11月28日、総理大臣公邸。
開催されたのは、「防衛大学校本科卒業留学生交流会レセプション」。それぞれの国軍の制服を着用した12カ国約50名の防衛大学校卒業留学生の皆さんそして在学生が招かれました。防衛大学校を卒業した留学生とのネットワークを図る初めての試みです。
安倍総理は、彼らを前に熱く語りかけました。(首相官邸HPより抜粋)
「1958年、タイ海軍の青年を防衛大学校に初めて受け入れて以来、防衛省・自衛隊は、ASEAN地域を中心として留学生派遣国の拡大に努め、これまでに2千名以上の留学生を受け入れてまいりました」
「我が国を取り巻く安全保障環境は、国際社会のパワーバランスが大きく変化しつつある中、格段に速いスピードで、厳しさと不確実性を増していることも事実です。防衛大学校を卒業され、防衛省・自衛隊と各国をつなぐ橋渡し役として、各国で活躍されている皆様や、これから防衛大学校を卒業し、そのような役割を担うことになる皆様と強い絆で結ばれていることは、このような安全保障環境において、不可欠であります」
「今後ともこのような機会を通じ、我が国と留学生派遣国との間の、相互理解や信頼関係が深まっていくこと、そして、このような一つ一つのつながりが、縦にも横にも拡大していき、将来的には、アジア太平洋地域全体を覆う、大きな安全保障のネットワークとなることを期待しているところでございます」
「皆様が、各国のために、そして、アジアの平和のために、世界の平和のために、大いに貢献されますことを期待して、私のご挨拶とさせていただきたいと思います」
防衛大学校に留学生を派遣している国々の中で、最も歴史が浅く2010年に初めて入校し2015年に卒業したのは東ティモール。卒業1期生と在学中の4年生が招待されました。
1期生の一人は、防衛大学校創設以来初の女子留学卒業生。現在、陸軍少尉として軍本部におけるロジスティックス業務に取り組んでいます。更に東ティモール唯一の東ティモール国立大学(UNTL)にて、日本語講座の講師も務めています。各国留学生が生涯忘れることの無い木下哲生先生の超厳しく親身な日本語指導で身に着けた卓越した日本語能力は、こうした非軍事の分野でもフルに発揮されています。
当日、安倍首相の前で流ちょうな日本語で挨拶したのは、1期生の海軍中尉。2015年3月防衛大学校卒業と共に江田島の海上自衛隊幹部候補生学校に進み、その後、東ティモール海軍の艇長等も務めた後、本年4月から防衛大学校研究科に入校しています。
曰く「防衛大学校で学んだことは、今の勤務につながっており、卒業した東ティモールの学生は、防衛大学校で学んだことを活かしておのおのの立場で勤務しています。…防衛大学校で作った先輩、後輩、同期との関係をずっと続けて行きたいと思います。東ティモールは、独立してまだ17年になったばかりで、まだまだ新しい国です。様々な面で人材育成が必要だと私は思っています。…将来、我々のように防衛大学校から卒業した学生は、日本と東ティモールの架け橋として、防衛・安全保障に限らず、政治・外交・経済・観光・労働力・人材育成など幅広い分野での協力に関わって行くことを期待しています」
レセプションに参加した4年生自身も、架け橋になる決意等を強く語ってくれました。
一貫して留学生に寄り添い、士官としての育成に尽力されている國分良成防衛大学校長は、母校を訪問した卒業留学生の皆さんを強く激励されると共に、防衛大学校を世界一の士官学校にするため邁進している目標は、母国における留学卒業生の皆さんの活躍無くしては達成し得ない旨訴えています。
こうした中、新たに「防衛大学校卒業留学生用徽章」が作製されました。防衛大学校留学卒業生の皆さんが、卒業生としての誇りと責任を胸に、それぞれの任務遂行に頑張って行く姿が浮かんで来るようです。
そんな皆さんに心から力いっぱいのエールを送りたいと思います!
北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |