2020東京オリンピック・パラリンピックまで2年を切った今年、ラグビーやボクシング、体操さらに重量挙げと、パワハラ疑惑に関わる報道が続きました。
本紙読者の皆さんの中には、思わずドキッとしたり、「自分と同じだ」、「それはまずい」などとつぶやきながらテレビを観ていた方もおられるかも知れません。
防衛省・自衛隊は、約24万7000人の自衛官と約2万1000人の事務官・技官・教官などが、いずれも自衛隊員として勤務する全国屈指の大所帯です。その重大な任務の遂行には国民の支持と信頼が大前提。そのためには、普段から卓越したリーダーシップの下、旺盛な使命感を持った質の高い隊員が、高い規律を保持し信頼の絆で結ばれている魅力ある組織でなければなりません。
全国の部隊・基地・職場では、スポーツ界の事案等をも踏まえ、改めて、様々な建設的な動きがなされていることと思います。
こうした中、最近目に留まったのは、次の識者の署名入り新聞記事(抜粋)。
〇西洋史家 木村凌二さん。
「昨今、大学の運動部やオリンピックの強化活動のなかでの諸問題を考えるとき、背後に祖父母・孫ほどの隔たりのある世代間の感性の相違が気になる。ウソや不正もあろうが、底流には『感性の変質』があるような気がする。一方は鍛えているつもりが、他方にはパワハラに映るというわけだ。
すべてを『感性の変質』でまとめるつもりはない。だが、経験と権力をもつ年長者は時代の変化にともなう『感性の変質』に敏感になるべきだ」(2018年9月7日付け日本経済新聞夕刊「あすの話題」)
〇青山学院大学陸上部監督 原 晋さん。
「時代が変われば常識も変わる。多くの人の考えは、もとをたどれば自身の経験が核になっているが、大切なのは柔軟性と寛容性。社会背景に沿ったスタイルを常に模索していかなければいけない。逆に、コミュニケーション能力に乏しく、自分の思いばかりが先行すると昔の型にはめようとして相互理解が抜け落ちる」(2018年9月11日付け日本経済新聞「スポートピア」)
思わず、現職時代の自分が浮かび上がって来ました。自分流を良かれと思って通してきたとは言え、そこには若い人たちに対する傲慢さや甘えも見え隠れしています。ときに感情的になっている自分の姿には赤面を禁じ得ません。
現職のリーダーである年長隊員の皆さんには、「柔軟性と寛容性」を持たれ、若い隊員の皆さんの「感性の変質」に敏感であり、理解者であってください。
若い彼らとの間で築いて来ている信頼の絆をベースに、これからも愛情をもって鍛えて行ってください。彼らは必ず応えて行くでしょうし、むしろ望んでいると思います。
ときに「今の若いもんは…」と愚痴りたくなるときもあるでしょう。
でも全く心配ご無用。この言葉は、なんとメソポタミア時代の楔形(くさびがた)文字の碑文にも書かれているとのことですから。
彼らは必ず成長して行きます。どう化けるかワクワクしませんか?
彼らと同じ頃のあなたも、今の自分を想像することは出来なかった。でしょ?
少子化が急速に進む我が国にあって、若い人たちは、もはやお金のためではなく社会のために自分の命をどう使うかを考えるようになっていると言われます。自衛隊はそういった若い人が集まる魅力ある組織でなければなりません。
組織は人。
若い人に魅力の無い民間企業には持続可能性無く黒字倒産が待っています。
北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |