新年度を迎えた4月1日のニュースの特色は、エイプリルフールの傑作紹介と入社式に臨む新入社員の緊張した面持ち、彼らを迎える社長等の励ましの言葉の紹介です。防衛省・自衛隊でも全国各地で同様の光景が見られます。
エイプリルフールといえば、「進化した空飛ぶペンギン発見!」等の英国公共放送BBCの力作が思い出されます。今年のエイプリルフールは、どんな秀逸な本当のようなウソに多くの人々が信じ込み、だまされたとニヤリとしたことでしょう。ちなみにエイプリルフールには厳密なルールがあり、ウソは午前中のみとのこと。
もちろんエイプリルフールのウソはジョークでありユーモアです。いわゆる「嘘」ではありません。
改めて言うまでもなく、全ての新入隊員の皆さんは、隊員である前に健全な社会人です。
どんなときにも、いわゆる「嘘つき」呼ばわりされるような人になってほしくはありません。国民から信頼される隊員は、まず社会人として信頼される人間です。
他方、ユーモアのセンスは是非大切にして行ってください。かつて防衛大学校卒業式(平成9年3月23日)に来賓として出席された小説家の阿川弘之さんは、「ゆとりのある冷静柔軟な物の見方から、人間の人間らしい笑いが生まれます。トラブルの発生しがちな、緊張した仕事場で、これは特に重要なものです」と卒業生に語り掛けています。大変なときほど、ちょっと一呼吸、KEEP ON SMILING!です。
新入隊員の皆さんは、入隊の喜びとともに多くの示唆に富んだ歓迎の挨拶や厳しい訓示を受け、身の引き締まる思いをされていることでしょう。
これまで、私も多くの人生の先輩からアドバイスを受けて来ました。その一つひとつが私にとっては、かけがえのない応援歌。今日は、そんな応援歌の中でも特に私が力づけられ、助けられ、今も困難に直面した時ほど判断や行動の指針としている言葉を、今度は皆さんに贈ります。
「思無邪」(おもい よこしま なし)
もう何十年も前のことです。あるとき元大蔵事務次官の谷村裕さんに言われました。
「私はサルビアの花が好きです。あなたは何の花が好きですか?」
「えっ、花ですか…僕は桔梗が…」
「桔梗もサルビアも、観る人に "綺麗だね" と思われようと思って咲いているわけではないと思うんです。花は、花として与えられた命をひたすら真っ直ぐに生きているのではないでしょうか。あなたもこれからいろいろな任務に従事することでしょうが、私心なく、今為すべきことをただひたすら真っ直ぐに行って行ったらいい。それでいいじゃないですか。思無邪です」…「思無邪」という言葉を知ったのはこの時が初めてでした。自分が自分によって自分でなくなるときが少なくなって来たような気がします。
「あなたは、何の花が好きですか?」
北原 巌男(きたはらいわお)中央大学。70歳。長野県伊那市高遠町出身。元防衛施設庁官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長 |