防衛省に突如、小池百合子さんが大臣に着任した。省の内外で大変評判がいい。初の女性大臣登場の機会に、自衛官に女性をどんどん送り込んだらいい。隊内の空気もよくなること請け合いである。 想像だが、小池さんの大臣就任に自衛隊少数派の女性隊員が一番喜んでいるはずである。彼女らは、数が少ないために何かと悲哀を味わってきている。通りすがりのジャーナリストにさえも、そうした悲鳴を明かしたりする。「少数派なのだから当然」なのかもしれないが、女性隊員を増やす利益はとてつもなく大きいのである。 だいたい、この世は男と女が半々いる。最近、中国では男が多くなり、結婚できない男性が沢山出るというが、均衡を欠くと社会も組織も安定しない。儒教の男尊女卑が災いしているのだが、男女平等の誇れる日本国憲法を保持している日本である。全ての組織に女性が半分占めるのが自然である。ましてやペーパーテストをすると、女性上位であることは誰しも承知していることではないか。 その点でいうと、これまでのところ自衛隊も男性中心で女性隊員が極端に少ない。そのためにセクハラも起きる。某指揮官は「一番気をつけなければならないことはセクハラ対策だ」と冗談交じりに言っていたが、存外深刻なことであろう。 女性が増えれば、それもなくなる確率が高くなるし第一、職場の雰囲気がよくなる、せめてスペイン並みに女性隊員を18%に引き上げてはどうか。あえて提案したい。 というのも、筆者には確たる証拠があるからである。 半年ほど前になるが、関係者と対話する機会を得た。「女性を増やして、なにか不都合なことはあるか」とさまざまな人たちに尋ねてみた。陸・海・空の実戦部隊の中堅幹部の面々に対してである。一人として「NO」という者はいなかった。筆者が接触した隊員に、儒教かぶれはいなかったらしい。みんな近代的センスを持ち合わせていた。 ただし、少しばかり条件がついた。 防大出の海上自衛隊幹部候補生は「潜水艦は厳しいかもしれない」という。「どうしてか。能力に問題はあるのか」と問い詰めると、「場所が狭いからだ」と答えた。「狭い場所」が女性にきつい、というのである。肝心の技能は問題ない、のである。 航空自衛官は「戦闘機乗りは厳しいかもしれない。アメリカではいますが」という返事である。「それ以外の飛行機は問題ない」という。そういえば自衛隊視察のおり、女性パイロットの輸送機に世話になったことがある。 こうしたごくわずかな例外を除けば、女性隊員はなんでもできるのである。 余談だが、先ごろ日本を訪問した2006年ノーベル平和賞をもらったバングラデシュのグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌスさんは、こんな話をしてくれた。 「私の銀行の借り手は700万人の女性です。彼女たちは立派にビジネスをやり遂げて利息を払います。97%の借り手が完璧に契約を履行してくれます。つまり女も男も同じ能力の持ち主なのです。差別する制度にこそ問題があるのです」 ビジネスに限らない。機会を与えれば女性も男性と同じ仕事をすることができるのだ。自衛官さえも務まる、ということなのである。女性隊員の声も同じだった。女性の性格だって仕事柄、専守防衛の日本では光るはずだ。新潟の災害に女性隊員が大挙、救援にかけつける姿を想像してみるがいい。小池さん、考えてみてはどうですか。