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自衛隊ニュース   1117号 (2024年2月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
助っ人、登場

 その方から電話がかかって来ました。
 「東ティモールにも軍隊はあるんでしょ?でしたら、日本に来る予定の技能実習生の皆さんには、予め軍隊に体験入隊してもらい、社会人としてのマナーや規律等を身に付けてから来ていただくことはできませんかね?」
 その方は自衛隊関係者ではありません。しかし、自衛隊に対して彼が抱いているイメージを前提にしての発言でした。僕は、自衛隊の教育に対する信頼と期待の大きさに触れた思いがして、自衛隊OBの一人として嬉しく思いました。
 現在見直しが行われている技能実習生制度ですが、2023年9月に、日本で初めて東ティモールからの技能実習生(農業)7名(男性3名・女性4名)を受け入れてくださったのは高知県です。そして、2024年1月には、更に7名(男性6名・女性1名)の技能実習生(農業)が高知県に来ました。
 東ティモールは、右肩上がりで人口が増えており、平均年齢は18歳。少子化・人口減少・高齢化が加速的に進む日本とは、正に真逆の若い国です。しかし、残念なことには未だ国内に産業が育っていません。若い人たちの雇用問題は、同国の最重要課題の一つとなっています。
 こうしたことから、東ティモール政府は、オーストラリア、イギリス、ポルトガル、韓国等へ出稼ぎに向かう若い皆さんを積極的に送りだして来ています。
 日本に対しても、技能実習生の受け入れを要請して来ていました。そうした中で、先陣を切ってくださったのが高知県。今後、他県においても、少しづつ受け入れ先が増えて行くことが期待されます。
 そのためにも、ロールモデルとなる高知県での技能実習が成功することを願って止みません。
 技能実習生制度は問題も多く指摘されています。2022年の技能実習生の失踪者は9千人を超えていると言われています。
 東ティモールの技能実習生が、日本に向かうに際して決意を語ったり、家族の期待を一身に背負って来日することなどが伝わって来るビデオも報じられています。これまで来日した実習生は14人。いずれもかけがえのない彼らの家族の皆さんが、東ティモールで実習生のことを心配し、祈っていることを忘れることは出来ません。
 技能実習生にとっても受け入れ側にとっても、満足できる技能実習となること、日本に来てよかったと思うような日常生活になって欲しいと思います。
 冒頭の、その方の発言を受けて、僕は東ティモール国軍にお願いすることはしませんでした。
 さて、どうするか。
 思案していた時、頼りになる助っ人、登場です。年齢を感じさせない精悍でボランティアスピリット旺盛な行動派。強くて優しい陸上自衛隊OB。(公社)隊友会メンバーです。
 彼は、日本で技能実習を受け生活をする上でのマナーや規律等は、各受け入れ先に配属される前の、来日直後の研修期間に指導し身に付けて頂くのが研修生にとっても受け入れ側にとっても大切との観点に立って、研修を担当することを快諾してくださいました。奥さまも背中を押してくださり、自分のこれまでの自衛隊での経験が少しでも役に立てれば喜びと語り、早速高知に飛んでくださいました。
 座学用にと彼が一生懸命準備された資料を僕も拝見しました。研修担当としての彼の取り組み姿勢にジーンと来るものがありました。
 更に彼は、研修期間中、朝の掃除や部屋の整頓状況の確認、昼ご飯を一緒に食べ、夕食後には、何か困ったことや相談ごとは無いかと緊張が続く彼らに寄り添い、正に寝食を共にしている気持ちで取り組んでいます。出来る事は何でもやろうとの思いです。
 この種の研修は、直ちに成果を挙げることは容易なことではありません。加えて、相手は日本語もよく分からない外国人の面々。東ティモール人に加えてカンボジア人やベトナム人の研修生も一緒に研修を受けている由。
 しかし、彼の無尽の熱量は、言葉の壁を越えて、彼ら一人ひとりの心に届くことを確信します。
 20代の技能実習生の皆さん達に真正面から向かって、熱く語り、共に行動する助っ人。
 現役自衛隊員の皆さんの先輩がここにいます!

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


大学生へ新たなアプローチ始動
石原2佐、安全保障を講義
海幕募集推進室

国士館大学で
 海幕募集推進室は12月22日、東京地方協力本部及び海上自衛隊幹部学校と連携し、海自幹部学校教官(石原敬浩2海佐)による国士舘大学での安全保障に係る講義を企画・支援した。
 本講義は、我が国の安全保障及び海上自衛隊についてより多くの大学生に理解してもらうための新たなアプローチとして企画され、国士舘大学(板山真弓准教授=国際関係論専門)の快諾を得て実現された。100名を超える大学生が講義に参加した。
 石原2海佐は、海洋安全保障にとどまらず幅広く安全保障の学問分野に関し優れた知見を有しており、2016年からは慶応大学の非常勤講師も兼業しているほか、これまでにさまざまな大学の教壇に立っている実績がある。
 当日は「日米同盟とFDO、朝鮮半島危機」と題して、戦後の日米安全保障体制を中心に戦略的コミュニケーションやFDO(柔軟に選択される抑止措置)、多国間安全保障枠組み等、多岐に渡るトピックについて学生に分かりやすい平易な説明で講義を行った。
 国士舘大学は心身の鍛錬と人格の陶冶をもって社会に貢献する「国士」の養成を建学の精神に掲げる大学で、警察や消防といった公安系の公務員への志願者も多い。講義中は学生の多くが我が国の安全保障体制の話に真剣に耳を傾けていた。
 講義後の質疑応答では国連の機能性や拒否権の考え方、各地域における国際的な枠組みに関する内容の質問が出され、石原2海佐は丁寧かつ真しに回答していた。
 講義に参加した学生からは、「さまざまな視点から安全保障を学ぶことができました」、「抑止に関して『能力』『意図』『伝達』といったキーワードが印象に残った」といった声が聞かれ、安全保障への興味が促進された様子が伺えた。海幕募集推進室は「少子化が進み高校生の進学率が向上している現状を踏まえると、大学生へのアプローチはますます重要となってくる。海上自衛隊が保有する学術的な知見を活用し制服を着た自衛官が大学生の前に出て講義をする機会をさらに増やし、大学への関与を強化していきたい。本活動は国家安全保障戦略に示された『社会的基盤の強化』や『知的基盤の強化』にも資するものと考える。本取り組みを通じて安全保障分野における学術界との連携の強化にも寄与していきたい」としている。

佐藤3佐に英第1海軍卿賞
海幹校で優秀論文
 駐日英国大使館において12月5日、海上自衛隊幹部学校指揮幕僚課程で優れた論文を執筆した佐藤愛弓3等海佐(さとうあゆみ)=第70期指揮幕僚課程学生、現海上幕僚監部勤務=に対し、英国第1海軍卿賞が授与された。
 本賞は平成25年、第1海軍卿兼海軍参謀長ジョージ・ザンベラス海軍大将が来日した際、「海上自衛隊と英海軍の友好の証として、海上自衛隊幹部学校において執筆された優秀な論文に対して賞を授与したい」との提案があり、設立された。ジュリア・ロングボトム駐日英国大使からの表彰伝達に続き、関係者は親しく懇談した。
 普遍的価値を共有する日英両国は防衛協力を深化させており、本年は日英部隊間協力円滑化協定(日英RAA)が発効され、艦船の相互寄港や共同演習がより活発化することが見込まれている。協力関係の一環として、学術レベルの連携も着実に積み重ねている。
 江川校長は「本校は幹部自衛官の高等教育のみならず、諸外国海軍との人的・学術的交流も主たる任務・取組としています。特に英国は重要な同志国。『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け今後もさまざまな交流を通じて両国の連携を深化・活発化させます」と語った。

水交会HPにリンク掲載

 公益財団法人水交会は海上自衛隊の募集強化の必要性に鑑み、海幕募集推進室と調整して本年1月から水交会ホームページ内に海上自衛隊ホームページの「採用情報」のリンクを掲載している。
 水交会は「海洋安全保障に関する調査研究や政策提言に取り組むとともに、海上自衛隊が行う諸活動への協力や先人の慰霊顕彰、地域社会活動への参加、諸団体との交流等を行いもって国政の健全な運営の確保に寄与することを目的とした公益財団法人」。名称の由来は中国古典「荘子」の「君子の交わりは淡きこと水のごとし」から。

「孝」の実践も

 水交会ホームページへの海上自衛隊採用情報のリンク掲載は水交会からの提案に対し、海幕募集推進室が協力・助言し、実現した。
 リンク先である海上自衛隊の「採用情報」のページには海自全般の採用情報が掲載されており、海自の自衛官候補生や一般曹候補生などの採用の各種コースや職種、待遇等が紹介されている。より詳しい採用情報が掲載されている「自衛官募集ホームページ」へもリンクされている。
 協力・助言を行った海幕募集推進室は、「海軍とも縁が深く歴代首相の指南役と言われた東洋哲学者安岡正篤氏は『孝』の字について、単に親を大事にして親に尽くすという意味だけではなく、親子・老少、先輩後輩の連続・統一を表す文字でありここに人間の進歩がある、と説明している。水交会をはじめ自衛隊協力団体との連携はこの老少、先輩後輩の連続・統一という『孝』の実践でもあり、このような意義を踏まえつつ募集においてさらに連携を強化していきたい」としている。


女性自衛官配置50周年を祝う会
帯広駐で
 帯広駐屯地(司令・井川賢一1佐)はこのほど、帯広市内において、帯広駐屯地における女性自衛官配置50周年を祝するとともに、女性活躍推進に資することを目的として「帯広駐屯地女性自衛官配50周年を祝う会」を帯広市自衛隊家族会女性部との協賛で実施した=写真。
 帯広駐屯地チーフWACの近藤曹長が司会を務め、発起人代表の元自衛隊帯広地方連絡部の太田様のあいさつに続き、帯広駐屯地に初めて配置された女性自衛官である元第5師団司令部付隊の宮森様の乾杯の発声により開始された。
 祝う会は元第5音楽隊の隊員によるマリンバとカホンの演奏や、駐屯地OGの元女性自衛官や現役の女性自衛官へのインタビュータイム等、終始和やかな雰囲気で進められ、帯広駐屯地幹部チーフWACの平川3佐の乾杯の発声により幕を閉じた。
 参加者からは「女性自衛官の職域が広がっていて驚いた」、「昔より女性自衛官の勤務環境が改善されていると感じた」等の感想がよせられた。
 駐屯地は引き続き、女性自衛官が活き活きと活躍できる勤務・生活環境の更なる向上を図り、女性自衛官が安んじて任務に邁進できる環境醸成に取り組む。

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