さんの思い・同社の理念をしっかり受け継がれると共に、幹部・曹士の別なく、また男性隊員・女性隊員の別なく、等しく隊員・家族の皆さんを全力で応援されています。彼らにとって最もアットホームで安らぎを覚える新聞、全力で応援し続ける新聞、隊員相互の信頼・士気を高揚する新聞を目指して、精力的に全国を飛び回っています。かつての所谷さんをも凌駕する情熱を以て、更なる50年に向けて尽力されています。Let's go「防衛ホーム」!
「防衛ホーム」は一種の業界紙です。しかし通常の業界紙と一番異なるのは、何といっても読者に家族も含まれる点ではないでしょうか。自衛隊員・家族の皆さんには、一層興味を持って「防衛ホーム」を購読していただきたいと思います。そんな観点から、一愛読者として一案を提示してみたいと思います。既にこれまで実施されたり、類似の企画があったかもしれませんが…。
1,ナンバーワン自衛隊員の紹介
銃剣道日本一のような自衛隊ならではのナンバーワン自衛隊員の紹介です。簡単なエピソードも添えて楽しくする。
「防衛ホーム」は、その性質上、部隊等の組織単位で取り上げることがどうしても多くなりますので、個人に光を当てた紹介は有意義。
2,これが一番、うちの部隊
前述の1とは逆に部隊等の単位でそれぞれ自慢できるところを紹介。
3,警備犬の訓練やバイクの訓練などの紹介
中学生に人気の職種に動物の飼育員があります。また、バイクのようなカッコイイ乗り物は、いつの時代でも若者の憧れなんだと思います。そういった好奇心を刺激する記事は購読に益するのではないでしょうか。
4,サバイバルの仕方
世はキャンプブーム。キャンプのプロの陸自隊員が指導するキャンプの極意。例えばシャベル(円匙)の使い方など具体的にシリーズで指導。
5,非常用救命マニュアル
前項と同様、具体的にシリーズで実施。
6,突撃、豆記者がゆく
隊員の家族で中学生までの豆記者を募集してそれぞれ取材を行い、紙面に掲載。
自衛隊の出来ないことで自衛隊を応援し続ける「防衛ホーム」社の皆さんに、心から力いっぱいのエールを送ります。これからも頑張ってください!
(お詫び)
11月1日付け本欄「尽力」の文中、沖縄の本土復帰の日の表記を誤りました。深くお詫び申し上げ、5月15日に訂正させていただきます。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |