ゲッキー)ウクライナが大変な状況になっていますね、ロシアとウクライナの政治対立にはどのような背景があるのですか?
宇都)かつてウクライナは旧ソ連領でした。冷戦崩壊に伴い独立しましたが、ロシアはEUに対する緩衝地帯として、ウクライナをロシアの勢力が及ぶ地域にしておきたいという潜在的な防衛本能があります。そのような中、2014年に「ロシアによるクリミア併合」が行われました。ウクライナ南部のクリミア半島をロシアが軍事力を持って領土編入したもので、親露派のウクライナ市民を使い内部から情報工作をし、またサイバーや電子戦闘のハイブリット戦により、大規模な軍事衝突のないままに一気にロシアの侵攻を許してしまったのです。国連や日本も含めた欧米諸国はこれを認めず承認していません。
ゲッキー)ロシアの主張はどのようなものですか?またそれは外交(話し合い)で解決する余地はありますか?
宇都)ロシアは、冷戦崩壊以降、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が旧ソ連領である東欧に拡大していることを安全保障上の脅威であると認識し、これ以上の東欧へのNATO拡大をしないことを明確に表明するよう主張しています。つまり、「ウクライナをNATOに入れないと言え」ということです。確かに、ウクライナとロシアの国境から首都モスクワは目と鼻の先であり、ロシアが警戒するのもわかります。しかし、NATOは自由主義陣営の枠組みですから、参加したい国を一方的に拒否することは絶対にできず、ウクライナもNATO参加を希望している(実際に入れるかどうかは困難)ので、今のところ双方の落とし所がありません。
ゲッキー)戦争にならないように、国際社会の連携でロシアに思いとどまらせるべきではないですか?
宇都)その通りです。国連のグテーレス事務局長も「外交による事態打開」を関係者に訴えていますし、フランスのマクロン大統領やドイツのショルツ首相も個別にプーチン大統領と会談し、緊張緩和に向けた外交努力を続けています。岸田総理も2月17日にプーチン大統領と電話会談し、外交による解決を訴えました。しかし、現状は外交努力の効果が出ているとは言えない緊迫した状態が続いています。
ゲッキー)現地には日本人はどれくらいいるのですか?またその安全確保策について、政府としてどのように取り組んでいるのですか?
宇都)現地には約130名の日本人がいることを現地大使館が確認しています。日本外務省は、ウクライナの危険レベルを「4(退避して下さい。渡航はやめて下さい)」に引き上げ、現在でも邦人に個別に直接連絡を取り、できるだけ速やかに民航機等にて国外退避をするよう促しています。しかし、現地で長くビジネスを行なっていて資産を保有していたり、ウクライナ人と国際結婚していたりと、「すぐには海外退避できない」と考えている邦人も少なくなく、事態の推移を見守っているというのが実態です。しかし、もし仮にロシアが侵攻すれば、自衛隊機やチャーター機を飛ばすことは法律上も困難なので、早めの決心を促しています。
ゲッキー)力による現状変更を認めれば、明日は台湾や尖閣でも同じことが起こらないとも限りません。難しい舵取りですが、ロシアの侵攻を思いとどまらせ、戦争に発展させないためにも日本の外交に期待しています!
宇都隆史(自由民主党参議院議員、前外務副大臣、元航空自衛官)
昭和49年生まれ、鹿児島県出身。平成10年に防衛大学校卒業(第42期)、航空自衛隊入隊。平成19年に政治の道を志して退官。平成22年自民党比例区で参議院議員に初当選。 |