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自衛隊ニュース   1041号 (2020年12月15日発行)
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不発弾等処理技能者養成教育
事前訓練で不安を払拭
<15旅団>
 第15旅団(旅団長・佐藤真陸将補=那覇)は、10月5日から23日までの間、那覇駐屯地及び中部訓練場において不発弾等処理技能者養成教育を行った。
 本訓練は、各部隊に必要な不発弾処理技能者を養成し、射撃訓練等で発生した不発弾等を安全確実に処理することを目的として行われた。
 今回の教育は、第15旅団の創隊以来初となる女性隊員の参加者を含む各部隊から選抜された14名が参加し、当初那覇駐屯地で学科を実施後、中部訓練場において実技(基本爆破及び実弾爆破)を行い、不発弾等処理の知識及び技術を学んだ。
 本訓練に参加した女性自衛官の第15後方支援隊の木下3陸曹は、「爆破訓練前に駐屯地において事前訓練を何回も行う事により、本番では不安なく臨むことができた。今後も知識と経験を増やし、不発弾処理技能を向上させたい」と述べた。

秋季関山演習場定期整備
<高田駐屯地>
 11月11日から18日の間、整備隊長を第5施設群長(庭田徹1陸佐=高田)とし、第5施設群、第306施設隊、第12旅団各部隊及び陸上総隊(第1空挺団及び中央即応連隊)により整備隊を編成し、秋季関山演習場定期整備が行われた。
 本整備開始日の11月11日に関山演習場において指揮官会議が行われ、演習場整備の認識統一と整備隊長の企図の徹底を行った。整備隊長の庭田1陸佐は各部隊指揮官に対し「目的意識をもって整備を実施せよ」を要望するとともに、新型コロナウイルス拡大防止として「手洗い、咳エチケット」「身体的距離の確保」「3密の回避」等を徹底した。
 整備は天候に恵まれ第5施設群及び第306施設隊の施設科部隊は順調に機動路の維持補修、各射場停弾提整備、溜枡(ボックスカルバート)の設置及びLZ整備等を行い、旅団各部隊(第2普通科連隊、第13普通科連隊、第30普通科連隊、第12対戦車中隊)及び陸上総隊は附帯設備(除草、側溝・溜桝)整備及び各射場の維持補修を行った。
 11月18日、東部方面総監の小野塚陸将視察が行われ、七福神の森(段列展開地域整備)を第30普通科連隊及び第12後方支援隊が、旭A地区坂上(LZ整備)を第5施設群が、ワタナベ道北側(射界清掃)を第2普通科連隊が方面総監に対しそれぞれ整備状況報告を行った。同日夕方、指揮官会議をもって関山演習場定期整備隊は編成を解組した。8日間にわたる整備により、演習場機能の維持・向上及び安全対策が図れるとともに、大きな事故及び怪我等なく無事に秋季関山演習場定期整備を終了することができた。

鑑識競技会及び弁論大会
<北部方面警務隊>
 北部方面警務隊(隊長・國場進1陸佐=札幌)は、11月11日から13日まで札幌駐屯地において「令和2年度方面警務隊鑑識競技会及び弁論大会」を実施し、職務執行能力の向上及び団結の強化、士気の高揚を図るとともに、12月に市ヶ谷駐屯地で開催される「警務隊鑑識競技会」及び「弁論大会」(全国大会)における勝利を誓った。
 鑑識競技会は、事件捜査で現場に出動する警務官の鑑識の技能を向上させることを目的として、北海道内の各警務隊から1チーム5名の5個チームが参加し、事務室に侵入した犯人が、業務用パソコンに不正にアクセスする「不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反事件」が発生したという想定で技術を競った。
 警務隊には、鑑識活動のみを専門に行う隊員は存在せず、全ての警務官が鑑識技能を習得して対応している。
 出場した警務官は、現場に残されたパソコンなどから犯人の指紋や足こん跡を採取し、本番さながらにその腕前を披露した。
 競技の結果は、真駒内駐屯地に所在する第120地区警務隊(隊長河野3陸佐)が優勝の栄冠に輝き、準優勝は帯広駐屯地に所在する第121地区警務隊であった。
 優勝した第120地区警務隊チームを指揮した同地区警務隊本部の横道2陸尉は、表彰式後のインタビューに「チームの全員がしっかり仕事をしてくれた結果です。全国大会に向けて、さらに練度を向上させるよう頑張ります」と語った。
 また、鑑識競技会に先立って実施された弁論大会では、各部隊で選抜された代表者である幹部・陸曹各6名の合計12名が「警務隊員として私はこうありたい」という命題に基づき、陸上自衛隊唯一の司法警察権を有する警務隊員としてのあるべき姿について自らの考えを披露し、幹部の部は方面警務隊本部所属の河村1陸尉、陸曹の部は同じく方面警務隊本部所属の末吉2陸曹が最優秀賞に輝いた。
 鑑識競技会の優勝チームと弁論大会の最優秀賞受賞者はそれぞれ、12月に実施される「警務隊鑑識競技会」及び「警務隊弁論大会」に北部方面警務隊の代表選手として出場する。

光輝くダイヤモンド
第52期戦闘隊帰還報告式
レンジャー徽章授与式

<14普連>
 第14普通科連隊(連隊長・根本勉1陸佐=金沢)は、11月12日、金沢駐屯地グランドにおいて第52期戦闘隊帰還報告式及びレンジャー徽章授与式を行った。
 同日、早朝に行動訓練最終第9想定の任務を完遂したレンジャー学生10名は学生長(重迫撃砲中隊・山崎奨平2陸曹)の指揮のもと、旗手(第2中隊・榮鎮心陸士長)を先頭に威風堂々と帰還した。
 駐屯地所在隊員、レンジャー学生家族、駐屯地各協力団体長及び会員並びに駐屯地モニター約450人が出迎え慰労と栄光を称えた。
 学生長の帰還報告に引き続き、レンジャー徽章授与式が行われ、連隊長から一人一人に真新しいレンジャー徽章を授与し、互いの熱い拳をぶつけるフィストバンプで栄誉を分かち合った。
 連隊長は「レンジャー徽章を手にしたことを誇りとし、金剛石(ダイヤモンド)の輝きが光を増すよう、これからの日々『心』と『戦技』と『身体』を鍛え、金剛石を磨き続けよ」と述べた。
 その後、家族から花束が手渡され、家族の労いの言葉に涙する学生や家族と抱き合い、苦難を乗り越えた喜びを噛みしめる場面も見られた。
 学生長は「この苦難を乗り越えられたことは同期、中隊、家族の支えであり、このレンジャーバッジに奢ることなく、日々練度向上に努める」と述べた。

読史随感
神田淳
<第67回>

苛酷な中国文明

 我々日本人が中国人、中国文明を理解するのは難しい。古来、文明は中国よりもたらされ、日本人は中国に敬意を抱いてきた。中国は「己れの欲せざる所は、人に施すなかれ」(『論語』)といった、人倫の基本を説く孔子のような聖人を生む国だった。しかし現代中国はこうしたイメージからほど遠い。
 中国は民主主義者を弾圧し、人権を無視する。天安門事件など政府に不都合な事実はなかったことにする。「南シナ海の中国の領有権主張は法的根拠なし」という国際仲裁裁判所の判決を、こんな判決は紙くずにすぎないと平然と無視する。
 中国の史書『資治通鑑』を精読して『本当に残酷な中国史』を著した麻生川静男は言う。現在の中国の政治・社会を支配する基本理念は、我々が知っている中国古典の世界ではない。中国は4世紀の晋以降、漢民族と異民族が混在する世界となり、それ以前の時代と様変わりした。長期にわたる異民族との苛烈な闘争を経て、徳治や仁義といった政治倫理が地に落ち、詐術と武力が支配原理となった。それ以降現代に至るまでの千五百年間は、根本部分において中国は変わっていない。現代中国人は『論語』の時代の中国人と「類」が異なる、と。
 麻生川は『資治通鑑』を読まずして中国人を理解するのは不可能と言う。毛沢東は史書を好み、特に『資治通鑑』を愛読した。毛沢東の言動や策略には『資治通鑑』のエッセンスが極めて忠実に反映されているという。
 『資治通鑑』は北宋の司馬光(1019-1086)がリーダーとなって、数十人の編纂チームが20年かけて書いた1万ページに及ぶ大部の歴史書である。史実に忠実であることを旨とし、官吏の底なしの苛斂誅求、桁違いの賄賂政治、盗賊や軍閥の理不尽な寇掠と暴行、食人の風習、無実の罪をでっち上げて臣下を次々と殺す暴君、前王朝の一族及びその子孫及び高官の一族全員を処刑した新君主、重病だがまだ生きている多くの人を既に死体となった人とともに焼却し、「洗城」してしまった武将、賊軍だけでなく官軍からも財産を気ままに収奪され、簡単に生命を奪われる民衆の悲惨、等々中国の残酷な歴史が詳しく書かれている。
 麻生川は歴史に頻出する中国人の策略を紹介している。表では友好を装い、裏では陥れる策を練る。奸計で無実の人を陥れる。義を守るためには汚い手段も辞さない。面子を守るためには不正、不義も断行する、など。特に面子へのこだわりは徹底している。社会的地位の高い人間の面子のためには、下女の二、三人(あるいはもっと多く)が死んでも全く痛痒を感じないのが中国の伝統であり、それは現在も脈々と受け継がれている。
 中国は「騙される方が騙すより悪い」という社会である。『資治通鑑』も、人を信頼して殺され破滅した事例に満ちている。麻生川は言う。真心を尽くせば必ずわかってもらえると策もなく対応するのは、中国においては無謀以外の何ものでもない。軽々しく人を信じず、謀略を巡らす必要がある。
 『資治通鑑』には、自己の生命を賭して義を貫いた人も多く書かれている。中国人は日本人の想像を絶する異民族とのすさまじい寇掠を生き抜いてきたたくましさがある。現実の中国と向き合う前に『資治通鑑』のような史書を読み、彼らの思考体系の一端を把握することが、「平和国家」の僥倖に恵まれた日本人に必要である、と麻生川氏は言う。
(令和2年12月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


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