日米安全保障条約改定の署名(1960年)から50年を迎えた1月19日、日米安全保障協議委員会(SCC)の日米の外務大臣・防衛大臣、国務長官・国防長官は共同声明を発表した。また、これに先立って鳩山首相は同日午前、署名50周年に当たっての談話を発表した。共同発表と首相談話は次のとおり。
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(日米安全保障条約)署名50周年に当たっての日米安全保障協議委員会の共同発表(仮訳)
平成22年1月19日 岡田外務大臣・北澤防衛大臣、クリントン国務長官・ゲイツ国防長官
地域の安定確保
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(日米安全保障条約)の署名50周年に当たり、日米安全保障協議委員会(SCC)の構成員たる閣僚は、日米同盟が、日米両国の安全と繁栄とともに、地域の平和と安定の確保にも不可欠な役割を果たしていることを確認する。日米同盟は、日米両国が共有する価値、民主的理念、人権の尊重、法の支配、そして共通の利益を基礎としている。日米同盟は、過去半世紀にわたり、日米両国の安全と繁栄の基盤として機能してきており、閣僚は、日米同盟が引き続き21世紀の諸課題に有効に対応するよう万全を期して取り組む決意である。日米安保体制は、アジア太平洋地域における繁栄を促すとともに、グローバル及び地域の幅広い諸課題に関する協力を下支えするものである。閣僚は、この体制をさらに発展させ、新たな分野での協力に拡大していくことを決意している。過去半世紀の間、冷戦の終焉及び国境を越えた脅威の顕在化に示されるように、国際的な安全保障環境は劇的に変化した。アジア太平洋地域において、不確実性・不安定性は依然として存在しており、国際社会全体においても、テロ、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散といった新たな脅威が生じている。このような安全保障環境の下、日米安保体制は、引き続き日本の安全とともにアジア太平洋地域の平和と安定を維持するために不可欠な役割を果たしていく。閣僚は、同盟に対する国民の強固な支持を維持していることを特に重視している。閣僚は、沖縄を含む地元の基地負担を軽減するとともに、変化する安全保障環境の中で米軍の適切な駐留を含む抑止力を維持する現在進行中の努力を支持し、これによって、安全保障を強化し、同盟が引き続き地域の安定の礎石であり続けることを確保する。
日米同盟は、すべての東アジア諸国の発展・繁栄のもととなった平和と安定を東アジアに提供している。あらゆる種類の顕在化する21世紀の脅威や地域及びグローバルな継続的課題に直面する中、日米同盟は、注意深く、柔軟であり、かつ、対応可能であり続ける。この地域における最も重要な共通戦略目標は、日本の安全を保障し、この地域の平和と安定を維持することである。日本及び米国は、これらの目標を脅かし得る事態に対処する能力を強化し続ける。日本と米国は北朝鮮の核・ミサイル計画による脅威に対処するとともに、人道上の問題に取り組むため、日米で緊密に協力するとともに、六者会合を含む様々な国際的な場を通じて日米のパートナーとも協力している。閣僚は、中国が国際場裡において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、日本及び米国が中国との協力関係を発展させるために努力することを強調する。日本及び米国はまた、アジア太平洋地域における地域的協力を強化していく。日本及び米国は、この地域及びそれを超えて、自然災害に対処し、人道支援を行っていくために協力していく。日本及び米国は、変化する安全保障環境の中で、共通の利益を有する幅広い分野において、米軍と日本の自衛隊との間の協力を含め、協力を深化させていく。
閣僚は、グローバルな文脈における日米同盟の重要性を認識し、様々なグローバルな脅威に対処していく上で、緊密に協力していく決意であることを改めて確認する。日本及び米国は、必要な抑止力を維持しつつ、大量破壊兵器の拡散を防止し、核兵器のない世界の平和と安全を追求する努力を強化する。日本及び米国は、国際テロに対する闘いにおいて緊密に協力することも決意している。日本と米国による現在進行中の海賊対処に関する取組と協力は、航行の自由と船員の安全を維持し続けるために不可欠である。
日米安全保障条約署名50周年に当たり、閣僚は、過去に日米同盟が直面してきた課題から学び、さらに揺るぎない日米同盟を築き、21世紀の変化する環境にふさわしいものとすることを改めて決意する。このため、閣僚は、幅広い分野における日米安保協力をさらに推進し、深化するために行っている対話を強化する。
日本及び米国は、国際的に認められた人権水準、国際連合憲章の目的と原則、そして、この条約の目的、すなわち、相互協力及び安全保障を促進し、日米両国の間に存在する平和及び友好の関係を強化し、民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することに改めてコミットする。
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安保条約)の署名50周年に当たっての内閣総理大臣の談話
日米同盟を深化
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)は、1960年1月19日にワシントンにおいて、日米両国の代表によって署名が行われました。本日は、それから50年の節目を迎える日であります。
日米安保体制は、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の安定と繁栄に大きく貢献してきました。我が国が戦後今日まで、自由と民主主義を尊重し、平和を維持し、その中で経済発展を享受できたのは、日米安保体制があったからと言っても過言ではありません。
過去半世紀の間、冷戦の終結や9・11テロ等、世界の安全保障環境は大きく変化しましたが、我が国をとりまく安全保障環境は、北朝鮮の核・ミサイル実験に見られるよう厳しいものがあります。こうした中、現在及び予見し得る将来、日米安保体制に基づく米軍の抑止力は、核兵器を持たず軍事大国にならないとしている我が国が、その平和と安全を確保していく上で、自らの防衛力と相俟って、引き続き大きな役割を果たしていくと考えます。
また、日米安保体制は、ひとり我が国の防衛のみならず、アジア太平洋地域全体の平和と繁栄にも引き続き不可欠であると言えます。依然として不安定、不確実な要素が存在する安全保障環境の下、日米安保条約に基づく米軍のプレゼンスは、地域の諸国に大きな安心をもたらすことにより、いわば公共財としての役割を今後とも果たしていくと考えます。
こうした認識に立ち、私は50周年を記念する年に当たり、日米安保体制を中核とする日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させるべく、米国政府と共同作業を行い、年内に国民の皆様にその成果を示したいと考えます。
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