海上自衛隊幹部学校長・福本出海将は5月18日、東京大学本郷キャンパスで「わが国周辺の海洋安全保障—いま南の海で起きていること—」と題して講演を行った。同講演は東京大学国家・安全保障研究会の招請に応じて東京大学五月祭のイベントの一環として行われたもの。学生のほか五月祭に訪れた一般の人々が聴講に詰めかけ、昨今のわが国周辺の安全保障に対する関心の高さが伺われた。福本校長は冒頭に、冷戦期から現在に至る海上自衛隊の任務の変遷、特に海外における国際平和協力活動等の海上自衛隊の活動について紹介した。その後、東アジアにおける日本周辺を取り巻く軍事情勢、海洋を巡る安全保障環境などについて、ユーモアを交えながらわかりやすく解説した。特に三戦(輿論戦・心理戦・法律戦)から読み解くことができる中国の海洋戦略の分析について話が及んだときには、聴講者の表情も一層引き締まり熱心に耳を傾けていた。
講演終了後には様々な質問が寄せられた。特に「偶発的な衝突を回避する意味でも、相互理解には人事交流が大事だと思うが、中国人民解放軍と自衛隊間の交流は行われているのか」という質問に対し福本校長は「昨年は日本と中国・韓国の関係にこれまでにない摩擦が生じ修学旅行など民間交流もキャンセルが相次いだ。海上自衛隊幹部学校では厳しい二国間関係の中にあっても本学学生の韓国研修は予定どおり実施し、韓国海軍の積極的な支援を得ることができた。また、本校が主催した次世代海軍士官短期交流プログラムには中国海軍の大尉が参加し、帰国前に『来日前に比べ日本に関する印象は大きく変わった。来てよかった』と述べたのが印象的だった。軍当局間の交流は互いの信頼を醸成するために極めて大事だと認識しており、艦艇の相互訪問、OBを含む高官の相互訪問など、積極的に行われている。世の中には、軍人は戦争を好む輩のような偏見を抱く方もいるが、防衛駐在官として各国軍人と交流した経験からも軍人こそが最も平和を愛する人種だと付言しておきたい」と回答し、会場からは大きな拍手が寄せられた。 |