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読史随感
<第2回>
習近平にみる中国文明の伝統 |
「中華民族の偉大な復興」を唱える習近平の独裁化が進んでいる。3月の全国人民代表大会で、国家主席の任期制を撤廃する改憲が承認された。ここに、古代から続く中国文明の強い伝統が、なお現代中国を動かしているのを感じる。
2200年前の秦の始皇帝より、中国は皇帝の支配する世界だった。皇帝は天意を受けた天子であり、有徳の天子を優秀な科挙官僚が支えて民を統治する。これが中国文明のあり方である。毛沢東は実質的には皇帝だった。習は毛に並ぶ皇帝になりたいのである。
古代より中国は、未開の周辺地域に屹立した文明世界だった。これが中国文明の根底にある中華意識である。中国は周辺国より文明的に上位にあり、未開な周辺国は中国皇帝に跪く。これが中国の理想とする世界秩序であり、近世になるまで中国文明の優越意識が崩れることはなかった。
しかし、15世紀頃より西欧文明が興隆した。科学革命、産業革命、および市民革命を経て強力な近代国家となった西欧文明が、全世界に進出した。19世紀以降、文明の接触は中国文明が西欧文明の劣後にあることを示した。
中国の近代は、西洋列強により半植民地化されるという屈辱の歴史である。そして中国の誇りを最も傷つけたのは、他ならぬ日本だった。中国文明の周辺国に過ぎない小日本が西欧文明を吸収して近代化し、日清戦争で中国を破った。さらに日本は中国を侵略した(日中戦争)。
しかし、中国は最終的に抗日戦争に勝利した。中華人民共和国を建国し、誇りを取り戻した。
西欧文明より受けた屈辱を克服した中国文明は今、大きく変化しただろうか。現代中国を見る限り、何も変わっていない。古代より続く中国文明の伝統のままである。
中国文明は西欧文明から何を学んだのだろうか。19世紀帝国主義化し中国を半植民地化した西欧文明の蛮性は、中国の克服すべき課題ではなかったか。しかし、現代中国の膨張は、19世紀の列強の帝国主義的膨張と何も変わらない。
西欧文明は帝国主義的膨張を起こしたが、それでも西欧文明を代表する英、米、仏は市民革命を経て、自由、民主主義、人権といった人類の普遍的価値とみなされる価値を具現する文明だった。現代中国の膨張にはそのような敬すべき普遍的価値はない。
中国より文明を学んできた日本人は、昔から中国を尊敬してきた。日清戦争後、軽薄な日本人が中国を蔑視し始めたが、心ある日本人はそうではなかった。毛沢東や周恩来に深い敬意を抱く日本人は多かった。強い伝統文明をもつ中国が、西欧近代文明の限界を乗り越える文明を創造すると期待する日本人識者は、少なからずいた。
しかし、現代中国をみると、それはできていない。古来の中国文明が、近代世界ですでに否定された帝国主義的膨張を起こしている。日本はこんな時代錯誤的膨張を受け入れてはならない。
(2018年3月20日)
神田 淳(かんだすなお)
高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii-nihon.themedia.jp/)などがある。 |
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祝 卒業 |
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防衛大学校 |
汗ばむような陽気の日曜日の3月18日10時、平成29年度防衛大学校(学校長・國分良成)の卒業式が安倍内閣総理大臣、小野寺防衛大臣等来賓数約1300名を招いて行われた。今年度の卒業生は494名、うち留学生はカンボジア王国2名、インドネシア共和国3名、モンゴル国2名、フィリピン共和国2名、タイ王国4名、東ティモール民主共和国1名、ベトナム社会主義共和国5名、ラオス人民人主共和国1名の計20名となる。卒業後は陸上自衛官に203名、海上自衛官に110名、航空自衛官に120名が任命された。
自衛隊最高指揮官の安倍晋三内閣総理大臣は「諸君には、かけがえのない平和の守り神として、精強なる自衛隊を作りあげてほしいと願います」「礎ここに築かん、新たなる日の本のため。我が国の未来は、不断の努力によってつくられるものであります。日本の平和と繁栄は、ひとえに、諸君一人一人の双肩にかかっている」等と訓示した。
また、航空自衛隊ブルーインパルスが平成23年11月以来6年4ヶ月振りに防衛大学校上空を祝賀飛行するとあって、防衛大学校周辺は各地から多くの人がカメラを手に集まっていた。 |
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防衛医科大学校 |
防衛医科大学校(学校長・長谷和生)医学科第39期学生及び看護学科第1期学生の卒業式が3月3日、小野寺防衛大臣臨席のもと同校で盛大に挙行され180名の卒業生が医官・看護官・技官への第一歩を踏み出した。
今年の卒業式は平成26年に開設された看護学科から初めて卒業生が誕生する節目の年となった。
学校長が卒業生一人ひとりに卒業証書を手渡し、学位記が授与された後、医学科卒業生は「医師の誓い」を、看護学科卒業生は「看護師の誓い」をそれぞれ読み上げ、医師・看護師としての決意を述べた。
小野寺防衛大臣は「人のために生きる時、人生はより困難になる。しかし、より豊かで幸せにもなれる」との医師でノーベル平和賞受賞者のアルベルト・シュバイツァーの言葉を贈り、「傷ついた隊員に寄り添い、活動する地域の患者に寄り添ってほしい。困難な状況に直面したときや思い悩んだときは、共に学び共に苦労した同期の絆を思い出し、互いに助け合いながら職務に精励してほしい」と訓示した。
また、長谷学校長は式辞で、「青春の多感な時代を防衛医科大学校で学んだことは他の医科大学にないかけがえのない経験であり、同期の絆は一生の宝物になる。防衛医科大学校を卒業したという誇りを持ち続けるとともに、母校である防衛医科大学校の発展を願い、愛し続けてほしい」とはなむけの言葉を贈った。任命・宣誓式では、陸上・海上・航空幕僚長から任命を受け、防衛大臣に宣誓を行い、医官・看護官・技官への第一歩を踏み出した。 |
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幹部候補生学校 |
陸上自衛隊幹部候補生学校(学校長・鬼頭健司陸将補)は、3月8日第98期一般幹部候補生I課程(後段)【部内選抜】305名に対する全ての教育を修了し、卒業式を挙行した。卒業式は、陸上幕僚長・山崎幸二陸将立会の下、部内外多数の来賓、卒業生家族及び学校職員が出席し厳粛かつ盛大に執り行われた。
鬼頭学校長が一人一人に卒業証書を授与した後、式辞において「今後も自らの限界に挑戦せよ」「本校で培った絆を大切にせよ」と要望し、続く陸上幕僚長からは、「率先垂範、常に陣頭に立ち、任務を完遂せよ」「志を高く持ち、日々自己修養せよ」との2点の要望事項を候補生に対する餞(はなむけ)の言葉として贈られた。また、校歌斉唱においては、卒業式のみ許される校歌3番までを万感の思いを込めて歌い上げ、式を終了した。
その後、記念会食では来賓及び御家族とともに終始リラックスした表情で食事を楽しんだ。予定されていた観閲行進については、天候不良のため残念ながら中止となったが、候補生は、学校職員、家族等に見送られながら、自信と誇りそして同期との絆を胸に勇躍巣立っていった。 |
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高等工科学校
総理からメッセージも |
3月21日に季節外れの雪の中、陸上自衛隊高等工科学校(学校長・滝澤博文陸将補)は、小野寺五典防衛大臣の立会の下、第61期生徒(303名)の卒業式を盛大に挙行した。
式に先立ち、小野寺防衛大臣は、第2学年生徒約100名により編成された儀仗隊及び吹奏楽部により編成された音楽隊による栄誉礼を受けた。
式は、山崎幸二陸上幕僚長、衆議院 二階俊博議員、武田良太議員、古屋範子議員、小泉進次郎議員、参議院 佐藤正久議員、宇都隆史議員、島村大議員、横須賀市上地克明市長、三浦市吉田英男市長及び神奈川県立横浜修悠館高等学校原口瑞校長をはじめとする部内外多数の来賓が臨席するとともに、この晴れの日を心待ちにしていた卒業生の296家族約790名が出席した。
学校長が生徒一人一人に卒業証書を授与した。その後、自衛隊最高指揮官である安倍晋三内閣総理大臣より「先輩が積み上げた歴史の上に、新しい時代を切り拓き、夢と希望をもって大きく羽ばたくことを切に願います」という卒業を祝うメッセージを学校長が代読した。総理大臣のメッセージは、少年工科学校と高等工科学校の卒業式において初めてのことであった。引き続き、学校長が「目標を高く掲げ日々邁進せよ」及び「同期生を成長の指標と捉え切磋琢磨せよ」と餞(はなむけ)の言葉を贈った。
続いて、防衛大臣は「高等工科学校で学んだ知識・技能を活かすとともに、さらなる知識・技能の修得を続け、様々な領域分野の最先端で活躍できる人材となってくれることを強く望む」と訓示し、陸上幕僚長は「高い志を持ち、日々修養せよ」及び「同期の絆を大切にせよ」と要望した。
また、学校後援会を代表し、小泉進次郎議員が「日本一の高校、日本一の高校生、皆は横須賀の誇り、日本の誇りです」と祝辞を贈った。その他、二階議員、提携校である神奈川県立横浜修悠館高等学校校長及び横須賀市長からも祝辞が贈られた。
在校生代表大倉快友生徒(第2学年)による送辞、卒業生代表渡邊崇人生徒による答辞、「仰げば尊し」斉唱、校歌斉唱と続いた。特に答辞では生徒のみならず保護者及び来賓が感極まり涙を流す場面も見られ、本校で過ごした3年間が充実したものであったことを印象付けた午餐会では、佐藤正久議員から祝辞が贈られ、卒業生と家族の和やかな時間が流れた。歓談中に、小野寺防衛大臣が各テーブルを回り、生徒、家族、保護者に労いの言葉とエールを送っていた。
なお、卒業生の一部の生徒は防衛大学校、海上及び航空自衛隊航空学生への道に進む。他は4月1日付で陸士長に任官して、全国5ヶ所にある陸曹教育隊で生徒陸曹候補生課程(前期)へと進み、陸上自衛官として自衛官生活の第一歩を踏み出し、卒業生一人一人の人生における次のステージへの新たな出発点となった。 |
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