まもなく7月24日。本来であれば東京2020オリンピック開会式の日。
「それどころじゃないよ!」
こう呟く、本紙読者も多いことと思います。
今なお執拗に続く新型コロナウイルスの脅威。しかもここに来て感染者数が増えて来ています。各国が競って取り組んでいる安全なワクチン開発は、まだ目途が立ちません。疲労困憊の医療従事者の皆さん。当たり前だった生活様式や常識を一変させた感染防止対策。強いられ続けた忍耐に次ぐ忍耐。出口の光を求めて真っ暗なトンネルの中でもがく事業者。無念の廃業に追い込まれる方々も…。
私たちは、こうしたコロナ禍の対策に追われ、戦後最悪の不況下に引きずり込まれています。しかもそこには、決して忘れてはならない、先送りを許さない大事な問題があります。
「コロナ対応のために編成された補正後の予算は、160兆円を超え、国債発行は90兆円、基礎的財政収支の赤字も今年度当初の9・2兆円から66・1兆円に悪化した。コロナショックに直面し、財政出動は不可避となったとはいえ、バケツの底が抜けたような赤字の拡大である。コロナ危機においても、長期的な観点から財政再建の道筋を考えておかねばならない」(7月8日付け日本経済新聞夕刊「大機小機」欄)
さらに1年延期されたオリンピックについては、北川和江日本経済新聞編集委員の署名入り記事に共感を覚えます。
「東京五輪は開催されたとしても、従来のイメージと大きく変わるのが確実な状況になっている。…東京五輪を開催し成功させてほしい。それでも、本来目指していた姿と大きく変わりつつあるのに、十分な説明や議論もなく「開催ありき」で事態が進むのには疑問を感じる。…開催に向けて公金を追加して準備をしたあげく、中止に追い込まれる事態も考えられる」(7月9日付け「スポーツの力」欄)
7月、夏本番を迎えています。誰もが特に気を付けなければならないのは熱中症。この夏は猛暑も予想され、マスク着用による熱中症患者の大量発生が懸念されています。
コロナと熱中症のダブルパンチの中にあって、私たちは疲労感を禁じ得ません。
…パンチはこれだけには留まりません。
これでもか、というように惨い追い打ちをかけて来た3つ目のパンチ。「令和2年7月豪雨」です。
停滞した梅雨前線の影響による記録的な激しい大雨は、極めて広範囲にわたり非情な大被害をもたらしました。大きな音を立てて、水かさと破壊力を一気に増した真っ茶色の逆巻く濁流の氾濫。突然飛ぶように襲ってきた土砂崩れ。多くの方々が犠牲になりました。警察・消防・海上保安庁・自衛隊はじめ自治体や消防団などの地域の皆さんの必死の救助活動によって救われた人々も沢山います。
そして破壊尽くされた泥だらけの家屋や家財用品・自動車等の残骸や流木等の山の中で、いつ終わるとも皆目見当のつかない後片付け作業に取り組むマスク姿の被災者の皆さん。コロナ禍の影響で、県外からボランティアが駆け付けるのも難しい状況が続いています。しかも警戒すべきは、これからが台風シーズンということです。またまた「観測史上第1位」を更新する猛烈な雨量等、強烈パンチに襲われないとも限りません。
「令和2年7月豪雨」の速やかな検証と情報の共有を図り、幅広い視点から被害を減らす取り組みを加速して行かなければなりません。
日本では、今や何処に行っても、ほぼ全員がマスクをしています。加えてソーシャル・ディスタンス。相手の表情はほとんど分かりません。
そんなとき、近くの世田谷区立希望丘小学校の正門の掲示板。マスクをした筆者の目に飛び込んできたのは「学校通信」(第556号7月号)の一言でした。
「マスクをしているために大きな声で挨拶をすることが出来なかったり、表情が硬くなりがちだったりするので、大きな声を出さなくてもよいから目元を意識して「にこっと笑顔で軽く会釈」の挨拶が出来るよう指導しています」
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |