海上自衛隊創設70周年記念式典が4月26日、前身の海上警備隊創設の地、横須賀市で行われた。酒井海幕長、鬼木防衛副大臣、2人の来賓が式辞等を述べ、国際情勢等が大きく変わりつつある中での新たな船出に決意し、期待を寄せた。(1面参照)
持続力とスピード感
酒井海幕長
海上自衛隊創設70周年の節目にあたり酒井海幕長は式辞で、「国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵略が象徴するように、安全保障環境は激しく揺れ動き、国内の社会情勢も大きく変化、科学技術も劇的に進化している。我が国の防衛政策も転換点を迎えており、海上自衛隊も変化の動向を踏まえ、大胆に、加速的に変革し発展していく必要がある」と強調。
「陸海空の従来領域に宇宙、サイバー、電磁波という新たな領域が加わり、戦闘領域がその広さ、深さ共に拡大する中、今後の勝敗の帰すうを決するのは、これら領域全てを横断する情報、認知の領域での優越であり、従来の発想にとらわれない柔軟な想像力が必須である」と続けた。
「これまで海上自衛隊が掲げてきた精強、即応の旗印に持続力、スピード感を加え、日々努力している」と指針を説明。
さらに、「持続力の確立は単に平素の活動の継続を意味するものではない。有事に想定される高負荷の環境にあってもロジスティック、人的資源、部隊の運用態勢等、作戦遂行に関わる広範な分野での長期持続力が確保できる態勢の構築を目指す」。
また、「目まぐるしい速度で意思決定が行われる現代の戦いにおいては、それぞれの部隊レベルで委任された権限の下、迅速、的確に処置、判断し任務等を遂行していくことが重要。部隊の意思決定サイクルの迅速化を図るため、平素から隷下部隊への権限の委任を推進していくことでスピード感ある意思決定が可能な態勢を構築していく」と述べた。
先輩の汗と涙忘れず
鬼木副大臣
鬼木防衛副大臣は訓示でソマリア沖・アデン湾での警戒監視活動について触れ、「海洋国家である我が国にとって法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく開かれ安定した海洋の秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは極めて重要。資源や食料の多くを海上に依存している我が国にとって国民の生活に直結するものであり、極めて大きな意義を有している。海上自衛隊の活動は我が国が独立国家として存立を全うするために不可欠のものである」と述べた。
また「創設以来の70年という歴史を振り返ってみると、国民から向けられる視線は決して温かいものばかりではなかった。しかし、諸君の先輩方は耐え忍び、ただひたすらに国民のために日々の任務に取り組み、今日の海上自衛隊を築き上げた。幾多の先輩が流された汗と涙を決して忘れることなく、誇りある良き伝統と国民の揺るぎない信頼を引き継ぎ、さらなる発展に向け尽力を」と求めた。
機雷除去一大転換点
岡部19代海幕長
来賓祝辞で岡部文雄第19代海上幕僚長は、約30年前の湾岸戦争の終了後に行ったペルシャ湾での機雷除去を、「派遣部隊は高温多湿と油田火災の煤煙が立ち込めるペルシャ湾において、1件の事故もなく34個(の機雷)を処理し水路の安全を確保するという輝かしい成果を収めて帰国した」と振り返るとともに、「(部隊派遣は)活動させない自衛隊から、活動させる自衛隊へと変わった一大転換点であった」と語った。
国際情勢変化応じよ
河野前大臣
また河野太郎前防衛大臣は、「我が国周辺で力による一方的な現状変更の試みや国際法や確立された国際秩序とは相いれない自国の権利の主張などが行われている。東シナ海はもとより、台湾海峡や南シナ海など日本周辺の海域は年々その不安定さを増している」と述べ、さらに「かつてのように米国が圧倒的な軍事力を誇り世界の警察官の役割を果たせる、そういう時代ではなくなった。これからの日本は、日米同盟を基軸としながらも国際情勢の変化に応じた対応をしていかなければならない」とも語った。 |