外山千也大臣官房衛生監を団長とする日本代表団が、10月5日から7日までの3日間にわたってマレーシアのクアラルンプールで開催された第38回国際軍事医学会総会に出席した。日本からは衛生監以外に後藤謙和防衛省人事教育局衛生官付部員、瓜生田曜造海幕首席衛生官、石川誠彦1等空佐、ヌ田成雄航空医学実験隊1佐、西田育弘防衛医科大学校生理学教授、床野聡2等海佐らが参加し、開会式には在マレーシア日本大使館の長谷場修也防衛駐在官が出席した。 しお政府代表委員に外山千也衛生監 日本は、昭和31年に外務省、防衛庁の共同請議により閣僚決定を経てこの国際軍事医学委員会(International Committee of Military Medicine:ICMM)に加盟した経緯があり、現在の政府代表委員には防衛省大臣官房衛生監が任命されている。国際軍事医学会議は、同委員会が加盟国の代表者を集めて2年に1回定期的に開催している総会で、軍事医学の専門家同士の意見交換の場として、重要な役割を果たしている。 盛大に開会式典 10月5日午前8時30分、オープニングセレモニーの会場となったコンベンションセンタープレナリーホールのステージ上は豪華絢爛な花々で埋めつくされ、世界中からの各国代表団が勢揃いした。冒頭、迫力ある戦闘状況のシーンを集めたビデオ上映、野戦での心肺停止患者をモチーフにしたアトラクション、101カ国に上る全加盟国の国旗を掲げた入場行進が観客を魅了した。それに引き続く開会式では、前回総会開催国チュニジア代表から今回開催国のマレーシア代表へ委員長交代の儀式、ジャック・サナブリア国際軍事医学委員会事務総長による挨拶とマレーシア軍ダトウ健康局長による開会宣言があった。 5日の総会では、新規参加国について今回ニュージーランドが意思表明のプレゼンテーションを行い、オブザーバー国がこれを承認した。また、技術委員会、国際作業部会の長官から、2007年7月アルジェリア、2008年9、10、11月ウルグアイ、ローマ、マレーシア、サンアントニオで開催された科学会議活動報告が行われた。そして、国際作業部会の答申書に基づく科学会議の機能に関する規約(第19条及び20)の簡便化と国際作業部会の報告に伴う科学会議の機能に関する内部オーダー規則の提案がなされ承認された。さらに、世界の各地域における作業部会(RWG:全米、汎アフリカ、北西アフリカおよび汎アラブ)個々の議長からの報告があり、2010年に予定されている各地域作業部会(アフリカ:コートジボアール、アメリカ:ニカラグア、アラブ:サウジアラビア、ヨーロッパ:ロシア)の紹介が行われた。また、中国がアジア地域作業部会(RWG)の設立を提案し、この学会開催期間中に意見取り纏めを行うことを表明した。これについては、アジア地区作業部会設立のための特別会議が別途開催された。この特別会議では、これまでアジア豪州地区には存在していなかった地域作業部会について、中国からその設立の提案が行われた。これに対して、外山団長から「日本がアジア豪州地区RWGに参加することについては前向きに検討したいが、正式な返事は、日本に帰って組織内での協議の後となる。また、会議に参加するには、参加費用等に関する事業予算の確保が必要であるので、公式案内は時間にゆとりを持って提示して欲しい」との発言があった。 初の円卓会議 6日の総会では、今回初の試みとして各国代表団長のための円卓会議が行われた。2つの主題(それぞれ主題の専門家によって紹介される)について議論が行われた。1つ目の主題は、感染症についてのWHOとの連携協力の在り方で、GEIS(Global Emerging Infectious Surveillance and Response System)と呼ばれるアメリカ国防総省所管の世界的な新興感染症の監視システムに支援された世界保健機関(WHO)との協力について話し合われた。WHOの担当官から、「GEISとWHOとの協力の提案について」、米国防総省(DoD)担当官から、「GEISについてのシステムの概要や関係機関の紹介、検査対応状況等について」の講演後、各国代表団長を交えた意見交換が交わされた。この中で、外山団長から、「透明性と中立性が保たれている限り、GEISがWHOと協力する提案については支持する」との発言があった。2つめは、災害・PKO時の紛争地域における医療支援の実施問題等について、平和維持活動および災害救急援助活動状況の間に、武力紛争の法律および国際法の適用から生じる問題が議題になった。その中でジュネーブ条約、国際人道法等、国際法の法的枠組みとそれを実際には必ずしも遵守していない紛争地域における現実に対して、どのようにして問題解決に向けた取組ができるかが話し合われた。 7日の総会では、会計委員会の報告が行われ、UNAIDSとUN DPKOが、「ICMMは、2010年の国連安全保障委員会に対して、データの収集、加盟国からのHIV/AIDS情報を特段配慮しつつ、UNAIDS、DPKOと他のパートナーと緊密に連携をとりながら、報告をするべきである。ICMMは、軍におけるHIVテストに関して、高いレベルの専門家を招集することと、紛争地における女性に対する性的暴力を防ぐことに特段配慮しつつ、UNAIDSと米国防総省の指導で未知のサービスに関するグローバルタスクフォースと緊密に連携すべきである」とICMMに勧奨するプレゼンテーションを行った。次回の国際軍事医学会議総会開催国についてナイジェリアとガボンが立候補し、2011年の次回総会は、ナイジェリアでの開催が決定した(代表団記)。
〈訂正〉11月15日号10面「射撃野営に参加して」は「英語弁論大会に参加して」に、亀井真亮陸士長は岡田祐輔陸士長に訂正します。写真は岡田陸士長でした。お詫びいたします。