中国が強大化し、日中関係は50年前国交回復した時から大きく質的にも変った。覇権国家化した中国が日本を脅かしている。習近平は台湾侵攻の準備を着々と進めているように見える。中国の台湾侵攻は、日本の安全と存立に大きくかかわる。そのとき日本はどうするか、真剣に考えておかなければならない。
我々はあらためて中国がどういう国か知らなければならないと思う。
まず、中国は西欧的な近代国家ではなく、中国大陸の歴史に現れてきた王朝の一つと見るのが、中国をよく理解する見方だと思う。歴史的に中国は皇帝の支配する国であった。毛沢東は実質皇帝だった。毛沢東の死後最高権力者となった〓小平はトップの交代の必要性を認めたが、2012年党総書記に就いた習近平は国家主席10年任期の規約を撤廃し、終身最高権力者への道を開いた。トップの皇帝化が進んでいる。
中国文明の中核にある中華思想も、現代中国に根強く生きている。中華思想は、中国が世界の文化・政治の中心であり、最高で世界に優越しているという思想(思い込み)で、周辺民族を「夷狄」として蔑む。中華思想は中国人の国民的信念のようで、「夷狄」などは人間でないと信じているように見える。
中国は新疆ウィグル自治区で周辺民族ウィグル人を弾圧し、強制収容などの人権侵害を行っている。主要西側諸国は、中国のウィグル人民族浄化政策をジェノサイドと認定した。また、チベットも中国に侵略され、チベット文化を抹殺する中国の統治に抵抗するチベット人を中国政府は弾圧し、虐殺した。その犠牲者数は120万人にのぼると言われる。
古来日本に文明は大陸よりもたらされ、日本人は中国に敬意を払ってきた。しかし、日本人は中国文明の全体像を理解したとは言えなかった。世界で日本人ほど中国を誤解している民族はいないと言われる。中国の歴史は、一族郎党皆殺しや城内(=市内)の住民皆殺しといった大虐殺、残虐極まりない刑罰、騙しと策略で人を陥れて殺すといった史実に満ちている。宦官の制度、おぞましい纏足の慣習、さらに驚愕すべき食人の習慣も20世紀まで存続した。
中国の全体像を理解するため、中国史に頻出するこうした非文明的、非人間的な史実を直視し、これも中国文明の本質の一部と見なければならないと思う。そして、こうした文明体質は現代も生きていると考える。
中国人は平然とウソを言う。特に国益がかかったとき、積極的にウソをプロパガンダする。武漢で発生したコロナウィルスは、アメリカが持ち込んだ可能性があるなどと言う。中国は「騙される方が騙すより悪い」と考える社会である。「詐の文化」は中国文明の本質を構成している。
中国の残虐性も直視すべきである。1937年北京郊外の通州で、日本居留民200人以上が中国人保安部隊に惨殺された。この残虐極まりない殺害が日本を激高させ、日中戦争の遠因となった。この通州事件など中国史に頻出する大量虐殺そのものであるが、20世紀になっても虐殺文化は生きていたのであり、おそらく現在も健在であろう。
中国文明には人の生命の尊重がない。中国共産党の支配する現代中国も、中国の伝統上にある人権軽視の社会である。日本はこうした中国と向き合っている。中国が覇権化し、世界と日本に支配的な影響力をもつことを私は好まない。
(令和4年10月15日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。 |