数十年に一度とも言われる難局を突破するため、岸田首相は8月10日、第2次岸田改造内閣を発足させました。
防衛大臣には、2008年〜2009年の麻生内閣でも防衛大臣を務められたステーツマン浜田靖一衆議院議員が就任。前防衛大臣の際には、内局・各幕をはじめ自衛隊員の皆さんとの強い信頼関係・絆を構築される中で、北朝鮮の弾道ミサイル発射に際して初の弾道ミサイル等破壊措置命令の発出やソマリア沖・アデン湾における海賊対処のため護衛艦やP-3Cの派遣開始等を実施されました。併せて、国連スーダン派遣団(UNMIS)への自衛官の派遣や日豪2+2、クリントン米国務長官との会談、グスマン東ティモール首相との会談、日中防衛首脳会談、日韓防衛相会談、日米防衛相会談、そして初の日米韓防衛相会談等に精力的に取り組んで来られました。
(浜田防衛大臣は、2002年5月に誕生したアジアで一番新しい東ティモールにとって、国づくりは即ち人づくりであるとして、グスマン首相との会談で、防衛大学校における東ティモール留学生の受け入れを決断されました。これを受けて、今日までに女性軍人1名を含む15名の若手軍人が防衛大学校を卒業し、国軍で活躍しています。また、浜田防衛大臣に対し、グスマン首相は、自衛隊こそが民主主義国家東ティモール国軍が目指す姿だと述べています)
岸田首相は同日の記者会見で、重点的に取り組んで行く課題の "第1" として、次のとおり表明しています。(2022・8・10首相官邸HP 筆者抜粋)
「第1に、この国の安全と安心を守るための体制を強化いたします。年末に向けた最重要課題の一つが防衛力の抜本的強化です。必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進めていきます。そのため、防衛政務次官、防衛庁副長官、そして防衛大臣を歴任し、更に自民党国防部会長や衆議院安全保障委員長も経験し、正に我が国の安全保障、防衛政策を熟知する浜田靖一(やすかず)氏に防衛大臣への再登板をお願いし、強いリーダーシップを発揮していただきます」
そして同日招集された初閣議で決定された「内閣総理大臣談話」及び「基本方針」には、それぞれ次のような内容が盛り込まれています。(同首相官邸HP 筆者抜粋)
〇内閣総理大臣談話
「日米同盟を基軸とし、「自由で開かれたインド太平洋」の強力な推進など、同盟国・同士国との関係強化や、一段と厳しさを増す我が国の安全保障環境に対応するため、新たな国家安全保障戦略等の策定と防衛力の抜本的強化など、我が国を守り抜く外交・安全保障を進めます」
〇基本方針
「「力」により現実が決まるという状況を断固として拒否し、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜き、ロシアによるウクライナ侵略により終わりを告げたポスト冷戦期の次の時代の国際秩序を作り上げるために貢献していく。
そのために、日米同盟を基軸とし、「自由で開かれたインド太平洋」を強力に推進するなど、同盟国・同志国との関係強化や、大国間の競争から距離を置こうとする国々との関係強化などに取り組む。
・・・一段と厳しさを増す我が国の安全保障環境に対応するため、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、防衛力を抜本的に強化する」
これらの方針の下、10日夜、浜田防衛大臣は就任記者会見に臨み、「防衛大臣として、約25万人の自衛隊員とともに、国民皆様方の負託に応えるため、わが国と世界の平和と安定のために全力を尽くしてまいります」とその決意を表明されました。更に記者団の質問に対し、「現下の安全保障環境に対応できるように、必要な事業をしっかりと積み上げ、防衛力を5年以内に抜本的に強化して行く」「新たな国家安全保障戦略を策定する中で、あらゆる選択肢を排除せず、具体的な、かつ、現実的に議論をして防衛力の抜本的強化に必要となるものの裏付けとなる予算をしっかり確保して行きたい」「財源のあり方について、政府として検討」「台湾をめぐる情勢は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとって重要。引き続き、動向を注視」「南西諸島における防衛体制を目に見える形で強化してまいりたい」「日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせた時、辺野古移設が唯一の解決策」「特に沖縄を始めとする地域の皆様方の声をできるだけしっかりと把握することによって、その深堀をしながら、これからも対話を続け、それを真摯に捉えて、対応していく。その姿勢が極めて重要」等の応答をされています。
そして8月12日の全隊員に対して行った浜田防衛大臣着任訓示。
浜田防衛大臣は、今回の防衛大臣就任に当たり、これから隊員と共に取り組むべき優先的な課題として、(1)わが国自身の防衛体制の強化(2)日米同盟の強化(3)各国との安全保障協力の強化、の3点につき所見を表明。最後に次のように述べて訓示を締めくくりました。
「私は、岸前大臣からいただいたバトンをしっかり引き継いで、どんな困難に際しても、臆することなく大臣として防衛省・自衛隊を牽引し、粉骨砕身職務を全うして行く所存です。安全保障の最後の砦としての重責を胸に、諸君も、私とともに、一丸となって任務に励んでいただきたいと思います。隊員諸君の精励恪勤(せいれいかっきん)に期待し、私の訓示といたします」
ロシアのウクライナ侵略、中国、台湾、北朝鮮等、安全保障環境は益々厳しさを増し、各領域における軍事技術は飛躍的に進歩を続けています。また全国的に大規模な自然災害も生起しています。更に、膨らむ財政赤字、加速する少子化に伴う人口減少といった大変難しい問題も山積です。
こうした中にあって、浜田防衛大臣を先頭に防衛省・自衛隊の皆さんが、常に国民と共に在る国民の自衛隊・行動する自衛隊として、士気高くこの難局に取り組まれ、以て国民の負託に応えて行くことを祈念し力いっぱいのエールを送ります。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |