新型コロナウイルスの脅威が止まりません。拡散は世界中に及んでいます。
全国の小中学校・高校等では、春休みまで休校措置が取られています。卒業式も感染防止の観点から家族や来賓の皆さんの参加が取りやめになるなど、かつて経験したことの無い厳しい対応を余儀なくされています。
3月9日には、中国・韓国からの入国を制限する緊急措置も発動されました。訪日客の5割弱を占めて来た両国との人の往来は一段と激減し、観光業のみならず国内企業・地方経済に与える打撃は甚大です。
一日も早い終息を願って止みませんが、まず入念な手洗い、マスク着用そして食事と睡眠をしっかりとって体力をつけること等、引き続き冷静な感染予防に努めて参りましょう。
感染ルートの追求やクラスター連鎖の遮断等が懸命に行われています。
しかし感染した人たちの年齢や濃密な接触関係、職業や勤務場所、ライブハウスなどの立ち寄り先等についての情報が連日盛んに報じられますと、どうしても社会全体がどこか戦々恐々としたものになって参ります。お互いが疑心暗鬼に陥る特異な空気の存在です。
トイレットペーパーが無くなることなど無いと根拠の無いデマを否定しつつも買いに走る社会現象も出て来ています。「万一足りなくなったら困る。毎日使う物だから」
こうした中で、感染してしまった皆さんは、ご家族やお医者さん、看護師さんと懸命に新型コロナウイルスと戦っています。闘病に勝ち、ウイルスは陰性となり、元気に退院した人も沢山います。
でもそれだけでは済まない、退院後むしろ精神的にはもっと辛い環境に直面している皆さんの存在があります。
僕自身、強く自戒しなければならないことです。それは退院した彼らが自分に近づいて来ると自分も感染してしまうのではないかという根拠の無い怖れ・不当な差別意識に捕らわれていないかということです。感染から復帰しても、周りの人たちから近づいてほしくないと思われていると敏感に感じ、どうしたらよいのか分からない立場に追い詰められている元患者の方。涙ながらのインタビューを忘れることは出来ません。
そんな中、話題になっているのが新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため休校となったイタリアの高校の校長先生が生徒たちに送ったメッセージです。既にご存知かもしれませんが一部を紹介いたします(筆者抜粋)。
「冷静さを保ち、集団のパニックに巻き込まれないでください。予防措置を講じながらいつもの生活を続けてください。せっかくの休みですから、散歩や良質な本を読んでください。体調に問題が無ければ、家に閉じこもる必要はありません。スーパーや薬局に駆け付ける必要もありません。マスクは体調の悪い人に必要なものです。
世界中にあっという間に拡散した感染の速度は私たちの時代の必然的な結果です。ウイルスを食い止める壁が無いことは、今も昔も同じです。その速度が、以前は少し遅かっただけなのです。このような危機に打ち勝つ際の最大のリスクは、社会生活や人間関係の荒廃、市民生活における蛮行です。見えない敵に脅かされたとき、人はその敵があちこちに潜んでいるかのように感じてしまい、自分と同じような人々も脅威だ、潜在的な敵だと思い込んでしまいます。それこそが危険なのです。
私たちには進歩した現代医学があり、それは更なる進歩を続けており、信頼性もあります。合理的な思考で私たちが持つ貴重な財産である人間性と社会とを守って行きましょう。それが出来なければ、本当に "ペスト" が勝利してしまうかもしれません」
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |