停滞する梅雨前線は、九州各県や長野県、岐阜県を中心に甚大な被害をもたらした。7月3日から断続的に降り続ける記録的な大雨により、球磨川(熊本)や筑後川(大分)など1級河川が次々と氾濫。7月10日7時現在で死者65名、心肺停止1名、行方不明者16名の人的被害をもたらしているほか、約6000の棟の住宅被害やライフラインの被害も多数確認されている。政府は九州および長野県と岐阜県を「激甚災害」と「特定非常災害」に指定する方向で検討中だ(10日現在)。
自衛隊は、7月4日午前5時36分に熊本県知事から第8師団長(北熊本)に対する災害派遣要請を受けると、直ちに同日1万人(のちに2万人)態勢をとって現地で人命救助活動を開始した。ヘリで降着できない球磨村の孤立した地区には、徒歩で荷物を担ぎ支援物資を届けた。現場に向かった隊員自身やその家族・知人の中にも被災者がいるだろう。また対策は万全だろうが、新型コロナウイルス感染の不安もあるだろう。そのような中でも、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」自衛隊員。彼ら彼女らは、一人でも多くの人命を救い、被災者を支援するため、引き続き懸命な活動にあたっている。
【発災から7月8日までの活動状況】
7月4日4時50分、熊本県及び鹿児島県において大雨特別警報が発令。球磨川において越水が発生。4日5時36分、熊本県知事から第8師団長(北熊本)に対し災害派遣要請。同日、1万人態勢をとり、現地において人命救助活動等を実施。5日18時30分、最大約200名の即応予備自衛官招集の大臣命令を発出。7日4時30分、福岡県知事から第4師団長(福岡)に対し災害派遣要請。7日10時30分、大分県知事から第4師団長(福岡)に対し災害派遣要請。8日、岐阜県及び長野県における豪雨に伴い、被害情報収集を実施。8日、現地において約4,100名・航空機29機(回転翼26機・固定翼3機)が人命救助等の活動を実施。
活動実績(7月8日24時まで) 統幕公表資料より
(1)人命救助活動等【救助者数(地上・航空合計):累計1,640名】
(1)地上部隊による救助等 第24普通科連隊(えびの)、第12普通科連隊(国分)、第42即応機動連隊(北熊本)、第43普通科連隊(都城)、第8施設大隊(川内)、第8後方支援連隊(北熊本)、西部方面混成団(久留米)、第5施設団(小郡)、西部方面特科連隊(北熊本)、第4高射特科大隊(久留米)、空自第9警戒隊(下甑)【救助者数(地上):累計919名】
(2)航空機による救助 陸自第8飛行隊(高遊原)、陸自西部方面航空隊(目達原)、陸自第4飛行隊(目達原)、海自第22航空群(鹿屋・大村)、空自芦屋救難隊(芦屋)、空自新田原救難隊(新田原)【救助者数(航空):累計721名】
(2)道路啓開【累計:約9.0km】
第8施設大隊(川内)等が道路啓開を実施。
(3)物資等輸送【累計:約165t】
西部方面ヘリ隊(目達原)、西部方面輸送隊(目達原)、第24普通科連隊(えびの)、第42即応機動連隊(北熊本)、第8後方支援連隊(北熊本)、西部方面特科連隊(北熊本)、西部方面後方支援隊(目達原)、海自第22航空群(大村)
(4)給水支援 【累計:約25t】
第5地対艦ミサイル連隊(健軍)、第8後方支援連隊(北熊本)、第42即応機動連隊(北熊本)、西部方面特科隊(湯布院)、空自第9警戒隊(下甑島)
(5)配食支援【累計:約4,810食】
第5地対艦ミサイル連隊(健軍)、西部方面特科隊(湯布院)
(6)入浴支援【累計:約480名】
西部方面後方支援隊(目達原)、第8後方支援連隊(北熊本)
(7)被害情報収集等 地上部隊及び航空機(ヘリ映像伝送機等)により被害情報を収集
陸自西部方面航空隊(目達原)、陸自第8飛行隊(高遊原)、空自芦屋救難隊(芦屋)、空自新田原救難隊(新田原)
(8)現地指揮所要員、同行支援等 第8師団等の各部隊により、現地指揮所活動、整備・衛生支援等を実施
(9)連絡員
○九州各県庁等を含む63自治体に対し約170名の連絡員を派出(7月7日最多時)
○防衛省から大臣官房審議官以下4名の調整チームを熊本県庁に派遣 |