有事の際は後方支援の任務等に就く予備自衛官。令和元年から採用が開始された1佐予備自衛官に、8月1日付けで陸自部隊訓練評価隊(富士トレーニングセンター=FTC、北富士)隊長を最後に定年退官した近藤力也元1陸佐が任用された(東京地本所属)。志願した動機などを聞いた。
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ーー志願した動機は。
予備戦力がいかに重要であるかは東日本大震災以来の大災害が証明しているが、防衛事態となれば重要どころではなく、必要不可欠の戦力となる。昨年の「陸演」で改めて認識されたが、さらにクローズアップされたのは問題点。言わずもがな、数が足りない。
だから各部隊の指揮官は、と言うより陸上自衛隊を挙げて、退職する隊員に「予備自衛官になれ」と指導する。自分もそうだった。「隊友会に入れ。予備自衛官になれ」と繰り返し指導して(頼み込んで?)、有事戦力の確保に努めたが、任期制隊員も定年退職隊員も予備自志願率は高いとは言えない。そこに自分の番が回ってきた。これまで偉そうに指導してきた手前、「自分が予備自をやらない訳にはいかない」と思った。
ーー採用に至るまでに感じた課題は。
予備自衛官を志したものの特別昇任の制度との整合を図る必要があった。現職時の功績を認められ、退職時に1階級昇任させてもらえる。昇任したその瞬間に退職だが、軍人・自衛官は昔から名誉を重んずる。最後の瞬間であれ、昇任させてもらえることは名誉。
自分の場合も、退職時は陸将補に昇任する可能性があった。「なので、そうなれば予備自衛官にはなれないそうです」と担当から告げられた。予備1等陸佐はあるが、予備陸将補はないからだ。
特別昇任の資格があるからとすべての1佐が昇任した場合、経験豊富な予備1佐が少なくなってしまうため制度面の改善が必要と感じる。
自分は上級部隊である富士学校長と予備自衛官になるために1佐のままで退官したいという希望を相談し、最終的に自分の意向を踏まえ上申しないということで処置してもらった。他に、そのような先輩もいると聞いている。
ーー抱負や現役隊員への提言などを。
部隊訓練評価隊長を3年間も勤めさせてもらい、諸職種協同部隊の良いところ悪いところを毎週のように目の当たりにし、評価・分析・指導してきた経験から、「今こそ!連隊長ができる(現役時代より少しはマシな戦闘指揮ができる)」と確信するに至り、この知識・経験を「組織に還元しないのは罪だ」とすら感じた。もっと言うと、自らの天職と感じていた自衛官を「辞めたくなかった」のが本音かもしれない。
予備自衛官で編成される普通科連隊の長には、退職時に特別昇任して1佐になった人も就いている。もちろん階級に関係なく素晴らしい人物も多いが、それよりも現行の1佐を経験した者が長に就く方が、なお良いのではないかと思う。
自らの天職
現役勢力の確保と併せて、予備戦力の確保は喫緊の課題。さまざまなレベルの処遇改善や制度の柔軟な運用で解決できる課題もある。そしてこれから退職を迎える現役1佐には、ぜひとも仲間に加わってほしい。「現場」からも、改めて提言させてもらいたいと思う。 |