荒川の源流の碑に小鳥来る 藤井功風 一番太鼓鳴り声上る熊手売 岡野アイコ 藏窓の開いて柘榴の実の弾け 大谷弥栄 蟷螂横死の腹の太かりき 大谷水田 夫婦には一灯で足る夜長かな 塩田昌恒 船降りてより半世紀鰯雲 鈴木余汐 医務室の医師も加はり落葉掃く 平田 文 山頂のベンチの前の秋薊 福島初五郎 にほどりの空見上げしは水を飲む 木通佳子 秋霖やテレビに映る巴里も雨 田中雅巳 小春日の赤子が夢を見て笑ふ 黒木 豊 コップ酒手放さず見る村芝居 都築由佳 昔観し映画を想ふ夜の霧 水島孝雄 秋深しいよいよ小さき姉の影 内井紀代子 水仙の蕾の固き島の宿 宮崎 薫 口利かず夫婦喧嘩の落葉焚 東 秀文 振り向けば一人となりし芒原 棚橋活明 山裾の日差しを集め石蕗の花 制野和子 選 者 吟 立冬の鳶の高舞ふ神の庭 成川雅夫 (「栃の芽」誌提供)