防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   938号 (2016年9月1日発行)
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平成28年度富士総合火力演習
「日本の本気。」統合作戦を目の当たりに
 「平成28年度富士総合火力演習」の一般公開が静岡県御殿場市の東富士演習場で8月28日、稲田朋美防衛大臣をはじめとした防衛省・自衛隊の高級幹部や国内外の来賓客、そして倍率約29倍の抽選で当選した約2万7,000名を招いて行われた。
 陸上自衛隊最大規模の実弾演習である当演習は昭和36年から自衛隊学生教育の一環として、陸自が保有する各種火器等の効果と火力戦闘の様相を認識させる事を目的に開始された。当初は非公開であったが、昭和41年からは国民に自衛隊に対する理解を深めてもらうため一般公開をするようになった。
 演習担任官は富士学校長・徳田秀久陸将。演習実施部隊指揮官の富士教導団長・小森一生陸将補を中核に、人員約2,400名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機、その他車両等約700両が参加した。
 演習は例年どおり2部構成で行われた。前段は陸自の火力を主要装備ごとに、遠距離火力、中距離火力、近距離火力、ヘリ火力、対空火力、戦車火力とわけて展示。次々と登場する迫力と緻密さを兼ね備えた射撃演習に、観客は圧倒されるとともに、高性能な装備品と高度な技術レベルに絶大な信頼感を抱いただろう。
 後段演習に先立ち、「統合機動防衛力の実現に向けた取り組み」が大型スクリーンで放映された。その後に後段演習として「島嶼部における統合運用による各種作戦の様相」を展示。状況開始のラッパの後、海自P-3C哨戒機による情報収集から始まった。
 P-3Cの情報をもとに空自のF-2戦闘機が発進及び撃破。広場に進出している12SSM及びMLRDが特科部隊が装備する捜索標定レーダー装置の情報に基づき射撃を行った。次いで敵情監視を行っている車両から転送された情報に基づいた中多による攻撃…と迫力の演習が続いた。来場者は会場入り口で配られた「防衛ホーム号外」のプログラム片手に、実物と名称を照らし合わせていた。
 約2時間にわたり今年度のテーマである「日本の本気。」を目の当たりにした来場者は、「昨夜から車で来て寝ていないけど全然眠たくない」と興奮していた。演習後の装備品展示では、米海兵隊所属のAAVP7、MCV試作車等の展示も行われ多くの人だかりができていた。
 埼玉から来た20代男性社会人は「最近見た映画に出ていた戦車が、目の前で動いているのを見て興奮した。号令もリアリティーがありましたね」と感想を述べ、仙台から来た40代女性は「あれだけ正確に射撃ができるなんて、日頃から厳しい訓練を重ねているからなんでしょうね」と感心した様子で語っていた。
 陸海空自で特定の目的達成のために協力する「統合作戦」を目の当たりできる富士総合火力演習。「状況終了」のラッパ直前の戦車部隊からの発煙と共にほとんどの装備品が広場に進出する戦果拡張。この瞬間「お〜〜」「ふ〜〜」などと歓声がもれ、拍手が聞こえる。このために、何日も前から…学校予行・教育演習から続く一般公開まで、気を抜く間もなく何人もの隊員が昼夜問わず作業をしている。演習の間も終わってからも。表から見えない作業が山のようにある。演習参加隊員だけでなく、陰でこの大演習を支えている隊員さんたちにも心から「お疲れ様でした。ありがとうございました」と伝えたい。

(解説)
・12SSM=12式地対艦誘導弾
・MLRD=多連装ロケットシステム
・中多=中距離多目的誘導弾
・AAVP7=水陸両用車
・MCV=装輪装甲車16式機動戦闘車

演習部隊バックヤード見学ツアーを実施
 8月20日、富士学校は県内の募集対象者等に対し、自衛隊に対する理解を深めて貰おうと富士総合火力演習の演習部隊バックヤード見学ツアーを実施した。
 58名の参加者は、演習参加部隊の各宿営地等をバスで回り、火砲がズラリと並ぶ特科陣地、実際に使用される戦車の整備作業の状況、偵察用オートバイ等を間近で見学。さらに、隊員たちの食事を作る炊事場、演習期間中隊員たちが寝泊まりしているテントの内部等、普段あまり目にすることがない演習の裏側を終始興味津々で見学した。

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