新型コロナウイルスの感染拡散の勢いが止まりません。世界中の人々は今、命の危険と途方もないプレッシャーを強いられています。世界のリーダーからは、「戦争」との言葉も発せられています。
人類は、その英知を結集してこの新しい敵との戦いに早急に勝利しなければなりません。その時が一日でも早く来るためにも、私たち国民一人ひとりが、引き続き冷静な感染防止に真剣に努めて行くことが不可欠です。「私は大丈夫」などといった慢心と無責任は、全く通用しません。
特に重要と言われているのは、クラスター(集団)の発生防止です。厚生労働省のホームページは、国民の皆さんに次のような協力を求めています。
外出するに際しては、集団感染の発生に共通しているリスクとされる(1)換気の悪い密閉空間(2)多数が集まる密集場所(3)間近で会話や発生をする密接場面を避ける。「密集」・「密閉」・「密接」の重なりには、特に気を付ける。更に、共同で使用する物品には消毒などを行う。
世界では「医療崩壊」も生起しています。人工呼吸器の不足等から重篤な患者さんを救うことが出来なかった医療従事者の皆さんの、やるせない落胆・切実な訴えも報じられています。日本は大丈夫でしょうか?
電機メーカーのシャープが不足を続けているマスクの緊急生産に乗り出した旨の報道がなされています。政府の要請を受けてなのか自主的に行っているものなのか私には分かりません。それ自体とても有難いことなのですが、シャープと聞いて、人工呼吸器を作ってくれたらなぁと勝手な思いが自然に浮かんで参りました。素人が考えるようなそんな簡単なことではないのでしょうが…。
新型コロナウイルスとの戦いの戦略・戦術・戦闘方針を決めるに必要な情報が全て集約されて来るのは政府を置いてありません。最悪の事態の生起を想定した対応は、当然検討し準備を進めていることと思います。
歴史小説家半藤一利さんが、第2次世界大戦当時の日本について様々な著作の中で批判しているような、「起きては困るようなことは、起きないだろうとの思いに通じ、最後は、起きないのだと決めつけてしまった非常識な意識の存在」の再来は、決して許してはなりません。
そして決断に当たっては、「遅きに失した。極めて遺憾」などといった言葉を、万が一にも国民のリーダーが口にせざるを得ないような事態は絶対にないようにしていただきたいと思います。「TOO LATE」にならない迅速かつ的確な決断を心からお願いしたいと思います。
こうした中、東京2020オリンピック・パラリンピックの国内聖火リレーが始まる3月26日を目前にした24日、同オリンピック・パラリンピックを1年程度延期する決断がなされました。遅くても2021年夏までに開催することが確認されています。大会名称の東京2020オリンピック・パラリンピックの名称は維持とのこと。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない現下の状況からは、当然の決断です。既に各国や国内からも延期を求める声が出ている中での決断でしたが、IOCによる突然の延期通告ではなく、開催国の我が国がリーダーシップを発揮したことは評価すべきことです。
延期に伴い解決すべき課題は山ほどあります。原点は、選手や観衆を始め全ての人たちの安全。その軸がぶれない限り、来年夏までに完全な形でオリンピック・パラリンピックを迎えることが出来ることを確信します。もちろん、見えない敵に勝利し世界の皆さんに笑顔が戻っている中で。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |