4連休前日の7月22日、政府は、4月7日に閣議決定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」に含まれる「Go To トラベルキャンペーン」をスタートさせました。東京を除く、全国一斉です。
したたかな、容赦なく尊い命をも奪う新型コロナウイルスの脅威は、今も変わっていません。こうした中での「Go To トラベルキャンペーン」の実施は、これまで以上に万全な感染防止対策の徹底が不可欠です。
連休から2週間後の8月上旬以降の感染者数の動向がとても心配されます。
さらにこの時期、多くの地方では月遅れのお盆を迎えます。一年の中で一番の「民族大移動」、ふるさとの人口が急増するときと言ってよいでしょう。
例年であれば、ふるさとを離れ任地で頑張っている皆さんの多くも、任務に支障等が無い限り、ふるさとに戻られるのではないでしょうか。久しぶりに見る皆さんの元気な姿を心待ちにされて来ているご両親は、いつもとても喜ばれることでしょう。ご両親に顔を見せることは、何よりの最高の親孝行です。
・・・コロナ禍が続き、むしろここに来て感染者数が拡大している今年は、真逆です。
両親に直接顔を見せに行くことは、今年のお盆に限っては、残念ですが避けるべきではないかと思います。
しかし、このようなときであればこそ、皆さんには、ご両親との連絡を一層「密」にして頂きたいと思います。
連絡手段等は、それぞれ千差万別でしょうが、ご両親も懸命に戦っているコロナ禍によって、ご両親との関係が「疎」になるような事態は、絶対に意地でも生起させまい!です。
そのためにも、ご両親がこれまで経験されたことの無い新しい連絡やコミュニケーション手段等の手ほどきなどを含め、時機を失することなく適切な方途を確立してください。心を込めての「密」も「密」、「濃密」な関係の維持です。ご両親の感動と笑顔を、あなたもきっと共有されるに違いありません。
残酷なようですが、いつまでもご両親はいません。どうか、今の時間を大切になさってください。筆者の両親は既に亡く、たまにふるさとの実家の玄関のカギを開けて入ると、両親がいつも正座しながら筆者に電話を掛けてよこした赤い座布団がそのままの状態で目に入ります。止まったままの柱時計のゼンマイを巻きながら、もっと「密」にしておけばよかったと思うことしきりです。この歳になっても、なお後悔先に立たずをかみしめています。本紙読者の皆さんには、こんな思いはさせたくありません。
ふるさとを離れて働き、生活している皆さんには、更に大切な方々がふるさとにはいます。ふるさとに在って、常日頃からふるさとの両親や家を見守り、何かと日常生活・社会生活を助けてくださっている方々の存在です。あなたが、ふるさとを離れて「正面」で心残りなく任務に精励出来るのは、ふるさとのそうした皆さんの常日頃からの「後方支援」があればこそです。過言ではないと思います。
お盆や年末年始など、年に数えるほどしか帰省せず、しかも数日間の親孝行を繰り返している皆さんには、決して出来ない、また容易に分かることの出来ない、ふるさとならではの日常生活に係わるあらゆる事柄やご苦労が山ほどあるはずです。
皆さんが気が付かないところで、皆さんの両親や実家を日々支えてくださっている方々との連絡も、是非「密」になさっていただきたいと思います。皆さんの気持ちを伝えていただきたいと思うのです。
そう言う筆者自身、今あるのは、どんなときでも、「田舎のことは心配しないでいい。そっちのことを頑張れ!」そう言い続けて面倒をみてくださる年長のご夫婦に恵まれているからです。もう半世紀近く甘え続けています。
月遅れのお盆を前に、自戒を込めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |