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自衛隊ニュース   999号 (2019年3月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第25回>

ドナルド・キーンと日本文化の普遍性

 2月24日ドナルド・キーンが亡くなった。96歳だった。
 ドナルド・キーン(1922-2019)は米国出身の著名な日本文学・日本文化研究者。コロンビア大学在学中アーサー・ウェイリー訳『源氏物語』に感動して日本研究を始めた。1953年京都大学に留学し、1960年コロンビア大学教授(日本文学)。古典から現代文学にいたるまで広く日本文学を研究して海外に紹介し、日本文学の国際的評価を高めるのに貢献した。2008年文化勲章を受章。91歳のとき東日本大震災を見て日本永住を決意し、日本に帰化した。
 日本文学と文化に関するキーンの研究業績は厖大であるが、主な英文著作に、『日本文学史』、『明治天皇』、『日本との出会い』、『百代の過客 日記にみる日本人』、『能・文楽・歌舞伎』などのほか、近松門左衛門、吉田兼好、松尾芭蕉、三島由紀夫、川端康成、安部公房らの作品の翻訳がある。また、『日本文学を読む』、『二つの母国に生きて』、『日本文学は世界のかけ橋』といった日本語の著作を残している。
 キーンの最大の業績は、日本文学と日本文化が決して特殊なものではなく、世界の誰もが理解できる普遍性をもつとのメッセージを発信し続け、日本文学と文化に関する世界の評価を変えたことにあるだろう。
 キーンが日本の研究を始めた頃、日本文学に対する偏見はなお強かった。キーンがケンブリッジ大学で初めて教鞭をとった時、英国人から職業を聞かれ、「日本文学を教えています」と言うと、一様に「どうしてサルまねの国の文学を教えるのですか」と、聞き返されたという。
 こうした偏見と無理解は、日本を自分たちの尺度でしか理解できなかった欧米人がーー『菊と刀』の作者ルース・ベネディクトもその一人だと私は思うーー、日本を神秘の国とか、不可解な国だと紹介したことに原因があるが、日本人自身が日本文化は特別で、外国人には理解できないと思いこむようになったことにも原因があるとキーンは言う。
 キーンは日本人をはるかに上まわる日本の古典の読解力をもって厖大な日本文学を読み、日本文化を研究。そこに見られる著しい美的趣向、豊かな感受性、比類のない多様性のすばらしさを発見した。そしてこれが決して特殊ではなく、外国人が十分理解でき、世界の文学、文化の一部となる普遍性をもつとの信念を数多くの著作で発信し続けた。現在、日本文化が世界文化の一部となっていると感じる人が増えているとしたら、それはキーンの半世紀以上にわたる世界への発信がもたらした成果だと言っては言い過ぎだろうか。
 キーンの日本文学と文化への驚嘆すべき造詣の深さは、ほんの二、三の著作を読めばわかるが、例えば「一休頂相」というエッセイからは、一休(あの頓智で親しまれた一休さん)の人間に共感するキーンの深い理解が伝わってくる。これほど卓抜した一休論を私は知らない。
 キーンは第二次世界大戦中、米海軍に情報士官として勤務、沖縄で日本人捕虜の尋問等に当たった。遺品となった多くの日記や手紙を読み、「日本人は何と内面を繊細に語るのか」と日本人に対する敬意が増したという。こうしたキーンの人間性が、日本文学と文化への深い理解をもたらした。
 キーンが日本文学と文化に関して世界を啓蒙した功績ははかり知れない。われわれ日本人は限りなく多くをキーンさんに負っている。
(2019年3月11日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』など。


全自衛隊バスケットボール大会開催!!
 2月9日から11日、「第32回全自衛隊バスケットボール大会」(主催‥全自衛隊バスケットボール連盟、後援‥陸海空自衛隊、支援‥朝霞駐屯地)が朝霞駐屯地内の自衛隊体育学校体育館で行われ、熱戦が繰り広げられた。
 今年も全国の予選を突破した男子17コチームと女子6コチームが一発勝負のトーナメント戦で一進一退の攻防を繰り広げた。男子の部では、宇都宮チームが弘前チームを激闘の末に下し、2連覇を飾った。女子の部では、東千歳チームが、3連覇を狙う市ヶ谷チームと白熱戦を繰り広げたのち、優勝を飾った。
※主な成績は以下のとおり
【男子】▽優勝・宇都宮▽準優勝・弘前▽第3位・久居&豊川、防衛大▽最優秀選手・小林 開(宇都宮)、【女子】▽優勝・東千歳▽準優勝・市ヶ谷▽第3位・多賀城・横須賀▽最優秀選手・南 千尋(東千歳)

豚コレラ対処災害派遣部隊および後方支援部隊を表彰
<東部方面隊>

 長野県内の養豚場で豚コレラが発生した際に、的確な対処で感染拡大防止に貢献したなどとして、陸上自衛隊東部方面隊は2月27日、松本駐屯地の第13普通科連隊を基幹とする「豚コレラ対処災害派遣部隊」及び後方支援に当たった「松本駐屯地業務隊」に部隊表彰を贈った。
 表彰式には、第13普通科連隊の隊員約150名と松本駐屯地業務隊の隊員約50名が出席した。
 東部方面総監の高田克樹陸将が駐屯地業務隊長の花里圭佑2陸佐に、第12旅団長の田尻祐介陸将補が第13普通科連隊長の岩原傑1陸佐にそれぞれ賞状を手渡した。
 第13普通科連隊は2月6日、長野県知事から災害派遣要請を受け、豚コレラの感染が確認されていた上伊那郡宮田町の養豚場に派遣され、豚の誘導や運搬、養豚場の清掃や除染の作業に従事した。
 表彰式で高田総監は「現場から帰ってきた隊員が安心できる環境をつくってくれた」と隊員を称え、田尻旅団長は「大きなストレスを感じる現場で黙々と作業する姿が頼もしかった」と労いの言葉をかけた。


PAC-3機動展開訓練
<航空自衛隊>
 3月5日、海上自衛隊横須賀地区において、PAC-3機動展開訓練が行われた。これは、弾道ミサイル対処に係る戦術技量の向上を図るとともに、自衛隊の弾道ミサイル対処に係る即応態勢を顕示する事で国民に安全・安心感を持ってもらおうとの目的で行われたもの。
 訓練指揮官は、神奈川県武山分屯基地の第1高射群第2高射隊長渡部博2空佐で、参加人数は約30名。訓練後渡部隊長は「我々の部隊が最後の砦として常に緊張感を持って訓練に励むよう普段から心構えをしており、今回も隊員たちは自分の役割を自覚して訓練をしていた」とコメントした。2高隊としては今回で3回目の訓練であり、今後も常に緊張感を持って隊員の練度向上に努めるとしている。また、航空自衛隊としても、今後も引き続き、自衛隊施設以外に展開するものを含め、順次、全国的に同様の展開訓練を実施予定としている。

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