日本の経済力は平成時代に凋落した。日本のGDPは1995年(平成5年)5兆4500億ドルに達したのち、全く成長していない。2018年(平成30年)4兆9710億ドルである。この間、米、英、独、仏、中国といった主要国は順調に成長している。米7兆6400億ドル(1995年)↓20兆5800億ドル(2018年)、英1兆3360億ドル↓2兆8280億ドル、独2兆5880億ドル↓3兆9510億ドル、仏1兆6020億ドル↓2兆78000億ドル、中国7370億ドル↓13兆3680億ドルとなっている。1995年アメリカの70%に達していた日本のGDPは、2018年アメリカの24%にまで低下した。1995年日本の13%に過ぎなかった中国のGDPは、2018年日本の2・7倍となり、今や世界第2位の経済大国である。
1995年世界第3位だった日本の一人当たりのGDPは、2018年第26位まで凋落した。そして28位には韓国が迫っている。1995年、日本の一人当たりGDPは、米、英、独、仏を超え、米の1・5倍、英の1・9倍、独の1・4倍、仏の1・5倍に達したが、その後再び米、英、独、仏よりも小さくなり、2018年には、米の0・62倍、英の0・92倍、独の0・82倍、仏の0・91倍となっている。より実質的な豊かさの比較ができる購買力平価ベースで一人当たりGDPランキングを見ると、日本は1995年の18位から、2018年31位にまで転落している。平成時代、日本の豊かさは、世界の中で実質ベースでも凋落したのである。平成時代は日本経済の「失われた30年」であった。日本は今決して豊かな国ではない。
平成時代、日本経済はどうして凋落したのだろうか。エコノミストが言うように、1990年以降世界経済が大きく変化する中で、日本の産業が競争力を失ったことが決定的に大きい。日本の産業は、特にIT(情報技術)のイノベーションによって生み出される先端サービス産業の世界的競争に敗れた。
1990年代、中国などの工業化が進展し、工業製品の低価格化が進んだ。日本の製造業は新興国との競争によって疲弊。新しい産業を生み、産業構造を変える必要があったがこれができなかった。米国のアップルなどは、水平分業型のビジネスモデルに転換し、製造工程以外に集中することによって競争力をもった。
米国企業の時価総額トップランキングにはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったIT関連企業が並ぶ。これらの企業は20年前には存在しなかった(存在しても小企業だった)が、ITによる新しいビジネスを創造し、急成長した。アメリカの経済がこうした新産業によって支えられた。中国にもテンセント、アリババ、バイドゥーといったIT企業が成長している。新しい産業が次々に誕生し、これが急速に市民生活に浸透して中国社会を変えつつある。
平成時代、日本の電子産業の国際競争力は大きく低下した。今やスーパーコンピュータ、半導体、液晶、太陽光電池など、かつて世界有数のシェアを誇った日本製品は見る影もない。
経済力も人である。ビジネスをイノベーションする力が経済力を支配する。ビジネスのイノベーションは技術革新だけでなく、制度を含むシステムの総合的なイノベーションである。それを達成する力は、芸術を含む文化の総合的な知力、感性と創造力である。日本人もその力を十分もっていると私は思うのだが。
(令和2年2月15日)
神田 淳(かんだすなお)
高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』など。 |