ゲッキー)ロシアのウクライナ侵略により、日本国内でも「防衛力を増強すべき」という意見が増えてきているように感じます。岸田政権は、いわゆる防衛戦略3文書の改訂を年末までに行うとしていますが、自民党内ではどのような論点が議論されているのでしょうか?
宇都)まずは戦略環境の認識です。現国家安全保障戦略では、ロシアの勢力は注視しつつ、中国の勢力拡大を一番の懸念事項としてきたのですが、今後は北方と南西域の同時2正面対処もあり得ることを前提とした防衛力整備が必要になってくるでしょうね。特に、陸自は北方東北方から人を間引いて南西域にシフトさせていましたが、全体を増やしていく努力が必要です。
ゲッキー)いわゆる敵基地攻撃力の保有に関してはどのような議論がなされていますか?
宇都)まだ結論には至っていませんが、日本独自の攻撃オプションを持つという方向性は大方の支持を得ています。ただし、何らかの巡航ミサイルのような物を持てば終わりという話ではなく、それ以外にも高速滑空弾や中射程の弾道ミサイル、サイバー攻撃や電子戦攻撃といった、ハイブリッド戦に対応できるような複合的な攻撃オプションを身につける必要がありますね。今回のウクライナの防衛戦争を参考にすべきです。
ゲッキー)現防衛大綱は「多次元統合防衛力」を掲げ、特に宇宙・サイバー・電子戦に力を入れてきました。その方向性は変わるのでしょうか?
宇都)変わらないと思います。むしろそれをより迅速にかつ一層強化していくべきです。特に統合運用のためのインフラ整備には力を入れるべきでしょう。通信やネットワーク分野での陸海空のインフラインテグレーションも長年の懸案事項ですが、これを機に早急に手をつけるべきです。陸海空の各部隊が同じリンクの中で、相互の情報をタイムリーに共有しながら戦えなければ、統合による戦闘などできません。
ゲッキー)整備補給といった後方分野にも目を向けてほしいという部隊の声もありますよね?
宇都)その通りです。予算の制約上、どうしても正面装備品の購入を優先しがちで、後方分野を後回しにしてきました。よって、部品の供給や整備体制の弱体化が進み、部隊の稼働率は大幅に落ちています。それは、自衛隊全体の「継戦能力の低下」を意味します。後方に力を入れなければ、自衛隊はウクライナ軍のように1カ月以上も戦い続けることができないでしょう。
ゲッキー)そうなると、やはり気になるのは予算です。自民党は先の衆議院選挙の公約で「NATO諸国を念頭に、対GDP比2%を目途に増額する」と掲げました。防衛予算は増えていくのでしょうか?
宇都)増えるのは間違いありません。問題は中身です。中期防衛力整備計画の総額をいくらにするのかが勝負でしょう。30兆円?などという報道が出ていますが、そんな額では全然足りません。単純に対GDP比2%なら5年間で54兆円です。先程の後方分野にも経費がかかりますし、研究開発や補給分野(弾薬庫)にも相当の力を入れなければならないでしょう。自衛隊出身議員として、引き続き議論をリードして参ります!
ゲッキー)是非とも現場で活躍する隊員のために、現実に即し実行力の伴う防衛戦略3文書に仕上げてください。ウトタカシ議員の活躍を応援しています!
宇都隆史(自由民主党参議院議員、前外務副大臣、元航空自衛官)
昭和49年生まれ、鹿児島県出身。平成10年に防衛大学校卒業(第42期)、航空自衛隊入隊。平成19年に政治の道を志して退官。平成22年自民党比例
区で参議院議員に初当選。 |