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   2005年4月15日号
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<論陣>
台湾の独立許さず
中国で新しい法律成立
 「武力を行使しても台湾は独立させない」。これが中国(中華人民共和国)の主張だった。だが、その"叫び"には法律的な裏付けがなかった。中国はさる3月中旬に開催した最高指導方針決定会議である全国人民代表大会(全人代)で、台湾独立実力阻止を含む法律「反国家分裂法」を成立させた。法律を実現させたのは江沢民前国家主席から党、政治、軍の三権を受け継いだ胡錦涛国家主席と温家宝首相の新体制であった。
 10ヵ条からなる反国家分裂法で注目されるのは武力行使の要件である。法文だと「平和統一の可能性が完全に失われた場合」となっている。「可能件」という抽象的な表現は、あえてグレーゾーンの」言葉を使うことで「中国は、ある意味で自由な解釈ができる」ことを意味している。
 また、同法では中国の敵はあくまで"独立をしようとする者たち"で「平和統一を願う台湾人民を守る」としている点と、この法律には外国からの干渉を入れない「国内法である」ことを主張している。
 なぜ胡主席が、この時期、あえて台湾独立阻止法を持ち出したのか。その一番には「新体制による新施策を打ち出す必要があった」。単に江前主席の政策を引き継ぎ実行しただけなら、幹部や人民から「変わりばえしないじゃあないか」と軽視される可能件がある。そこで、これまで法文化されていなかった台湾問題を明文化することで、軍部にも強いくさびを打ち込むことができた訳である。胡主席は3月13日、軍の最高指揮官である「国家軍事委員会主席」に99.6%の賛成で選出されており、党、国家、軍の実権を握った胡主席にすれば"台湾独立阻止法"の実現は、文字どおりグッドタイミングなのであった。
 胡主席は単にタカ派の人物でないのは周知の事実である。台湾経済の成長ぶりに着目し、台湾ビジネスマンの大陸での利益を守り、中台間の人的交流なども拡大してきた。こんどの「反国家分裂法」をテコにして、これから胡主席が実行しなければならないことは多い。
 「反国家分裂法」は、台湾では住民の多くが反発している。まず、台湾の陳水扁総統は、台湾独立派(民進党)のリーダーである。この法律が成立したとの情報が入った直後の3月14日「中国が一方的に台湾の将来を決める内容は受け入れられない」との声明を発した。そして台湾独立派の立法議員(国会議員)らが立法院前で中国の国旗(五星紅旗)を焼いたほか、台北、高雄、台中などで独立派の集会が連日のように開かれている。
 台湾以外の国ぐには"反国家分裂法"の受けとりかたはさまざまである。台湾に戦闘機や対空ミサイル、対戦車ミサイルなどを売り込んでいる米国は「あえていま、こんな法律を作らなくても−−」との態度は見せているが、あえて反対の声はあげていない。これは法律成立時に中国政府が「これは戦争法ではない。あくまでも統一法だ」と説明したのと「国内法である。これを批判したりするのは内政干渉だ」と先手を打ったのが功を奏したと思われる。
 日本はマスコミが情報を流しているが、政府自体は公式な発言はしていない。基本的には中国のいう「国内法」と見ている。日本としては中国、台湾ともに経済的仲間であり、貿易額は年々増加している。ここで、あえて「台湾独立支持」だの「独立阻止」などということは「国家が言うべきことではない」としている。
 韓国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、シンガポールなどの国ぐにも「中国の国内法」としてほぼ同じ見方をとっており、公式の見解を発表していない。
 台湾問題が全人代の目玉になったが、中国にはこんご解決しなければならない問題は多い。チベット独立は長い間、"戦い"が続いている。都市と山村部との経済格差も、年々、ひどくなっている。役人の汚職も目に見えて増えている。悪質な者には死刑を科しているが"天国"はまかり通っている。そして2008年には北京オリンピック。その成否が中国の信用を左右するだけに、新政権の国家舵取りは大変であろう。

東富士を撮り続けて…
富士本屋写真部
佐藤欣一氏(写真提供)
〈シリーズ 19〉
M-24チャーフィー
M-41ウォーカーブルドッグ軽戦車
現在の富士学校のある場所で。保安隊時のM-24

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