防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   2009年9月1日号
-
1面 2面 3面 5面 6面 8面 9面 10面 12面

日本陸上競技選手権大会
鈴木2尉が準優勝
アジア選手権代表決める
-

 6月25日から28日の間、広島広域公園陸上競技場(広島ビックアーチ)において第93回日本陸上競技選手権大会兼ねて第12回世界陸上競技選手権大会代表選考競技会が開催され、陸上競技トップアスリートによる日本一の座をかけた熱い争いが連日繰り広げられた。この大会には自衛隊体育学校から7人の選手が出場し、男子800mで鈴木尚人2尉が準優勝、アジア選手権代表に決定した。また、同種目で松本啓典2曹が4位入賞。同じく男子1500mで田村大輔が6位入賞、女子800mで西村美樹が8位入賞を果す等、自衛隊体育学校の存在感を示すことができた。
〈800m男子〉
 これまで学生時代を含め2回の優勝と5回の準優勝を飾って来た鈴木尚人2尉は昨年アキレス腱を故障し、この大会屈辱の予選敗退となったが、春先から徐々に回復。今大会絶好調で迎え、その勢いは予選を1分49秒99、トータル1位で通過。決勝は最初に飛び出した横田選手(慶応大学)が引っ張る形で進んだが、3番手についた鈴木はじっくり我慢して400m過ぎた段階でスパート、集中力切らすこと無く、口野選手(富士通)との最後まで続いた厳しい2位争いを最後は振り切りゴール。1分49秒92で自身6回目の準優勝となり、アジア選手権代表に決定した。
 また、今年度体育学校に入校し、学生時代とは背負うものが違うと語っていた松本啓典2曹は予選1分50秒66、1組1位で決勝進出。決勝は5番手から6番手で自分のレースを行い、最後の直線100mでスパートをかけ最終順位4位でゴール。松本は自身過去最高の4位入賞となった。期待された新人宮崎輝2曹は健闘したものの予選3位3分52秒63、佐藤広樹2曹は調子が最後まであがらず1分58秒91。両者とも予選通過はできなかった。また、男子800mの自衛隊体育学校記録をもつ、今年35歳で既に陸上班を引退している森祥紀2曹は埼玉陸協選手として出場したが1分56秒15で予選落ちとなった。
〈女子800m〉
 歴代2位の記録を持つ西村美樹2曹は昨年の故障以来少しづつ体調が戻ってきている状態での大会だったが、予選では「体が重かった」と語る通り2組を3位でゴール。タイムが2分10秒01で辛うじて決勝に進出。予選を走ったことで軽くなるだろうと周囲は期待したが、決勝は、入賞は果たしたもの、2分12秒32、8位の成績に終わった。
〈男子1500m〉
 自衛隊体育学校からは800mで4位入賞した松本啓典2曹と入校以来3ヶ月で自己ベストを4秒更新し何をやりだすか分からない田村大輔2曹がエントリー。1組を走った田村は今回が2回目の日本選手権挑戦だったが、「思い通りレースができた」と試合後語ったとおり3分50秒31、トータル3位で予選を通過。松本は2種目連続決勝進出を狙ったものの2組9位3分53秒78に終わり予選通過は果たせなかった。
 決勝では、「表彰(3位以上)を狙いたかった」と言う通り、スタート直後から積極的なレースを行い前半3位をキープ。試合巧者がそろうこのレースで、新参の田村へのマークも強かったが、それをどうにか耐え忍んだものの、後半800mから2位以下が団子状態となり、厳しい駆け引きが行われる中、田村は徐々に順位を落とし、最後の200mで持ち前のスパートをかけたが、6位でゴール。記録は3分47秒29。日本選手権決勝という大舞台で入賞を勝ち取れたことは今後の競技生活に大きな経験となったことは間違いない。今後の活躍に期待したい。
(体校広報)


ウエイトリフティング全日本選手権
日本新記録を連発
《体校》
-

 東京五輪以来自衛隊体育学校のお家芸と称されるウエイトリフティング日本一を決める全日本選手権大会が7月3日から5日の間、さいたま市記念総合体育館で開催され、自衛隊体育学校から11人の隊員が参加した。特に85kg級吉岡裕司3尉が前評判通り、スナッチで156kgの日本新記録をマークし、トータル336kgで他の選手を圧倒して、昨年の大会に引き続き2連覇を達成。また、女子58kg級に出場した渡慶次雅子2曹は準優勝に終わったがスナッチで同階級9年ぶりとなる89kgの日本新記録を達成した。
 19年以来の優勝が期待された上地克彦2曹(63kg級)は準優勝。今年度4月に入隊したばかりの本間智也2曹(77kg級)が準優勝、学生と社会人の差がある中・重量級で、本間の現体重を考えると次に繋がる成績と言える。北京五輪代表堰川康信2曹(63kg級)は、今は次の五輪まで地力をつける時期とばかり、階級をあげて挑戦。結果的に3位で表彰台に立ち、順調な仕上がりを印象づけた。また、日本の次世代のエースとして期待される越智一平士長(56kg級)、知念辰吾士長(85kg)がそれぞれ3位に入ったほか、綾部昌慶士長(77kg級)が4位、金城尚乃士長(女子53kg級)、横山勝一士長(69kg級)が5位にそれぞれ入賞した。
〈女子58kg級〉
 これからはこの階級1本で行きたいと語っていた平成19年度王者渡慶次が出場。7人がエントリーするこの階級では、ライバルとなるのは大学記録保持者の松本萌波選手、しかも相手側のセコンドは自衛隊体育学校出身で渡慶次を知り尽くしている三宅義行氏。両者1回目の試技で83kg、2回目の試技では大会記録となる86kgをクリア。3回目、先攻の相手は渡慶次のジャークの強さを知ってか、ここで日本記録とリードを狙おうと90kgを告げると、タイムラグを嫌い、間髪入れず好調の波を一気に持っていきたい渡慶次側コーチは日本記録に1kg少ない87kgを告げ連続試技を選択。2分間のインターバル、会場からは日本新記録への期待が高まる。渡慶次側は満を持して日本記録を狙う89kgをコール。会場が沸き立つ中、渡慶次がプラットフォームに登壇。全身に気合いが漲る中、一気にバーベルを引き上げ、万全の態勢で立ち上がった。この瞬間、元体育学校高橋百合子の持つ日本記録を9年ぶりに更新する89kgの記録が生まれた。3回目を残された松本は、渡慶次の日本記録を超えるというプレッシャーによるものなのか90kgを失敗。ここで渡慶次の優勝が決まったと誰もが思った。
 だが、ジャークでは、1回目松本が104kg、渡慶次が105kg。2回目松本は現時点で優勝するためには絶対上げねばならない109kgをコール。渡慶次は相手の限界を110kgに見定め、これなら優勝を確実にできると判断した108kg。これは3週間前に渡慶次が練習であげている記録で万全の態勢だ。先の試技となったのは、成功すれば優勝することは分かっていた渡慶次。だが、ジャークで差し上げる瞬間左腕が若干屈伸、これがまさかのファールとなり、失敗。3回目の試技。渡慶次は優勝するためのラインである108kgを再度選択し、結果的に連続試技となった。渡慶次の流れはすでに切れていたのか、試技は失敗。逆に松本は109kgを成功させ、逆転優勝となる。渡慶次は日本新記録を達成していながら優勝できなかった。まさにウエイトリフティングという競技がただの力比べではなく、冷徹な駆け引きとメンタルな神経戦が勝負を分けると言うことを改めて見せられた試合だった。
〈男子85kg級〉
 初めての海外での舞台となった5月のアジア選手権出場の経験が大きな転機となったと語る吉岡2曹は、この階級敵なし優勝確実と言われ、周囲の関心は得意のスナッチで念願の日本新記録を超えるかどうかに集中していた。予想通り、他の選手が試技を終了し、吉岡は連続試技での挑戦となり、プレッシャーが大きくかかる中、1回目の試技で150kgを楽々とあげ、連続試技となる2回目再世のコールは153kg。だが会場で見守る聴衆の願いは日本新記録。再びコールが行われ156kgに挑戦。日本新記録に挑戦を告げるアナウンスに会場が一気にヒートアップした。吉岡自身も、何ものにもまして執着していた。だが、日本記録にはこれまで4度挑むチャンスがあった。しかし、どうしても達成することはできなかった。理由は分からなかった。だが、今の吉岡は違った。アジア選手権でみた「有力外国人選手の集中力と、試技前のテンションのあげ方に感銘を覚えた」と吉岡が語った通り、以前のように直ぐにシャフトに飛びつくことは無かった。吉岡はシャフトの具合をゆっくりと確かめながら精神を集中し、冷静さを保ちつつも、一瞬のタイミングで超人ハルクのように血管を浮き立たせた両腕が頭上高く156kgのバーベルを引き上げ、吉岡はそのままゆっくりと立ち上がる。この瞬間、文句のない完璧なパフォーマンスで記録が塗り替えられた。この記録は体育学校所属鈴木2曹が平成12年度国体での記録を9年ぶりに更新するもので、吉岡の念願が漸くかなったのだ。
 だが、吉岡の挑戦は終わらなかった。吉岡は体育学校所属最初の年に記録した以降3年間超えられなかったトータル330kgの壁を今日こそは超えたいと考えていた。世界で戦うには最低トータル350kgは必要だ。そのきっかけを作る上でも、今回の大会で絶対に330kgの壁を越えねばならなかった。不得意なジャーク、特にクリーンの態勢での立ち上がりが弱点。しかし、この日の吉岡はいつもの弱さは見せず、危なげなく1回目170kg、そして2回目の試技でトータル330kg超えとなる175kgをクリア。続く3回目、180kgを気合いのこもった試技で達成。これで世界で戦っていける。その思いを表現するかの様に吉岡は成功直後にバク転を決め、会場は大いに盛り上がった。(体校広報)


話題の新刊
戦いの論理と競争の論理
企業と国家のニューパラダイム
三代憲良 著
-

 これまで陸上自衛官、ビジネスマンとして、それぞれ二〇年にわたり双方の職を経験した著者が、その蓄積してきた体験と知識の集約として、「戦いの論理と競争の論理」(芙蓉書房出版)と題する著書を出版した。内容は、戦略(軍事)と商略(経営)の関連性、国や組織の体質、軍と企業の教育やリーダーシップについて触れ、さらに著者の国家、自衛隊、企業の各組織に対する思いなどが述べられている。これまで、こうした軍事と経営を具体的に関連させて記述した書籍はなく、その特異性から出版となったものである。
 これまでの企業戦略論は、ただ、競合との「競争」に勝つための競争戦略として語られてきた。しかしながら、企業戦略をそうした「競争」という意義にしか捉えてこなかったことが、様々な問題を生むことになった。ビジネスを競争ではなく、軍の「戦い」と関連づけてみると、企業には、顧客、競合他社、内外環境という三つの敵が存在し、加えて、市場は戦場、武器・弾薬は商品やサービスという、類似性や関連性も見出すことができる。また、自衛官の戦略、戦術思考、指揮官としての能力、資質が、退職後、社会や企業において活用されないのは、国益の損失、と指摘している。
 企業についての情報や知識を得る機会が少なく、またいずれは企業に籍を置くことにもなる自衛官、事務官諸兄にとって、その組織、経営について知るための必読の書である。
 本書は現在、全国の書店にて発売中。(定価1900円+税)


6面へ
(ヘルプ)
Copyright (C) 2001-2014 Boueihome Shinbun Inc