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自衛隊ニュース   1040号 (2020年12月1日発行)
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雪月花
 何百年続いているか正確には解らないが筆者の郷里の秋祭りがここにきて消えようとしている。お正月やお盆も重要行事だがこの秋祭り収穫祭に住民は1番熱を入れる。とはいえ住民の数は昭和30年代の5分の1の約50人に減っている。その頃は生きのいいお兄さんたちが2基の神輿を担いで集落を練り歩いた、子供たちも御幣を持つもの榊を持つものとそれぞれの役目をもって神輿につづいた。予定の順路で全戸22軒を回った後にはおばあちゃんとおばちゃんたちが作った料理で大人も子供も一緒に集会場で直会、さらに祝い餅を投げる。この祝い餅には集落外からも集まり人口はいつもの倍にも3倍にもふくれあがる。全員参加の一大イベントだった。住民減により規模は小さくなったとは言え昨年までは賑やかに祭りの歴史を刻んでいた。しかし残念なことに今年は世界中が何かにつけて自粛をしている新型コロナウイルス禍でこちらでも大幅縮小、長老と神主さんだけの祝詞でおしまいになった。今年はしかたがないにしても今回の縮小が来年以降も続くことを心配する声が上がる。簡易さに慣れれば地縁社会はまたたくまにすたれていくのだ。全国的にも集落のコミュニケーションは学校、お寺、お宮が中心になっているのではないだろうか。これらに活気がなくなることは集落の衰退に直つながる、大都会とはちがい互いに寄り添って暮らしている過疎地では致命的だ。学校の統廃合が進んだ所は住民の気持ちがバラバラになってきているとの話もよく耳にする。地方離れで極端なのは葬儀だ。ごく最近まで自宅に地区の人が大勢集まって執り行っていたものが葬儀屋で執り行うようになり隣組の互助意識も薄れてきた。先日も集落で御不孝があったが「家族葬にするので香典もお断り」ですませたらしい。これが合理主義というなら誠にさびしい。スクラムを組んで地域社会で生きていくためにも来年は往時の秋祭りの様に賑やかに行いたいものだ。本来なら大勢の人で賑わうはずだった11月3日は神社の入口で幟だけが風になびいていた、晴れの特異日といわれる青空の下で。

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