今回は、介護保険の利用方法について解説します。
3. 利用できる介護サービス
親の介護に直面した時に、初めに介護を自宅で行うのか、施設を利用するのか選択する必要があります。
(1) 施設介護
介護に利用できる施設の種類は、次表のとおりに区分されますが、入居者の介護度に応じて利用できる施設が異なります。例えば、介護老人福祉施設(特養)は要介護3以上でなければ利用することはできません。
《介護施設の種類と入居対象》
介護保険施設
介護老人福祉施設(特養):要介護3以上
介護老人保健施設:要介護1以上
介護医療院:要介護1以上
認知症高齢者グループホーム:要支援2以上
有料老人ホーム
介護付有料老人ホーム(介護専用型):要介護1以上
介護付有料老人ホーム(混合型):施設により自立から要介護まで
有料老人ホーム(在宅型):自立から施設により要介護まで
有料老人ホーム(健康型):自立から要支援まで
高齢者用施設
経費老人ホーム(A型、B型、ケアハウス):自立から要支援、要介護の一部
養護老人ホーム:主として自立(経済的困窮者)
高齢者用住宅
サービス付き高齢者住宅:自立から要介護まで
シニア向け分譲マンション:自立から施設によっては要介護まで
また、介護施設を利用するための費用は、次表のとおり介護費用の自己負担額に加えて食費と住居費等が必要となります。また、有料老人ホーム等に入居する際には、一般的に入居一時金が必要となります。
《介護施設の必要経費》
特別養護老人ホーム
介護費用(自己負担額)+食費+住居費+日常生活費
介護付有料老人ホーム
入居一時金
介護費用(自己負担額)+食費+管理費+日常生活費
(2) 居宅介護
自宅で介護する場合に利用できる居宅介護サービスは、次表のとおり訪問看護や訪問介護等自宅で利用するサービスに加えて、施設に通所や入所して受けるサービスがあります。
《居宅介護サービスの種類》
自宅で利用するサービス
訪問介護(ホームヘルプサービス)
訪問看護
訪問リハビリテーション
訪問入浴介護
居宅療養管理指導
施設に通所するサービス
通所介護(デイサービス)
注所リハビリテーション(デイケア)
施設に短期入所するサービス
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護(ショートステイ)
地域密着型サービス
小規模多機能型居宅介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
そして、要介護度によって利用できる限度額が次のとおり決まっており、限度内に収まるように介護サービスを組み合わせて利用します。
《介護度に応じた支給限度基準額(月額)》
要支援1: 50,320円
要支援2:105,310円
要介護1:167,650円
要介護2:197,050円
要介護3:270,480円
要介護4:309,380円
要介護5:362,170円
介護サービスを利用した後、利用者は自己負担額として利用したサービスの費用の1割(現役並みの所得がある方は2〜3割)を支払います。
4. 自己負担が多い方には高額介護サービス費
月々の介護サービス費の自己負担が、世帯又は個人の合計で限度額を超えた場合、その超えた額が払い戻される高額介護サービス費制度があります。
《高額介護サービス費(所得区分:限度額(月額)》
現役並み所得者相当の方 :世帯44,000円
住民税課税世帯の方 :世帯44,000円
世帯全員が住民税非課税 :世帯24,600円、個人15,000円
生活保護を受給している方等 :個人15,000円
なお、「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し、「個人」とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限を指します。
40歳になったら、介護保険の第2号被保険となることを認識し、親の介護が必要になった時に慌てることのないよう、介護保険制度について理解を深めましょう。
辻 章嗣
ウィングFP相談室代表
元航空自衛隊パイロット、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士
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