連日大きく報じるテレビや新聞。未だ収束の兆し無く、日本を含む世界中に拡散する新型コロナウイルスの脅威。感染者と死者の数は、増加の一途をたどっています。
武漢閉鎖、過酷な現場で頑張り続ける防護服姿の医療従事者の皆さん、チャーター便、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号、入国拒否、検疫、隔離、マスクの品切れ、中国における企業活動の再開延期、中国人団体旅行客のキャンセル・観光業界の打撃、各種イベントの中止・延期、7月24日に開会式を迎える東京2020オリンピック・8月25日から始まるパラリンピックへの影響懸念等々。
政府・自治体・関係機関・企業等挙げての懸命な対応が続いています。頑張っていただきたいと思います。こうした中、防衛省・自衛隊も、チャーター機やダイヤモンドプリンセス号への医務官や看護官の派遣・船内に留め置かれている皆さんの生活支援・輸送等に全力で取り組んでいます。
僕たちは、隊員の皆さんや家族の皆さん、本紙読者の皆さんを含め、普段マスクをかけるといったことはあまりありません。でも今回は特別。医療専門家が推奨しているように、マスクの着用に心がけていただきたいと思います。そしてこまめな手洗いを。まさに目に見えない脅威から自分自身を守る、一人ひとりが出来る「SELF DEFENSE」です。
更に、より一層効果的なのはこれらを個人や家庭レベルの対応に任せておくのではなく、部隊や基地、学校、職場など組織を挙げての理解浸透と積極的な取り組み・その徹底にあることは論を待ちません。
こうした中、政府は、これまで4回にわたる武漢への全日空チャーター便派遣によって、帰国を希望する日本人と中国人配偶者等を無事帰国させることが出来ました。更に第5便の運航も発表しています。チャーター便のニュースを見ていますと、自然に「よかったなぁ」と安堵して参ります。
一方で、何とも言い難い不安感に襲われました…それは、自国の航空会社や航空機を持たない東ティモールのような小さい国から武漢に来て学んでいる留学生たちのことです。武漢には、例えば東ティモール留学生だけで17名います。その数の多さに驚くと共に、彼らはどうなるのだろうかと…。
でもそれは杞憂でした。東ティモールや太平洋の小さな島国の国民のためにチャーター便の座席を提供した国がありました。ニュージーランドです。2月5日、同国チャーター便に搭乗出来た彼らは、現在ニュージーランドで隔離期間が過ぎるのを待っています。
東ティモール政府が発出した感謝声明。「武漢での危機的状況の中から東ティモールの学生たちを救出してくれたニュージーランドの政府と国民の皆さまに心から感謝申し上げます」
昨年、ラグビーワールドカップで観たオールブラックスの逞しいハカ(Haka)が浮かんで来ました。
そして同じ2月5日には、昨年9月以来空席になっていた駐東ティモール日本大使の発令がありました。新大使は、杵淵正巳(きねふちまさみ)氏。1983年に外務省入省の外交官。防衛大学校の卒業生です。日本東ティモール議員連盟会長を務めている中谷元・衆議院議員(元防衛大臣、防衛大卒)の1期後輩とのこと。ちなみに2015年以来、防衛大学校を卒業した東ティモール留学生は10名。来月にはさらに1名の卒業が期待されます。史上初の防大先輩大使の東ティモール赴任です。
現時点では、東ティモールから新型コロナウイルス感染者発生を伝える報道はありません。しかし医療水準が低い同国です。杵淵大使には、そんな東ティモールの皆さんの健康や安全、人材育成、国づくり支援等を通じて、一層密接な両国関係の発展に活躍されることを祈念して止みません。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |