-隊長に就任されて3月で2年になりますが、ご感想等聞かせて下さい。
正直、あっという間の2年間であったというのが正直な印象です。隊長としての重責を常に毎日意識する日々ではありましたが、同時に今、隊長として2年間やって来れたことに深い達成感を感じています。
404飛行隊は、KC-767の保有機数が4機と少ないのと、C-130Hと違って航法士や航空機関士がいらない、或いは整備方式が違う等の理由から小規模な部隊です。少人数な分、隊員と直に接する機会が多く家族的な雰囲気の飛行隊かなと思っています。それゆえ隊員を掌握しやすいという利点はあるのですが、その反面、隊長としては自身の行動が常に見られているという緊張感があり、日々気を引き締めてこの2年間勤務してきたというのが正直な感想でしょうか…。
-統率方針等をお聞かせ下さい。
「前進」です。ご承知の通り、KC-767空中給油・輸送機は、わが国で初めて404飛行隊に導入されたわけですが、それからまだ10年しか経っていません。実は、私はその10年前、一飛行班員として404飛行隊の立ち上げに悪戦苦闘したパイロットの一人です。当時は空中給油に関するノウハウが殆ど無い中、時に失敗もし、常に最適な運用を模索し、前に進むことで活路を見出してきました。KC-46という新しい空中給油機の導入も決まっている中、また航空自衛隊全体として宇宙・サイバー・電磁波分野等に対応を迫られる中、「前進」、すなわち活路を切り開くという精神は、この変化の激しい時代には不可欠であると考え指導方針としています。隊員皆がこの精神を胸に一致団結・協力してあらゆる変化に対応し前進していって欲しいといつも思いを強くしています。
-飛行隊長としての勤務を振り返り、これは楽しかったといった思い出があれば教えてください。
印象に残っているエピソードを一つ紹介すると、私は上級幹部が履修する指揮幕僚課程を卒業しているのですが、この課程は自衛隊のあらゆる職種の幹部が一堂に東京の目黒基地に集い教育を受けます。その中には多くの戦闘機パイロットの同期がいたのですが、卒業の時に冗談で「See you in the SKY!(次は空で会いましょう!)」。といって別れたのですが、その後、某戦闘機パイロットと本当に空で再会しました! つまり、私が操縦するKC-767から彼が操縦するF-15に給油することがあったんです。この時は何とも言えない満足感と、何故か幸福感を感じたのを覚えています。
-これまで飛行隊長の勤務を振り、やり遂げたこととかあれば教えてください。
この2年間はあっという間でしたが、やり遂げたというか、これだけは貫いたということは、404飛行隊が与えられた任務を淡々と実施する信頼される部隊にしたいと思ってやってきました。これまでが実施できていなかったというわけではなく、いまだ運用要領を試行錯誤している中、総隊の任務に直結している我々がゲームチェンジャーの役割を担って行動するには、皆がその意義を理解しプライドを持って実直に淡々と実施できるようにしたいと目標を掲げていました。部隊にいると行動そのものしか目に映らず、行動の大きなピクチャーを描きにくくなりがちですので、任務内容や状況を説明し我々の役割の重要性を理解させた上で、フライトに臨んでもらいました。自分が飛行班員だった頃はただ飛ぶことに精一杯で任務そのものを理解していなかった記憶もあり、私はそれを伝えて訓練も任務も皆が淡々と実施できるようにと思っていました。朝から晩までの8時間にわたる長時間フライトが多い任務特性上、皆と顔を合わせる機会も難しくなることもあり、クルーが出かける前とフライト後に、直接顔を見て、状況を確認するようにしていました。話しているうちに思いがけない個人的なこぼれ話を聞くこともできて、皆の頼もしさや個人的特徴を感じられる機会となったので、週末、人と話す機会が少ない自分としては、平日は毎日口が痛くなるほどでしたが、充実していました。404飛行隊は、ほぼ毎日、ナイトフライトの計画があり、拘束時間の長い部隊であります。自分に魔法をかけ、みんなに魔法をかけ、忍耐強く精強な部隊を目指した2年間でした。 |