わが国への脅威、防衛戦略、当面の問題点など
経験者が語る国防の常識・非常識
防衛システム研究所編
国防問題は難しくて面倒で、どうも取っ付き難いという人が多い。また、戦後教育のせいか今の指導者層も若い人も軍事の話にうとい。わが国では、昭和20年の敗戦を境に戦争・軍事について一種のアレルギーが生まれた。それは青少年への教育の中で、戦争の悲惨さだけが強調して教えられ、戦争・軍隊は悪であるとの印象が強く植え付けられてきたからだろう。そしてそのことがまた、戦争は軍隊が起こすかのような誤った認識を作り出している。軍隊は「どう戦うか」に責任を持つが、「なぜ戦うか」は政治の責任だろう。このことは洋の東西・古今を問わず認識されていることである。
誰もが平和を求めるのだが、しかし現実に世界中で戦争は後を絶たない。そのような現実をしっかり踏まえて、戦争や軍事に対する正しい認識を持つための一助になればと〈防衛システム研究所〉は本の出版や雑誌への寄稿、講演活動などで意見を述べてきている。本書では、その中からぜひ認識しておいて欲しい「国防の常識・非常識」を50の話にまとめている。第1章「軍事の話」では、軍事アレルギーを払拭し、戦争・軍事に対する基本的な認識を持ってもらうための話を選んでいる。第2章は「わが国周辺の話」として、ロシア・中国・朝鮮半島を中心に、わが国への影響を現実的な視点から監察している。そのような視点に立ってわが国の周辺を眺めると、軍事に無関心な時とは違う世界が見えてきて、平和ボケなどと言ってのんびりしているわけにはいかないことが分かる。第3章には「国防に備える話」として、独立主権国家のあるべき国防の姿とはどのようなものかをまとめている。最後の第4章「当面の問題と今後の課題の話」として、今焦点になっている日米安保・日米共同や国際貢献活動あるいは自衛隊内部の諸問題について監察し、意見を述べている。
本書は、いずれも30数年自衛隊に奉職したメンバーが、それぞれの所掌で実体験し、実際に感じたことが元になっている、いわば本音の話である。〈防衛システム研究所編集主幹・松島悠佐、委員・島本順光、中村徹、樫村保貞、津々谷格〉(内外出版(株)刊、定価945円) |