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自衛隊ニュース   1035号 (2020年9月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第61回>

天安門事件と日中関係

 新型コロナウィルスがパンデミックを引き起こし、中国が世界から非難されている。これに関連して、私は31年前の天安門事件を思い出す。
 1989年、民主的な改革を進めようとしていた総書記胡耀邦が死去し、学生・青年らが北京天安門広場での追悼集会に集まった。集会は50万人にも膨らみ、民主化要求のデモとなった。最高指導者トウ小平はこれに危機感を抱き、軍隊を投入してこれを弾圧。人民解放軍戦車が広場に入り、集結する学生・青年に銃口を向け、乱射した。党は学生らの死亡数を319名としたが、世界のメディアは3千人にのぼる学生らが殺されたと見ている。
 欧米諸国は中国を非難し、天安門事件に対して経済制裁で応じた。日本もこれに参加したが、一年で制裁を解いた。日本の海部首相は西側首脳として事件後初めて訪中し、ODAを再開した。そして宮沢内閣は1992年天皇陛下の訪中を実現させた。
 天安門事件後の後遺症を克服するために、1992年、トウ小平は市場経済の大幅な容認政策を打ち出した。これは共産党の独裁のもとで、中国が資本主義国となるのを認めるようなもので、中国は以後大きな経済発展を遂げることになる。
 中国経済は1992-2011年の20年間は年平均10%、その後2019年まで年平均7%の高成長を遂げた。GDP(名目)は2019年には14兆ドルに達し、1992年の28倍となった。日本を抜いて世界第2の経済大国となり、2019年には日本のGDPの2・7倍に達している。
 軍備の増強も著しく、中国の軍事費は2018年には2億5千万ドルまで増大、アメリカ(6億5千万ドル)に次ぐ軍事大国となった。中国の軍事費は1992年から2018年まで26倍となったが、この間日本の軍事費の増加は1・14倍に過ぎない。科学技術力も、軍事、宇宙、通信、情報等の分野において日本を大きくリードしている。
 天安門事件から31年、日中の力関係は全く変わった。日本は今、強大化した覇権国家中国の脅威にさらされた、弱小国である。天安門事件の頃のように、西側諸国に対して中国を弁護するような力は今の日本にはなく、またそんな必要もない。
 中国はかつてのソ連や今の北朝鮮と同様、非常に問題のある国である。民主主義で国を治めることができない。中国共産党による独裁は、統治のために人権を平然と無視する。経済成長で自信をつけた中国は、民主主義を西欧の思想にすぎないと、確信をもって否定するようになった。
 今回のコロナ禍で世界、特に西側民主主義国は中国の異質性をはっきり知ったと思う。真実を隠蔽し、プロパガンダに長け、不都合な事実は平然と否定し、ウソを言う。習近平の中国は自由と民主主義に挑戦して、世界を変えようとしている。
 安倍首相退任を受けた新政権の最大の課題は中国との関係である。天安門事件後のように日本が中国にすり寄れば、西側民主主義国に軽蔑され、日本は孤立し、日米同盟にも亀裂が入るだろう。民主主義国と中国との対立は、普遍的な価値観にかかわる対立である。日本は自由と民主主義の国として誇りをもち、毅然として中国とは一線を画した関係に終始すべきである。
(令和2年9月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii-nihon.themedia.jp/)などがある。


「頑張っています」新しい職場
活躍するOBシリーズ
株式会社ネクスコ・サポート新潟 松山裕之
「ありがとう」の言葉に「やりがい」
松山氏は令和元年に航空自衛隊新潟救難隊整備小隊(新潟基地)を空曹長(特別昇任)で定年退官。54歳

 私が勤務する株式会社ネクスコ・サポート新潟は、主に新潟県内の高速道路において料金所での料金収受、通行料金の精算業務、料金所内モニター監視、出入口車線監視及び開放、閉鎖、ETC機器及び自動精算機の管理等をおこなっております。現在の勤務場所は自宅から20km南へ離れた新津料金所であり、眼前には私の趣味である登山で登ったことのある五頭連峰、飯豊連峰が広がって見えます。
 航空自衛隊では航空機のエンジン整備をおこなっておりましたが、料金所での仕事は「夜勤」や「お客様対応」、「精算」等初めて行う業務の連続です。再就職して半年になりますが、初めは失敗を繰り返す毎日でありました。責任を感じ自信を無くす時もありましたが、先輩方からアドバイスを頂いたり、時には上司の失敗談から励まされたり、少しずつ業務にやりがいが持てるようになりました。しかし、突発的な業務が起きた時の対応、新しいETC機器の操作など、まだまだ覚えることが沢山あり勉強の毎日です。それでも自衛隊勤務時は経験が無かったお客様との直接対応、不慣れながらも「ありがとう」の言葉をもらえた時には、「やりがい」を感じることができます。
 再就職へのアドバイスとしましては、実際に再就職して特にコミュニケーションの大切さを感じました。お客様と信頼関係を築いたり、先輩や上司の信用を得たり、仕事を安心して任せてもらうためには、コミュニケーションによる雰囲気づくりが大切だと思います。
 再就職を意識し始めている皆様の参考にしていただければ幸いです。皆様のご健闘をお祈りいたします。

トウチとさくら
(トウチ君とさくらちゃんは東京都の鳥「ゆりかもめ」がモチーフの東京地本のマスコットです)
公安系合同採用説明会
 東京地方協力本部西東京地域事務所(所長・長谷川2陸尉)と国分寺募集案内所(所長・木村3空佐)は7月19日、西東京市に所在する大型商業施設「アスタ西東京」において、防衛省・自衛隊、警視庁、消防庁、法務省立川拘置所が合同で「公安系合同採用説明会」を実施した。
 4回目の開催となる今回は、イベントスペースであるセンターコート内に各省庁の説明ブースを設置したこともあり、多くの施設利用者が訪れた。広報官による説明に「子供に自衛官を勧めたい」「自衛隊のイメージが大きく変わり、身近に感じた」との感想が聞かれた。また、「様々な公安系の説明が一度に聞けたので良かった」「警視庁希望だが自衛隊にも魅力を感じた」等、防衛省・自衛隊へ関心を持つきっかけになったとの声もあった。
 西東京地域事務所及び国分寺募集案内所は今後も、今回のような対面式の説明会の他、Webを活用した説明会等、様々な手段により志願者の確保に努め募集目標の達成に尽力していくとしている。

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