2月13日と14日、陸上自衛隊補給統制本部(本部長・山内大輔陸将=十条)は、「令和元年度兵站フェア 各種事態におけるロジスティクスの実効性向上〜国防を担う企業の英知〜(後段)」を十条駐屯地で開催した。
「兵站フェア」は、兵站支援上の問題認識を官民で共有し、民間の技術や知見を活用することで、陸上自衛隊の兵站における実効性を向上させることを目的として、平成30年度から毎年開催されているもの。官側から提示されたニーズをもとに意見交換が行われる「前段」と、それを受けて企業が商品・技術を展示、提案する「後段」から構成される。過去のフェアでは、梱包容器、センサーによる位置探知・識別システム等が実際に導入されている。
【今年度から前・後段ともに十条駐屯地で開催、参加企業は過去最多】
「兵站フェア」は、前身の「関東処フェア」として平成25年に関東補給処(霞ヶ浦駐屯地)でスタートした。当初は「業務の効率化及び安全性向上」を目的する関東補給処事業であったが、年々規模が拡大。それにともない平成30年度からは、テーマを陸自全体の「事態における兵站の諸課題解決の検討」に拡充し、補給統制本部事業に格上げされた。さらに今年度からは霞ヶ浦駐屯地で行われていた「後段」も十条駐屯地で開催されることとなった。「後段」には山崎統幕長をはじめ、竹本陸幕副長、5方面隊総監も来場し、本フェアの重要性を伺い知ることができる。
参加企業は、前後段279社、後段275社で過去最高の参加数を記録した。ちなみに第1回は26社なので、約10倍の規模となっているから驚きだ。十条駐屯地は陸自の補給統制本部のみならず、海上自衛隊補給本部、航空自衛隊補給本部も所在する言わば「陸海空の後方補給の中枢」。海・空補給本部からも情報発信という形で参加できた意義は大きい。
【兵站上の幅広い分野を対象とした唯一のフェア】
防衛関連で兵站分野にフォーカスした展示会は「兵站フェア」以外にはないという。対象とする分野は幅広く、中央(基地兵站)から第一線の野戦兵站までを網羅。島嶼防衛、大規模災害派遣、国際平和協力活動、サイバー・電磁波領域等あらゆる分野における兵站上のニーズに対して、企業側が展示やプレゼンテーションを行った。
【最新技術を展示】
儀仗広場、路上、体育館、5つの大型テント等では各企業のブースが並び、多くの自衛官や関係者で賑わいを見せた。一例として、工具を使わずに多彩な機能が取り付け可能な小型多目的ロボット、レスキュードローン、時速70kmで走行し牽引車で最大250kgの積載が可能な電動バギー、現場で部品を作成できる3Dプリンター、高機能浄水器、コンテナの輸送と荷役の効率化が期待されるアームロール、無人化施行システムなどに注目が集まった。無人化施行システムでは、秋田県のショベルカーを遠隔操作で自在に動かすデモを体験できた。次世代通信インフラの5Gが普及すれば、さらに高度な遠隔システムが可能になるという。
このように通信・ネットワーク技術の高度化を活用した展示も多く、タグを一括で読み取ることで在庫管理等を大幅に効率化できるRFID管理システム、RFIDを搭載した軽量大型コンテナ等は官民ともに採用実績がある。また、ゲーミングエンジンをベースに世界中のあらゆる場所を想定してバーチャルトレーニングができる総合訓練シミュレーションには、「自衛隊内でeスポーツ大会ができる」といった声も聞かれた。また東京五輪などで関心が高いテロ対策として、重機を使わずに一人でも設置ができる組立式防護壁等が展示されていた。
【兵站上の諸課題解決のため、各種提案を今後の兵站業務に反映させることが重要】
関東補給処長時代に、「関東処フェア」を補給統制本部事業にする重要性を感じていたのが山内本部長だ。山内本部長は「令和元年度兵站フェアを終えて、「補給統制本部として十条駐屯地で初めてとなる兵站フェアであったが、過去最多となる企業275社、約2850名の企業関係者の参加を得るとともに、統合幕僚長をはじめ50名を超える将官を含め、約830名の部内者の視察、研修を受け、陸上自衛隊の兵站における各種課題に対し、様々な民間技術を活用した多くの提案を受ける極めて有効なフェアとなった。本フェアを通じ、兵站上の問題に官民共同で臨むことは、極めて意義があると認識しており、陸上自衛隊に兵站上の問題解決に結びつく有用な民間技術を知るよい機会になったものと思う。今後、陸上自衛隊の兵站中枢として、今回提示された各種提案を陸上自衛隊が抱える兵站上の諸課題解決のため兵站業務に反映させることが重要だと認識している」と総括した。
<出展企業一覧は4面・5面> |