防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   922号 (2016年1月1日発行)
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潜入体験
〈女性自衛官教育隊〉
 女性自衛官教育隊は、11月10日、第88期1次陸曹候補生課程87名に対し、第48普通科連隊の支援を受け、東富士演習場で潜入体験を実施した。当日は冷たい雨が降り、気温が低く、射場一面を乳白色の霧が覆っていた。射場の準備が終了し、学生達は速やかにドウランを塗り清々と潜入準備を実施していた。準備線で交代係の点検を受け、分隊ごと出発壕へ向け前進を開始。出発壕では分隊長による命令下達に耳を傾けながら、前進経路を真剣な眼差しで見つめていた。
 「分隊、前へ!」分隊長の命令が下されるのと同時に機関銃による射撃が開始された。目標地域までほふくで前進するが、富士の砂地は思った以上に前に進むことができず、ほとんどの者が大苦戦であった。砲弾を真似た爆破音と共に、大きく吹き上げる砂を全身に浴び、歯を食いしばりながら泥々になって目標地域に到着した頃、学生達は全身汗まみれで、大きく肩で息をしていた。
 組長の学生は「前進している間、組員の声がほとんど聞こえず、掌握するのが大変でした。何度も周囲を見て、号令を隣の組員に逓伝させ、離れている組員を掌握しやすい様にしました。戦闘下での掌握の難しさを実感しました」。
 その他の学生も「実際の戦場にいるかの様な臨場感のある訓練でした。今後の戦闘訓練での良いイメージができました。どの様な状況でも部下を指揮できる小部隊のリーダーを目指します」と抱負を述べた。

日本 ー インドネシア
初の2+2会合
 12月17日午前、外務省・防衛省で日—インドネシア外務相会談・同防衛相会談が実施された。ワーキングランチを挟み午後からは、都内ホテルで岸田文雄外務大臣、ルトノ外務大臣、中田元防衛大臣、リャミザルド国防大臣による日—インドネシア外務・防衛閣僚会合(2+2会合)が行われた。日本とASEAN諸国の2+2会合は初めて。
 今回の個別閣僚会談及び2+2会合では、日本の平和安全法制をはじめとする安全保障政策、東シナ海・南シナ海などの地域情勢やテロ対策について両国から説明及び意見交換があった。中国の一方的な行動により緊張関係が依然続く東シナ海、南シナ海情勢について、日本側は、「中国とは対話を深めるが東シナ海では毅然とした対応をする。南シナ海の問題は当該国のみならず国際的な懸念だ。航行・上空飛行の自由といった国際法の基本原則を確保するため、ASEANの中核であるインドネシアの積極的関与により、ASEANがワンボイスでメッセージを発信することが重要」と主張。南シナ海のナトゥナ諸島で中国と係争関係にあるインドネシアは「(中国に対し)緊張を高める行為を行わないこと及び国際法を尊重することを求めていく」とし、対話による平和的な解決を求めた。
 また、今年3月に中谷—リャミザルド間で署名された、ハイレベル交流・能力構築支援・PKO・災害救援や防衛装備・技術に関する協力などを内容とした「防衛分野における協力及び交流に関する覚書」に基づく各種取り組みにも進捗があった。インドネシア海軍主催の多国間共同訓練「KOMODO2016」への海自の参加、防衛装備品及び技術の移転に関する協定の策定に向けての協議開始など、「ASEAN諸国の海洋安全保障能力の構築をシームレスに支援していきたい」(岸田外務大臣)という方針の下、幾つかの決定事項を発表。装備品の移転については、海自救難飛行艇US—2も念頭に「協定策定の動きも見つつ具体的な装備協力についても議論をしていきたい」(中谷大臣)と要望しインドネシア側もこれを了承。2016年の外務・防衛当局間(PM)及び防衛当局間(MM)協議の開催、2+2の2年に一度の開催など今後の交流スケジュールについても一致をみた。

コア部隊総合戦闘射撃
〈第24普通科連隊〉
 第24普通科連隊(連隊長・稲田裕一1陸佐=えびの)は、11月29日、大分県にある日出生台演習場において、平成27年度コア部隊総合戦闘射撃を実施した。
 連隊は、コア部隊として常備自衛官及び即応予備自衛官で編成され、諸職種(普通科・特科・機甲化・施設科)協同で任務遂行が、求められている国内唯一の、第8師団内コア部隊である。
この訓練は、連隊のチャレンジ施策の一つとして、即応予備自衛官制度発足以来、諸職種協同(普通科、特科、機甲化)による、初めてとなる総合戦闘射撃である。
 訓練開始に当たり、統裁官 稲田連隊長は、「唯一無二のコア部隊としての各職種の能力を最大限発揮せよ」「各部隊の進取果敢なプロ意識の発揮」「安全管理の徹底と確行」の三点を要望された。
 小銃小隊(89R、MINIMI、狙撃銃、LAM、小銃てき弾)、砲迫部隊(81M、120M、FH70)、対機甲部隊(87ATM、79ATM、74TK)が一丸となり、各職種のプロフェッショナルとして、想定に基づき、次々に侵攻する敵に対して各職種火力を集中し防御任務を完遂した。
 訓練の終わりに連隊長より、「今後、その成果、教訓をあらゆる場面において、活用するとともに、常に敵を意識した創意あふれる訓練の実施に邁進することを期待をする」と講評を受け、訓練を終了した。

日米豪共同の物資投下訓練
〈航空自衛隊〉
 航空自衛隊は12月5日〜10日まで、米国グアム島・アンダーセン米空軍基地を拠点に、ミクロネシア連邦等に属する離島群において、日米豪共同の物資投下訓練を実施した。
 同訓練では、様々な機関から米空軍等に寄付された食料品、衣料品、玩具、文具等をC—130から落下傘を使用し投下。これらは住民の生活物資として役立てられることから「Ope
ration Christmas Drop」と呼ばれ毎年同時期、半世紀以上に渡り住民に親しまれている。
 空自は人道支援・災害救助活動に係る能力向上及び米豪空軍との相互運用性の向上を図る目的で今年初参加した(過去オブザーバー参加はあり)。
 「訓練の目的を達成するとともに、航空自衛隊と米豪空軍との友好関係がいっそう深まった」(航空自衛隊)としている。

鳥取県知事の米子空港に関する要請
〈若宮副大臣〉
 12月17日、平井伸治鳥取県知事以下7名が防衛省を訪問し、若宮健嗣防衛副大臣に対し「国の施策等に関する提案・要望書」を提出した。
 空自美保基地との共用飛行場である米子鬼太郎空港の「国際定期航空路線就航の推進について」、騒音測定器の設置や訓練の事前情報の提供を求める「米軍機の低空飛行訓練について」、外国軍機の部隊間交流や訓練による美保基地使用では事前の情報提供を求める「航空自衛隊美保基地における外国軍機の訓練等に係る情報提供等について」の3つを要望した。
 若宮副大臣は国際線の推進について「防衛省としても前向きに検討したい」と発言、米軍機の低空飛行訓練については「安全である事が一番。近隣住人の皆さんにとって静穏な状態というのを十分に考えていかなくては」と述べた。また、外国軍機の基地利用については「できるだけ早く状況がわかり次第お伝えしたい」と語った。

空軍大学セミナー
〈空自幹部学校〉
 11月24日から26日まで、航空自衛隊幹部学校(学校長・小野賀三空将)は「空軍大学セミナー」を開催した。例年、「国際航空防衛教育セミナー」を開催し教官交流を続けてきたところ、昨年8月の航空研究センター設立を踏まえ、研究活動の充実を目的とした国際セミナーとするべく、「空軍大学セミナー」と改称し開催した。
 本セミナーでは、航空研究センターが実施する事態対処研究の一つである「教訓活動」をテーマとして選定し、「NATO統合分析教訓センター」をはじめとする国外参加者11名を含む、内外の教訓業務の研究者及び実務者が参加した。
 初日、国外参加者は空幕副長を表敬し、陸上自衛隊研究本部教訓センターを研修。その後、NATO統合分析教訓センター参謀長等によるNATOにおける教訓活動の現状等に関する教育が行われ、空幹校の幹部高級課程学生を含む多くの教官及び研究員が受講した。
 翌日、各参加者により教訓業務の組織や運営要領のほか、「アフガニスタンにおける国際治安支援部隊による活動」、「対ISIL軍事作戦」、「ロンドンオリンピックにおける警備活動」などに係る教訓の実例が紹介され、活発な意見交換が行われた。特に航空研究センターによる「東日本大震災における教訓活動」の発表に対し、国外参加者の関心は高く積極的な質疑がなされた。
 最終日は、「指揮官の指揮に資する教訓組織のあり方」を焦点として積極的な議論が行われ、議長総括をもって討論は終了した。その後、国外参加者は浅草方面を研修し「江戸東京博物館」を訪れ日本の伝統・文化を堪能。多くが初の訪日であり、「このセミナーによって航空自衛隊、空幹校と交流できたことに加え、素晴らしい日本の伝統文化に触れることができたことは非常に有意義であった」と感想を述べていた。
 空幹校は、引き続き本セミナーを通じた研究活動を充実させることにより、部隊等が必要とする教育の普及や幹部教育の質的向上を図りたいとしている。

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