陸上自衛隊衛生学校(学校長・水口靖規陸将補=三宿)は1月16日と18日に、「令和5年度戦傷治療集合訓練」を実施した。各方面隊等を代表して5個衛生隊が参加し、戦傷治療の実効性を向上させた(中方は能登地震災害派遣のため不参加)。
防ぎ得る戦傷死
死因の90%が出血
米軍における分析では(2001年〜2011年)、治療施設搬送前の死亡が約87%、うち「防ぎ得る戦傷死」は約24%、うち91%は出血が原因とされている。陸自の救命ドクトリンでは一人でも多くの戦死者を減らすために「受傷後10分以内の救護、1時間以内のDCS(止血と汚染回避に主眼をおいた術式)、あらゆる手段を用いた迅速・確実な後送」を目指すと規定されている。本訓練ではそれに沿って作成された「戦傷治療ガイドライン」に基づき、練度評価形式と学科試験が行われた。
過酷な環境下で処置
三宿駐屯地体育館内に設営された収容所。第一線よりもやや後方に設置される連隊収容所を想定したものだ。ここで初めて医官による治療が行われる。緊張性気胸による呼吸窮迫、四肢断裂等の症状を抱えた3名の患者が運ばれてくる。有事の際は、物資・人員・時間、衛生面等が制限され、かつ複合的に事案が発生する。そのような過酷な環境の中でいかに冷静な処置を行い、次の収容所や病院等に後送できるか。
その場で講評伝える
参加部隊の構成は収容所班長以下7名。医官はあえて指示を出さずに隊員達が自ら考え行動するように仕向けた。審査員たちの厳しい目が光る。慌ただしく時間は過ぎ、あっという間に約1時間の訓練が終了を迎えた。その後、間を置かずに審査員から講評が伝えられた。まだ記憶が新鮮なうちに「あの時の動きの根拠は?」等、隊員たちに細かい確認や指摘が続く。その後ろでは次の訓練のための準備が行われていた。
訓練の様子は全国の部隊にライブ配信され、現場でも誰もが見学できるようにした。その中に将来の自衛隊衛生を担う若い学生たちもいた。彼ら彼女らの訓練を見入る真剣な眼差しに、大きな期待を感じざるを得なかった。 |