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スペーサー
自衛隊ニュース   1085号 (2022年10月15日発行)
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連携の強化を確認
山崎統幕長、カウンターパートと会談

 10月4日、山崎幸二統合幕僚長は、防衛省で米インド太平洋軍司令官のジョン・C・アクイリーノ海軍大将と会談を行った。会談の2時間半前に、北朝鮮が弾道ミサイルを発射、東北地方上空を通過して日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下した。両者はこの事案について既に電話で情報交換を実施していたという。北朝鮮のこのような行為を強く非難し、今後も密接に連携して対応していくことで一致した。
 山崎統幕長はアクイリーノ司令官とは常日頃から意思疎通を図っており、「今まさに強固な日米同盟が我が国を含む地域社会の平和と安定のために行動を示す時期に来ている。我が国自身の防衛力の抜本的な強化を図りつつ、日米同盟をさらに強化し、アクイリーノ司令官と共に我が国と地域の平和と安定、また『自由で開かれたインド太平洋』の構築を実現していきたい」と述べた。アクイリーノ司令官も「この地域における他のパートナー国や友好国との協力関係が、日米の強力な関係に良い結果をもたらすだろう。共に『自由で開かれたインド太平洋』を目指していくために戦っていきたい」と述べた。

フィンランド国防軍司令官
 9月28日・29日、山崎幸二統合幕僚長は、フィンランド国防軍司令官のティモ・キヴィネン陸軍大将を公式招待した。これは2018年に当時の河野統幕長がフィンランドに公式招待された返礼の意味合いがあり、コロナ禍を経てこの度実現した。
 山崎統幕長はロシアによるウクライナ侵略を「国際社会のルールを根底から覆す断じて許されない行為だ」と非難。「欧州の安全保障とインド太平洋の安全保障は、密接不可分の関係だ」と述べ、「今こそ価値観を共有する国々同士が、国際秩序をいかにして維持していくか、共通的概念を共有して対応していくことが求められている」との見識を伝えた。キヴィネン司令官も「お互い同じ価値を共有する国として、同じ民主主義の国として今後協力していくことは不可欠だ」述べるとともにロシアのウクライナ侵攻を非難。「ロシアのウクライナ侵攻は戦略的にミス。その結果フィンランドはNATOに加盟することになった」と述べた。両者は戦略的パートナーとして今後の防衛協力・交流について意見交換し、ルールに基づく国際秩序の維持のため引き続き連携していくことで一致した。


新隊員教育隊爆破訓練
破壊効力を実感
<勝田駐屯地>
 新隊員教育隊は、9月4日〜7日の間、白河布引山演習場において第18期一般陸曹候補生課程後期及び新隊員特技課程「施設」32名に対し「爆破訓練」を実施した=写真。
 この教育は、爆破資材の性能・取扱い及び基礎動作を習得させることを目的として実施しており、導火線による爆破、電気雷管による爆破、導爆線及び電気雷管による爆破を爆破薬の準備・設置・爆破までの動作をもって行われた。
 教官は隊員に対し説明する場面において、各爆破に使用する爆破薬、雷管、導火線及び導爆線の取扱い上の注意事項を強調した。
 爆破薬を使った訓練においては、新隊員が爆破作業における起爆準備を各習会に応じて実施した。
 新隊員は、平素の訓練では感じることのできない爆発音、振動、衝撃波及び爆破の景況を体感し、その破壊効力を実際に確認することができた。
 今回の教育で、新隊員は爆破に関する様々な知識と経験を得るとともに、爆破薬の取扱いにおける危険性や、安全管理の重要性を改めて認識し、教育目的を十分に達成した。

美ら島レスキュー(実動) 3年ぶりに開催
<第15旅団>
 第15旅団(旅団長・井土川一友陸将補=那覇)は、9月27日及び28日の2日間、沖縄県との共催で美ら島レスキュー2022(実動訓練)を沖縄本島、先島諸島の各所及び那覇駐屯地において実施した。
 本訓練は、県内市町村及び防災関係機関等を招致して沖縄県における大規模地震・津波に対する対処訓練を行い、自衛隊としての災害対処能力の向上及び自治体、関係機関等との連携の強化を図ることを目的に行われた。
 また、本訓練は3年ぶりの実施となり、自衛隊及び関係機関等合わせて約800名が参加するとともに、28日に那覇駐屯地において行われた会議には県副知事をはじめ各市町村の防災担当者等の参加及び米第3海兵遠征軍副司令官がオブザーバーとして参加した。
 今後も第15旅団は、各自治体等と連携を図り、沖縄県民の皆様の安心・安全のため日々任務に邁進していく。

ノーサイド
北原巖男
I'mpossible

 9月22日に、東ティモールから都内の大学に留学している1年生の男子学生と2年生の女子学生に同行して長野県内の高校に伺い、全校生徒約720名の皆さんと交流してまいりました。
 留学生の2人は、東ティモールのことや中学・高校時代の日課、日常生活、家族のこと、そしてそれぞれが抱いている将来の夢などについて、率直なプレゼンテーションを行いました。
 東ティモールは、今年独立回復20年を迎えたアジアで一番新しい国。岩手県ほどの全国土に約130万人が住む小さな国です。国づくり・人づくりの途次にあり、「生活の豊かさ(所得・平均余命・就学状況)」を示す2021年の「人間開発指数(HDI)」は、全190か国・地域の中で139位(日本は19位)に留まっています。(出典 国連開発計画‥UNDP)
 そんな国から来た留学生。彼らの説明を、生徒の皆さん達は一言も聴き漏らすまいと、身を乗り出して聴き入っていました。活発な質疑応答も行われました。それぞれに相手の国や国民に対する思い込みの是正や新たな発見、感動等があったのではないかと感じました。
 日本人にとって馴染みの薄い東ティモールの留学生と日本の地方の高校生たちの交流。初めて出会った同世代の若者同士が、大きな笑い声も発しながら、楽しそうにやり取りをしています。次代を担う若者達のそんな様子を目の当たりにしていると、何かとても嬉しくなり、思わず大好きな映画「カサブランカ」のセリフをチョット変えて口走っていました。
  "Today is the beginning of your beautiful friendship."
 プレゼンテーションの最後を締めくくった留学生の言葉は、とても印象的でした。きっと留学生自身が常に自分を励ましている言葉であり、同世代の日本の高校生に向かって、お互いに頑張ろうよと呼びかけた言葉ではないでしょうか。
  "Don't be Afraid to Dream Big!" そして "Impossible⇒I'mpossible"
 これはひとり高校生に限らず、全国の自衛隊員の皆さん・ご家族、そして本紙読者の皆さんはじめ、全ての皆さんに当てはまる応援メッセージです。
 それぞれに大きな夢を追いかけて行こうではありませんか。自分にはできると信じて。
 そんな体験をした後、インターネットで日本電産会長の永守重信氏の講演録を見ていましたら、手に取った人の心に火を点ける本を最近書いたといったくだりがありました。「心に火を点ける」に惹かれて早速購入しました。「大学で何を学ぶか」(同氏著 小学館新書 2022年10月刊行)。僕には関係のないタイトルです。本の帯にも、「これからの時代を生きる君たちへ」。でも読んでみました。
 ・大事なのは夢を語り合える仲間だ。お互いに励まし合い、鼓舞し合える仲間をつくろう。
 ・ともかく人間というものは「自分なんてだめだ」とか「自分にはできない」と思い込んでいたら潜在能力など絶対に出てこないが、「自分は大丈夫」「自分にはできる」と思えたら、途轍もない力が湧いてくるのである。
 ・読者諸君も、まずは自分を信じることから始めてほしい。「できる」と自分を信じて一心に打ち込むことから、本当の挑戦が始まるのである。
 ・「必死で何かを頑張る」という経験が、君を大きく成長させてくれるはずである。
 ・夢があれば苦しいことも乗り越えられるし、夢を語るだけで楽しいのである。そして、その夢を実現したら、もっと楽しい。ぜひ、そういう人生を君たちにも送ってもらいたいと思っている。
 ・もっとも良くないのは、今の自分の環境や境遇を「できないこと」の言い訳にして挑戦もしないことである。(以上、筆者抜粋)
 ロシア、中国、北朝鮮。益々厳しさを増す我が国を取り巻く安全保障環境。今までに無い急峻・困難な坂道を、タイマツを掲げながら慎重かつ確実に歩を進める浜田靖一防衛大臣を先頭に、防衛省・自衛隊の皆さんは連日連夜、それぞれの持ち場持ち場で粛々と国民の負託に応えるべく任務の完遂に努めています。
 皆さんには、できます!
 だって、皆さんなんだから!

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


雪月花
 ーー2022年2月24日ロシアによるウクライナ侵攻。不肖・宮嶋は還暦過ぎの老体にムチ打って「ワシが行かんと誰が行く」と最後の戦場を目指す。3月12日にキーウ入りして以来、4月17日に出国するまで各地で取材。そして5月、再びウクライナへ。戦火の下、不肖・宮嶋が見た「戦場の真実」とは?ーーカメラマンの宮嶋茂樹さんが著した「ウクライナ戦記」(文藝春秋社)のキャッチコピーである。ロシアのウクライナ侵攻直後大手メディアも入っていないウクライナに乗り込んだ。混乱するヨーロッパへのアクセスは極めて難しい。悲しいことにフリーランスのカメラマンを庇護してくれる組織も個人もいない。しかし彼の人懐っこいキャラクターで絆を作りフランクフルトからウクライナのリビウに入った。カネなし、コネなし、足(車)なし通訳もいない状況では孤軍奮闘にならざるを得ない。戦場での撮影だから危険は覚悟の上だが今までに行った戦場の中でも一番怖い思いをしたらしい。避難した壕の中で8時間も銃撃戦が収まるのを待つ時の恐怖、街の中でも野外でもどこからか飛んで来る銃弾、地雷もロシアが仕掛けたものだけでなく味方が設置したものにも注意がいる。街に放りっぱなしの子どもや女性の遺体に目を背けたくなる。戦場だから当然のことだが、宮嶋氏の持ち味である関西弁で書いているから不気味さや恐怖感はそれほど感じない。むしろ戦場に向かう準備や防護装備、アクセス、ホテルライフなど舞台裏の方に興味をそそられる。同書には写真が百枚以上掲載されており、カメラ人が自負する「カメラはペンより強し」を証明している。

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