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スペーサー
自衛隊ニュース   1084号 (2022年10月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第110回>

英国について

 エリザベス女王が逝去し、国葬が行われた。イギリスは立派な国だとの思いを新たにする。
 イギリスは近代世界で大を成した国である。近代、世界でヨーロッパが興隆した。イギリスは興隆したヨーロッパを代表するような国であった。イギリスは歴史の早い時期に市民革命を経験し、17世紀末の名誉革命を経て、国王は君臨すれど統治せぬ、議会主権の立憲君主制を確立した。イギリスの議会制度は近代的国家統治のモデルとなった。
 19世紀後半日本が開国したとき、イギリスはビクトリア女王時代で、「太陽の没することのない」大英帝国の最盛期にあった。日本は近代国家のモデルを欧米に求め、イギリスを最も進んだ国と認識したが、日本のモデルとしては議会よりも王権の強いプロイセンが良き参考になると考え、憲法はプロイセン(ドイツ)に習った。
 近代的な政治、経済、文化がイギリスで創造され、世界に広がった。その最大のものが、イギリスが議会制度によって確立した、流血のない平和な政権交代のシステムである。それは18世紀前半ウォルポールが首相をしていた時代に、イギリスの慣習となり、伝統となった。その根底にあるのは、政権を離れた人の生命と私有財産の保証である。現在なお世界には、生命と私有財産が保証されないゆえ、死ぬまで政権につく独裁者が少なくない。
 近代の資本主義経済もイギリスで確立した。18世紀後半産業革命の進行とともに、自由主義的国家、自由市場、自由貿易、国際金本位制度に象徴される古典的資本主義が19世紀に成立した。資本主義はマルクスに批判され、共産主義が生まれたが、自由な経済活動を否定する共産主義は失敗し、世界は修正資本主義が主流になっている。
 イギリスの政治的成熟を象徴するのが、保守党の存在である。保守とは人間の理性の力には限界があると考え、それよりも歴史の中で積み重ねられてきた文化、慣習、経験を重視する。理性で思い描いた革新的、進歩的理想が正しいとは限らない。保守主義者はむしろ伝統、慣習、経験の中に政治的叡智が存在すると考える。
 イギリスの保守主義はコモンセンス(常識、良識)と重なる。イギリスがコモンセンスの国ということはよく言われることである。また、イギリスの哲学である「経験論」とも重なる。人間の判断に関し、経験を重視することと、理性を金科玉条としないことが共通している。
 そしてイギリスはジェントルマン(紳士)の国である。ジェントルマンはもともと貴族およびジェントリーとよばれる地主階級の人々を指したが、次第に中産階級にまで拡大し、ビクトリア時代には究極の人間の理想像となった。ジェントルマンの特色として、自制心、正直、策略を用いない、約束を守る、穏健、礼儀正しい、ユーモア、スポーツ愛好、自慢しないが強い自尊心、社会奉仕する、弱者を保護する、生まれが良い、などが挙げられる。イギリスに信頼感をもつ私には、イギリスはこうしたジェントルマンの国だとの思いがある。
 20世紀に世界の覇権国はイギリスからアメリカに移行した。英米は同じアングロサクソンの国家であるが、アメリカが非常に理想主義的で、時として極端な政治決定を行うことがあるのに対し、イギリスはより常識的で安定した政治判断をする傾向があると感じている。
(令和4年10月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


蔵王山での災害に備え山地機動訓練 <第10施設群>
 第10施設群(群長・木ノ下憲一郎1陸佐=船岡)は、8月29日、蔵王山(御釜)、宮城蔵王えぼしスキー場及び公立刈田綜合病院において、山地機動訓練を実施した。
 本訓練は部隊の災害隊区である蔵王山において遭難者が発生した想定で生地を活用し、群長以下人員50名(東北方面航空隊7名含む)、車両14両・ヘリコプター2機が参加して実施した。
 訓練では、当初、東北方面航空隊と連携して、船岡駐屯地から宮城蔵王えぼしスキー場に偵察バイクを空輸し、迅速な前進経路の偵察を実施するとともに、レンジャー隊員を御釜に空輸して、リぺリングから速やかな捜索活動を実施する要領を練成した。引き続き、負傷した遭難者をヘリで病院に搬送する要領について、公立刈田総合病院と連携して練成した。
 蔵王山における訓練は毎年実施しているが、今回は公立刈田総合病院、宮城蔵王えぼしスキー場、東北方面航空隊等、部内外関係機関と協力することにより、より一層充実した訓練が実施できた。

第18次派遣
海賊対処行動支援隊等見送り
 中央即応連隊(連隊長・山田憲和1陸佐=宇都宮)は7月26日、宇都宮駐屯地において第18次派遣海賊対処行動支援隊等(警衛隊長=土屋良平3陸佐以下約70名)に対する出国見送りを行った。
 派遣隊員は、新型コロナウイルス感染対策の為、出国2週間前から体育館で停留措置がとられ、この日は体育館から直接大型バスへ乗車する経路上での見送りとなった。警衛隊長は、「コロナ禍であり厳しい環境下での任務が予想されますが、『安全確保』を第一優先にし、一致団結して半年間の任務を完遂します」と力強く述べ輸送車両に乗車し成田空港へ向かった。
 出国に先立ち、6月28日に宇都宮市長(佐藤栄一氏)、6月29日に栃木県知事(福田富一氏)及び栃木県防衛協会会長(青木勲氏)にそれぞれ出国挨拶を実施し、地元首長等から激励をうけた。
 今回のジブチ共和国への派遣は、中央即応連隊として16回目となる。

駆け付け警護訓練
中央即応連隊
 「場数を踏むことが大事だ」中央即応連隊(宇都宮)隊長の山田憲和1陸佐は、現地では隊員の状況判断能力が最も重要で、そのためにありとあらゆる状況を想定した訓練を数多くこなすことが必要だと強調した。
 9月14日の訓練では、現地の部族間対立に巻き込まれて施設に避難している国連職員等3名を、武器を使用しない手段で救出する場面が公開された。
 通報を受けた日本の緊急対応待機部隊18名が軽装甲機動車2台と高機動車2台に乗り込んで現場に急行。興奮し、暴徒と化した一方の現地住民は銃器を持っていないが、施設前でこん棒や投石で日本隊を挑発。もう一方の現地住民は負傷して倒れ込んでいる。
 駆けつけた日本の説得に応じない暴徒化した住民に対して、フラッシュバン(爆音と閃光)とLRAD(大きな警告音)で対応、ひるんだ隙に統制のとれた動きで一気に施設周辺から遠ざけた。その際、防護楯で退けるのみで武器の使用はなかった。
 その後周囲を警戒しつつ、職員3名を速やかに高機動車に収容、負傷した現地住民には応急救護処置を行った。
 中央即応連隊は、PKO等国際平和協力活動等においてはいの一番に先遣隊として現地に向かい、後続部隊の到着までにゼロから基盤を構築する部隊でもある。海外での任務に対応するため他の連隊とは違う編成や装備品を保有する国際任務のスペシャリスト部隊だ。異国の地で起こり得る様々な状況を付与した訓練を日々こなし、今後益々国際平和活動等の要としての活躍が期待される。

国際平和協力活動30年(4)
ー 自衛隊PKO派遣等を見る ー
 国際平和協力活動の任務では、暴徒などから隊員、邦人の身を守る術も必要となる。9月12日と同14日、陸自の国際活動教育隊(駒門)と中央即応連隊(宇都宮)で「宿営地警備教育」、「駆け付け警護訓練」の様子がそれぞれ報道陣に公開された。

宿営地警備教育
国際活動教育隊
 「正面に立つな!」ーー。静かに力強く、注意を促す隊員の声が飛んだ。派遣国の自衛隊宿営地を模した駒門駐屯地の訓練施設で行われた国際教の上級陸曹特技課程「国際活動」(約3週間)終盤の総合実習。学生9人が暴徒化するデモ隊に対処した。
 イラク復興支援など、長期間におよぶ国際平和協力活動では宿営地の徹底した防備も必要とされた。国際教では同隊での基本教育、各部隊への練成訓練支援を通じて、宿営地警備を含む従事に必要な知識・技能を付与している。
 状況に対し、学生自らが判断し行動する総合実習。ゲートに到着し、入門許可を求める現地民2人が乗る車両。車番やアポイントの有無を確認、突っ込まれる可能性もあるため「(車の)正面に立つな!」の声も。
 続いて10人のデモ隊が近付いてくる。「NO UN(国連帰れ)」のプラカードなどを掲げ、2人は小銃を持つ。緊張感が高まる。「食料をくれ」、「職をくれ」と要求していたデモ隊が次第にエスカレート。投石し、さらに上空へ射撃(模擬)した。
 警衛の長の上級陸曹以下9人は、宿営地内の幹部と連絡を取り合いながら段階的に対処。「攻撃をやめなければ実力行使する」と警告し、高音を出す音響装置を鳴らして威嚇。小銃を構え前進し、負傷したデモ隊の1人を収容した。
 実習終了後、国際活動教育隊の幹部は記者の問いに、「(学生たちは)非常によく対応した」と振り返った。西村修隊長は、「訓練を積み上げて現地に自信を持って入ることが大事。(派遣が命じられた場合)多様な任務に対応できるよう日頃から備えていきたい」と決意を語った。

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